第123話 竜剣
「次の目的地はブリゲイド大陸の玄関である港町だ。問題はそこから先だ」
確か大地の裂け目って場所にネアの仲間(?)がいるんだったな。
「大地の裂け目の周りに広がっているギアス荒地を抜けるための物資は用意した。事前に聞いていたフェイくんの〔アイテムボックス+〕の容量なら大丈夫だと思うが……」
ギアス荒は未知の土地。ルーカスさんは俺達をそんな場所に送り込むことを気に病んでいるのかも知れない。けど……
「何から何までありがとうございます。俺達も冒険者です。知らない場所を探検することには慣れてますよ」
確かに不安はある。だが、俺は一人じゃない。どんな場所だって何とかなるさ。
「大丈夫だよ、お父さん。私はともかくフェイ兄もレイアさんもベテラン冒険者なんだから!」
ベテラン……かなあ?
「確かに、二人共凄まじい実力を持っているのは間違いないが……」
「まあまあ、あなた。私達は信じて待ちましょう。そのために入念に準備したんでしょう?」
「……そうだな。じゃあ、軽く物資の説明をしていくぞ」
この後、俺達はいかにルーカスさんの準備が入念だったかを思い知ることになった。
※
【海風亭 自室】
(凄い物資の量だな)
ルーカスさんの説明は結局、魔導具の魔力切れで中断したのだが……街でも開けそうな量だった。
(あれでまだ半分だと言うのだから驚くほかないな)
しかも、質も凄い。見たことも聞いたこともない貴重なものも大量にあるのだ。
(それだけ心配してくれてるってことだな。ありがたい)
そんなルーカスさんの気持ちに応えるためにも何としても成功させなきゃな。
コンコン
ん? ノックか
「済まない、ちょっと良いだろうか」
クロードさんか。
「今開けます」
開けるとやはり人化したクロードさんがいた。
「疲れてるところ済まないが、例の件について話したいんだが」
「勿論構いませんよ。どうぞ」
といいつつ、俺は内心後悔していた。何故ならオレの部屋にはお客様に出せるようなものが何もないからだ。
「ふむ、無駄がないな。実直な君らしい」
「そ、そうですか?」
まあ、そう思ってくれれるならそれでもいいか。
「さて本題だが、私は出来れば君たちと同行したいと思ってる」
実はクロードさんにはオルタシュで治療に専念するか、オレ達についてくるかを選んでほしいと頼んでいたのだ。普通なら出さない選択肢だが、実は……
「オルタシュで色々見聞きすることで記憶が戻った。君たちについていけばもっと色々思い出せるかも知れない。さらに同族に会える可能性もあるしな」
ということだ。ただ、クロードさんにも危険に遭いやすいなどといったデメリットもある。それを踏まえた上となると、やはり早く里に帰りたいんだろうな。
「勿論、君たちの役に立てるように頑張るつもりだ。言ってもらえれば何でもするし、特に戦闘や索敵では出来ることも多々あると思う」
ちなみに記憶を取り戻したクロードさんは実は無茶苦茶強い人であることが発覚した。そして、気配を読む力も凄い。この辺りは種族特有のものらしいが……
「来てもらえるなら、オレ達も助かります。クロードさんの里についてはルーカスさんにもたのんでいるので何か分かればお知らせします」
「ああ、頼む。ところで君への礼は何か考えてくれたか?」
「あ〜」
仲良くしてくれたら嬉しいって言ったら“それ以外にも何か考えてくれ”って言われたやつだ。何か考えた方が良いんだろうけど……
「まあ、気が向いた時に考えてみてくれ。後、レイアには礼として〔竜剣〕を教えようと思うんだが、どう思う?」
「〔竜剣〕?」
「〔竜剣〕とは私の一族に伝わるスキルで、ある条件を満たすことで身につけられる。本来、一族の秘伝なのだが、彼女は身につけておいた方がいいと思ってな」
クロードさん曰く、〔竜剣〕とは潜在能力を解放することで一時的にパラメーターを上昇させるスキルらしい。
(だが、リスクもある……)
潜在能力を引き出すときに普段押し込めている感情や思いも出て来てしまう。そこで、それらに押し流されない心の強さが必要になってくる。
(なるほど……復讐だけに支配されなくなるってことか)
正確にはそのための訓練ってことだか。
「凄いですね……そこまで見抜いているなんて」
「いや、単に強い想いがあると思っただけさ。強すぎる想いは得てして暴走するものだからな」
ホント、クロードさんの洞察力は凄いな……
「俺は賛成です。レイアのためにもよろしくお願いします!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます