第20話 初めての依頼
装備を整えた私はクリスタの背に乗って空を飛んでいる。
腰に巻いた革のベルト、鞘に収まった短剣、背負っている
今向かっているのは私の故郷ともいえる森。名前は特にない。
ギルドで受けた依頼、フォレスキノコ5本の納品を達成するために頑張ろう。モンスターとの戦闘も視野に入れて準備したんだしきっと達成出来るはずだよね。
森の入口が見えてきたので「クリスタ!」と彼女の名を呼ぶと、言いたいことを理解してくれたのか森の入口へ降りていく。
言葉を喋れなくてもクリスタは頭がいいのかな、察しがいいとも言えるかも。コミュニケーションもそこそこ取れてるっぽいからもっと仲良くなれそう。
「クリスタ、フォレスキノコを集める自体に危険はないの。でもね、モンスターに襲われるかもしれないから森は危ない。助けてって言いたいんだけど、今日はモンスターに襲われても攻撃しないでほしいの。これから先、私はギルドメンバーとして生きていかなきゃいけない。1人でもモンスターを倒せるようにならないと一人前にはなれないからね」
下にいる
黙って聞いてくれるのはいいけど理解してるのかな? 念のため「分かる?」と確かめたら「クルルルウ!」と元気よく返事してくれた。うん、分かってくれてるんだね。
「それじゃあ行こう!」
背に跨った私を乗せてクリスタが前に進む。
自分で歩かなくてもいいなんて楽ちんだよねえ。森は狭いだろうけど、人道はドラゴンも通れるくらいの広さで作られているから平気だ。あんまりおっきいドラゴンは歩けないだろうけど。
とりあえず私は背に乗ったまま周囲を警戒しつつ、道の端に生えている木々の根元を注意深く観察すればいい。キノコは木の根元に生えているのが多いからね。
おっ、早速キノコ発見……したけどフォレスキノコじゃないや。無視。
フォレスキノコはカサが緑で
「あ、今度はモンスター発見!」
人道を歩くクリスタの前に現れたのは花型モンスターだ。
チューリップにヒューマンみたいな顔があって、太い根を足みたいに動かす――チュッパーナ。頭の花は個体ごとに色が違って現在では5種類確認されている。
森に住んでいた時は光合成してるところをよく見かけたっけ。
「よし、戦おう……!」
私の武器は鞘に収まった短剣、背負っている
まずは弓で攻撃だ。背中の軽弓に手を伸ばして――いたらチュッパーナがクリスタの水晶ブレスに貫かれた。私と同じくらい大きくて透き通ったひし形の水晶が見事に頭を貫通している。
「あああああああああああ! 私が戦うって言ったのにいいい!」
クリスタには伝わってなかったの!? やっぱりドラゴンとのコミュニケーションは難しいのかなあ。今も得意気に「クルルウ」と嬉しそうな声を漏らしたし、確実に伝わってないやこれ。仕方ない、仕方ないよね。仕方ないから私が先頭を歩こう。
前からモンスターが来てくれれば私が先に攻撃出来る。後ろから水晶ブレスを使ったら私ごと串刺しになっちゃうし攻撃出来ないはずだ。
クリスタの背から滑るように降りて先へ進む。移動スピードは格段に落ちるけど、今日の目的は依頼と個人的な実戦なんだもん。このままじゃみんなクリスタに一撃で葬られちゃう。
――それから暫くして。
歩いているうちに依頼で必要なフォレスキノコは5本集まっちゃった。
本当ならもう帰っていいんだろうけど、私はどうしても今日実戦をしてモンスターを討伐しておきたい。初日からは早いと思うかもしれないけどこれでいいんだ。後回しにしたらその分だけ、明日にしよう明後日にしようってまた後回しにしそうだから。
モンスター何か出て来ないかなあ。
元々、人道にはモンスターがあんまり出現しない。この森を住処にしているのが少ないんだ。他の場所だともっといっぱい出るってママが言っていた気がする。
「あ、いた」
モンスターのことを考えていたからか、木々の間からやっと私の前に出て来てくれた。しかも私にとってはちょっとした因縁があるモンスターだ。
ふさふさしている灰色の体毛。ぎらついた金の瞳。長い四肢。鋭い牙。ウルフ系最弱にして初心者の難関、ワイドウルフ。
かつてリンゴを奪ったことを私は忘れていない。今度は何も奪わせないぞ。
思えばケリオスさんと出会ったのもワイドウルフがきっかけだったっけ。あの時はケリオスさんとクリスタに助けられたけど、今日は1人で倒すんだ! 1体くらいなんとかしてみせる!
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