第7話 超人−2
「ふむふむ、なるほどなるほど……。つまり君は、急に男のことをふっ飛ばすほどの力を出すことができたと言いたいんだね?」
「そう! そういうこと!」
僕はとにかく慌てていて、言っていたことが言葉になっていなかったが博士は落ち着いてまとめて聞き返してくれた。
「ふむ……。今日はもう遅いから、明日詳しく調べることにしよう」
博士は、そういって椅子から立ち上がった。それも、僕のことに関心がないのか目をこすりながらあくびをして。
「な!? 僕は自分の体がどうなってるのかわからないんだ……。今すぐ調べてくれよ!」
「いや、わしはもう寝る」
ドアノブに手を手をかけながら言ってきた。
声色や言葉を聞くに、僕の体を調べたくないらしくはないらしい。ただ今は寝たい。
寝ないと、頭が働かないということなのだろうか?
「これだから老人は……」
そして翌日。
僕は様々なことをした。具体的に言うと、マラソンベンチプレス、縄跳び、握力測定。
正直、なんでそんなことをしているのかわからなかったのだが博士が「それをすれば原因がわかる」と言ってきたのでとりあえずした。
元の記録もないのに、比べようもないのだが。
「これらすべての結果を見るに、おそらく君のそのありえないほどの力は魔臓によるものだと考えられる」
昨晩のように、再び同じ椅子に座った博士はそう言ってきた。
「?? どういうことだ??」
原因は魔臓にあるのだということはわかるのだけど、どうしてその力が魔臓から出るんだ?
あれは、魔法を使うときのためのものだぞ? 僕は、魔法なんて使った覚えない。
「ようするにこの前、体に入れた人工的な魔臓によって力を得たんだと思う」
「ってことは、この力は魔法ってことか?」
「いや、明確に言うと君のそれは魔法ではない。その力は、君が無意識に体全体にかけられているからそうだな……。言っしまえば、魔臓が勝手に体に馴染んでいったと言えばいいかな。だから魔法ではない」
魔法ではなくて、魔法のような超人的な力を使える。それって、僕は失敗したということなのだろうか。わからない……。
そして、この力を得てしまった僕怖い。
*
『強大な力をどう使うのか。一人でゆっくりと考えるといい』
僕は博士にそう言われ、研究所の離れにある小屋の中で一人うずくまっていた。
「どうすればいいんだ……」
そもそも僕は、こんな力を得て何をしたかったんだ?
邪者だと虐げられることが苦痛に思い、嫌だから?
違う。たしかに僕は、虐げられ苦痛に思っていたのだが嫌だとは思っていない。少し前までならそういう理由かもしれないけど、今は虐げられることなどもう慣れている。
じゃあ力を得て、僕のことをいじめてきた奴らに仕返しをしたかったからか?
それも違う。僕は、邪者なのでいじめられるのは当たり前。特に、邪者のことを知らないでいじめてくる人たちもいる。そして、逆に僕のことをいじめないと他の人たちから標的にされるかもしれないという人たちもいる。なので人が傷つくのなら、邪者である僕が傷ついた方がましだ。
ではなぜ、こんな超人的な力を手にしてしまったんだ……。
僕はなぜ、研究所に来て話を聞いてリスクを背負って魔臓を体の中に入れたんだろう……?
あの時
あの場面
あの瞬間に、
リーアが言っていた言葉が頭の中から離れていかなかったからだ。
そう、僕はここから生まれ変わるために魔臓を入れたんだ。
「生まれ変わる……」
でも具体的にどうやって生まれ変わるのか……。
力は変わっても、自分が邪者であることは代わりはない。力を示して、邪者ではないことを証明してもいいんだが僕が生まれ変わりたかったのそんな理由じゃない。
「助ける?」
一つの結論に至った。
僕は今まで人のことを助けようとはしたが、実際には全く助けられていない。
僕のように……とはいかないけど、ここにはたくさんの人間が日々襲われたり、苦しんだりしている。そんな人たちを、この超人的な力を使って救いたい。
この世界とまではいかないけど、この国にいる誰も裁くことができない悪人は僕が裁く。
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