第18話 ちゅーとりある
「はい、これでギルド登録完了です」
バニア13歳。訳あって私はギルドに加入しました。
ギルドマスターのミヤマさんの計らいでスムーズに登録は終了。にこやかに笑う受付のお姉さんが立ち上がり、2枚のカードを渡してきたので受け取る。本当ならカウンターに置くんだと思うけど私は成長途中の女の子、身長が足りないせいで見づらいのを考えてくれたのかな。やっぱり受付嬢さんは優しい。
「緑の方はギルドカード。バニアちゃんの身分証としても使えます。本人のレベル含めたステータス、ギルドランクなどが記載されているので失くさないようにね。一応失くしても再発行出来るけど、誰かの手に渡ったら悪事に使用されるかもしれないから」
「はい、分かりました」
緑色のカードを見れば確かに自分のステータスが表示されている。
ステータスはレベルが上昇することで数値が変動する。レベルアップしてからすぐに見るために表示されているのかな。私はあの魔法でステータスを好きな時に見れるから必要ないけど。
今の強さの数値は酷く弱いものだ。今までモンスターを倒したことなんてなかったし、エルバニアまでの道中でもクリスタが一掃してくれた。残念なことに持ちドラがモンスターを倒してもレベルは上がらないみたい。
レベルとステータスのことは置いておいて、今分からないのはランク、かな?
ランクっていう欄には【E】という文字が表示されている。アルファベットって文字だったかな。でもこれがどういう意味なのかが分からない。
「あの、このランクっていうのは何ですか?」
「それは序列……って言っても分からないよね。要するに、一番下がバニアちゃんみたいな新人のE。そこから依頼をこなしていくとD、C、B、A、Sって感じで上がっていくの。ランクが上になればなるほど難しい依頼を受けられるようになるよ。最初のランクアップは簡単だからバニアちゃんもすぐにDランクになれるよ」
ふーむ、どうやら上げた方がいいみたい。
ゴマへ挑むには強くならないといけない。とりあえず最終的に一番上のSランクを目指して頑張ってみようかな。まあでもまず目指すべきはDランクなんだけど。
「あーそれで、そっちの青いカードはスカイフリーパス。これも失くさないでほしいけど再発行出来るし、ギルドカードよりは悪い事に使われないと思う。バニアちゃんはもう持ちドラがいるのかな?」
「はい、クリスタがいます」
「ならすぐに必要になるね。どこの国でも空中から入るにはこのスカイフリーパスがいるの。ギルドのメンバーだったり、ジョブがライダーの人は望めば絶対に貰えるものだよ。まあドラゴンに乗るのは難しいからライダー以外の人が持っていても最初は役立たないけどね。……ああでも1人、ライダーでもないのにすぐ乗れた新人の女の子がいたっけ」
これからはクリスタに乗ったまま空から町に入れるんだ!
……あれ? クリスタ、どこに行ったんだっけ。
あ、そうだ、ギルドの前で待ってくれていたんだった。ドラゴンも入っていいのか分からなかったから。でも普通に連れている人はいるし問題ないみたい。
「他に気になることはない?」
「ありま……せ……依頼はどこで受ければ?」
肝心なことを聞いていなかったよ。
「右奥のカウンターにいる受付嬢に話しかければいいよ。私は依頼人から内容を聞く仕事だから、次は間違えないでね。他は大丈夫そうかな?」
「大丈夫です!」
緑色のギルドカードは身分証。青いスカイフリーパスは許可証。
ギルドの依頼は右奥の受付嬢さんから受ける。左奥は依頼人専用。
一先ずの目標としてケリオスさんの息子のナットウ君の捜索。そしていつか絶対にやってみせるゴマの打倒。色々まとめるとこんなところかな。
「それじゃあバニアちゃん。これから頑張ってね、応援してるよ」
「はい!」
元気よく返事をした後で右奥のカウンターへと歩いて向かう。
次に話しかけるのは右奥の受付嬢さん。左奥の受付嬢さんとは瓜二つで双子みたい、違いといえば艶のある黒髪が長いか短いかくらいかも。右は長い、左は短いと憶えておこう。
「ギルマスからお話は聞いています。依頼を受注されますか?」
「はい、何がありますか?」
強くなるためには難しい依頼をこなしていかないといけない。そのためには上のランクを目指す必要があるんだけど、Eランクが受けられる依頼ってどんなものがあるんだろう。モンスターを退治するのはいいんだけどクリスタが倒しても意味ないんだよね。
「Eランクの新人が受けられる依頼はチュートリアルと呼ばれています。薬草などを納品する採取依頼、モンスターを駆除する討伐依頼。どちらも非常に簡単な初心者向けとなっていますのでご安心ください。どちらを受けられますか?」
初めは強くなるために討伐依頼……と言いたいところだけど、まずはギルドの仕事に慣れるためにも怪我の少なそうな採取依頼にしておこう。今の私には武器も防具もないからモンスターと戦うのは危ないだろうし。
「採取依頼でお願いします」
「はい、現在バニア様が受けられる採取依頼は3つ。ノビール草10束の納品。フォレスキノコ5本の納品。マジマジ草5束の納品。この3つからお選びください」
そう言って右奥受付嬢さんはカウンターに3種類の紙を置いていく。おそらく依頼書ってやつだ、ちょっと見えづらいから確証はないけど。
もっとよく見るためにぴょんぴょんとジャンプしてみる。よく見えないのを察してくれたのか、右奥受付嬢さんが私の頭を鷲掴みにして宙に持ち上げてくれた。……腕力と持ち方が凄いです。
今受けられる採取依頼は言われた通り3つ。
生命力回復の効果があるとされるノビール草。魔法力回復の効果があるとされるマジマジ草。私が住んでいた森の中によく生えている食用のキノコ、フォレスキノコ。この中から選ばなきゃいけない。
とりあえず場所もだいたい分かるフォレスキノコにしようかな。
「あの、フォレスキノコのやつを受けたいです」
「かしこまりました。ではギルドカードの提示を」
緑色のカードを右奥受付嬢さんへと手渡すと、鷲掴みにされていた頭が放される。よかった、ずっとあのままなのかと……。
右奥受付嬢さんは私のギルドカードを隣に置いてある青い水晶へ翳すと、ピッという音がしてからカードを返してくれた。何の音だろう。
「今のって?」
「カードが本物かどうか確かめていました。もし偽物なら水晶の色が赤くなって、警報が鳴ります。まあ滅多にそのようなことは起きませんが」
なるほど、成りすましを警戒しているんだ。
事情は分かったからいいや。もう依頼を受けたんだし早く行こう。
私は右奥受付嬢さんの「それではいってらしゃいまっせ」という声を聞きながら、初の依頼を達成するためにギルドから出て行った。
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