第4話 研究所−1
「ジン! そこも塗っとけ!」
「はいっ!」
謎の女性、リーアさんという人から「生まれ変わらないですか?」と聞かれ数日。
僕は、あの言葉をなにか悪い宗教かなにかの売り文句だと決めつけ、普段通りペンキ屋の雇われとして職務を全うしていた。
「おい、ジン……手伝おうか?」
ちなみにディックとはあれから、何度か一緒に酒を飲みに行ってる。今では、仲良くなり初めての友人と言ってもいい人物にまでなっている。
「いや、大丈夫」
本当は手伝ってほしかったけど断った。
なぜなら、ディックが言った「この前ペンキを落とした」というのが僕が言わせたのだという憶測が流れ始めているから。
もちろん言わせてなんかない。
だけど、憶測が流れていることは事実。
なので余計、変な憶測が流れないためにも今はちゃくちゃくとペンキを塗るのが正解なんだ。
「お疲れ様でしたぁ〜……」
僕は、誰もいなくなった仕事場に一言残して歩き始めた。勤務時間が5時間もオーバーしている。
上を見上げると、きれいな星たちが夜空が広がっている。もちろん他の人たちはとっくにいなくなっている。ディックは僕が終わるまで待つと言っていたが、帰らせておいた。
だって、いつまでかかるのかわからなかったし。
「よし……」
今日は頑張ったから久しぶりに温かいお風呂に入って、一人で酒でも飲もう。
そう思い、足を進めたのだが……。
「なんで来ちゃったんだよ……」
着いたのは町外れ。そして目の前には、まだ明かりがついている一軒家。ここは、この前リーアという女性からもらった名刺に書かれてあった住所。研究所らしい。
正直、来ようとは思っていなかった。
だけどずっと邪者である僕が、生まれ変わることができるのではないのかと頭の隅にあった。なので、ずっとモヤモヤを抱えたまま過ごしていたらここに来ていた。
目の前の扉を、なかなか開けられない。
力がないとか、仕組みがわからないとかそういうのではない。引くと開けれるというのは、書いてあるからわかる。
本当に入っていいのか?
その悩みが僕の頭の中で錯乱し扉を開けることができず、ただ扉の前で突っ立っていた。
「えっと……どなたですか?」
後ろから声が聞こえてきた。それも、聞き覚えのある女性の声。その声色から、僕が変質者かなにかと思われているのがわかる。
まぁ、扉の前で突っ立っている男を見ると変質者だと思うのはわかるのだが。
「僕さ……あの、一度路地裏で君のことを助けたんだけど覚えていないかな?」
僕は両腕を広げて、何者かわかりやすいように振り返った。するとリーアさんは顎に手を当てて、なにやら考えている素振りをして……。
「あっ! あの、邪者の方ですね。覚えていますよ」
元気よく言ってきた。
邪者の方……。小さい頃は、そういう覚え方されるとイライラしてたけどもう慣れたもんだ。
「それでなんですけど、この前聞いた生まれ変わるっていうことで話が……」
なので僕は、動じずにここに来た要件を伝える。
「そのことでしたら、研究所にいる博士と一緒に話し合いましょうか」
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