第5話 ライダーデビューはまたいつか
話題を変えるために……いや私の心の中を変えるために話を戻そう。
元々どうしてこんな話になったんだっけ。確か、私がケリオスさんのジョブがライダーなのかを聞いたんだっけ。ステータスを見たら本当にライダーだったからもう分かったんだけど、それならそれで言いたいことがある。
とりあえず「ステータス」と呟いてみると青くて透けている板は消失した。ケリオスさんも同じく呟いて宙から消す。
「さっき見ましたけどケリオスさんはライダーなんですよね?」
「ん? ああ、そうだね。基本職のライダーだよ」
「羨ましいなあ。実は私もドラゴンに乗ってみたかったんですよお」
ライダーのジョブはドラゴンの背に乗ることが出来る。
他のジョブでも出来ないことはないけれど、ドラゴンに乗るには相当な訓練が必要になる。最低でも十年はかかるって言われているし、乗れない人はいつまでも乗れないらしい。それだけ難しいことなんだよね。
「まるでライダーじゃないとドラゴンに乗れないみたいに聞こえるね」
「うっ、そうは言ってませんけど。でもライダーなら確実じゃないですか」
そうだよ、何をするにも物事100パーセントの方がいいに決まっている。
ドラゴンに乗っている人を見たのはいつだったかな。
まだママが生きていた時、王都エルバニアで配達屋を見かけたことがある。
配達屋は素早く依頼された物を配達しなければならないので、ドラゴンに乗れることが就職最低条件らしい。丁度ドラゴンに乗って飛ぶ瞬間を見たことは今でも記憶に残っている。
「そんなにドラゴンに乗ってみたいなら、乗ってみる?」
いきなりの魅力的な提案に戸惑ったけど願ったり叶ったりだ。
「の、乗ります!」
右手を高く上げて勢いよく返答した。
ドラゴンに乗れるライダーがいるなら、余程ドラゴンに嫌われていなければ一緒に乗ることが出来る。そう、ケリオスさんがいれば私はドラゴンに乗り放題なんだ。今気付いた。
それに乗るのはクリスタルドラゴンのクリスタ。あの綺麗な背に乗れるなんて感動しちゃう!
「よし、それじゃあ早速行こうか」
「はい!」
ドラゴンの背に乗れるなんて夢みたいだ。テンション上がっちゃうなあ。
「あ、その前に」
椅子から立ち上がったケリオスさんがふと思い出したように呟く。
「そんなにライダーがいいならとっておきがあるんだ。ステータス、アイテムボックスっと」
あの青くて透けているステータス板を出して、アイテムボックスというものを開いたらしい。私のステータス板にはなかったんだよね、あれ。
ケリオスさんが操作して、何かの欄をポチッと押すと空中に道具が出現する。デフォルメされているドラゴンの顔の髪止め、かな。金色で綺麗だなあ。
「これこれ、竜騎の証」
金色の髪止めを手に取ったケリオスさんは、それを私へと差し出してきた。
「もしかして髪止めですか?」
「そうさ、これは竜騎の証。これを装備すればどんなジョブでもライダーへ変化するんだよ。だから別に俺がいなくても乗れるようになれるよ」
ジョブの変化なんて聞いたことがない。
誰かに言ったら異端者なんて言われちゃうかもしれない。でも、ケリオスさんが言うなら信じてもいいと思う。
デフォルメされているドラゴンの顔が可愛い金色の髪止めを、私は手に取って――ポケットに入れる。
その行動にケリオスさんは驚いていた。たぶんライダーに憧れるあまりすぐに身に付けるとでも思っていたんだろう。そう思ってもしょうがないけどね。
「私、今はまだいいです」
「それは……どうして?」
もちろん理由はある。
自分がライダーになるよりも、ケリオスさんと一緒にクリスタに乗った方が絶対に楽しそうなんだもん。たとえケリオスさんの体を掴んでも不自然じゃないし。……と、まあ、邪な理由だけど。
噂に聞く痴女ってやつじゃないと思いたい。
「まだ私には持ちドラがいないですし、ライダーになってもドラゴンがいないんじゃ意味ないですもん」
本音なんて恥ずかしくて言えるわけがないよ。とりあえず納得してくれそうな理由を考えてみたから、ケリオスさんは「なるほどね」と納得してくれたみたい。
手持ちドラゴン、通称持ちドラ。
契約するって人は、私と同い年くらいの子でもドラゴンと契約しているらしい。正直羨ましい。背中に乗せてくれそうで可愛いタイプのドラゴンなんて都合よくいないだろうなあ。高望みしてるから未だにいないんだって私も分かっているけど。
「理由は分かった。それじゃあ今度こそ行こうかね」
ケリオスさんが家から出ていく。
行こう、初めての空の旅へ! きっと素敵な旅になる!
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