第48話 人を惹きつけるアキラの魅力
店の住所をカーナビにセットして、その店に向った。フランス料理専門店であるが、昼はバイキング方式で好きな物が選べて好きなだけ食べられる。アキラにとっても願ってない店であった。残念ながら車を運転しなければならないのでアルコールは飲めない。
美代が店に入ると、シェフなのだろか深々と美代に頭を下げている。
「いらっしゃいませ。お話はオーナーのお嬢様から伺っております。どうぞ窓際の席を用意して御座います」
「ありがとう。彼女にも宜しくお伝えください」
「はい、浅田様のお父様には時々ご利用頂いております。お蔭様で店の宣伝までさせて頂き本当に感謝しております」
美代はそれには応えず、何故かアキラを気にしているように見えた。オーナーもアキラの存在に気づき余計な事は控えたようだ。果たして美代の父とはいったい何者だろうか。
何故か美代の仕草、言葉使いといえ、ただの銀行員とは思えない。格式の高い家で育った上流階級の人に思えてならない。アキラはそう思ったが、そんな事を詮索してはならない。誰でも秘密にしたい事がある。自分もそうであるように、そして深入りしてはならない。何か警告が心の中に芽生えていたアキラだった。二人は海の見える窓辺の席に案内された。ともあれ二人は好みの食べ物を皿に盛り、ワインの代わりにフルーツジュースを入れたグラスを軽く合わせた。
「今日は私の我が侭に、お付き合い戴きましてありがとうご御座いました。こんな事を言うのも恥ずかしいですが、私、山城さんと居ると心が休まるし自分を曝け出せるの、そういう気持ちにさせてくれるのも山城さんの魅力ね」
これはどう解釈すれば良いのか、アキラはどう返事をすれば良いのか困った。
自分を曝け出すと言った美代。女性とあまり話した事のないアキラは男してこれ以上、嬉しい言葉はない。いくら女性に疎いアキラでも分かる。
こんな俺に? 相手を間違えているではないかと思うが、誘うのはいつも美代の方から、アキラだって誘いたいが、やはり自分に自信がないのが分かっているから誘えない。
普通の女性なら俺なんかの側に寄って来ないと思い込んでいた。
美代も、あんな事件に合わなかったらアキラを知る事もなかっただろう。
だが美代は外見だけで人を判断しなかった。それは、あの警備会社の社長室でアキラの態度と言葉で分かった。あの相田社長が自ら雇ったと聞いた。それはつまり社長が認めた証。アキラは人を惹きつける何か持っていた事になる。
つづく
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