第124話 いざ新大陸へ
(アバロン視点)
(くそ……意味わかんねぇ)
一体どうなってるんだよ、これは!
(あのよく分からない魔物との戦いの報奨金が出たところまではいいとしてやる)
今回の俺の働きは凡人にも理解できたらしく、俺は“名誉市民”として報奨金を受け取った。まあ、本来は冒険者として評価されたいところだが、冒険者プレートが没収されていては仕方がない。
(だが……これは何だ?)
俺の周りにはあの戦いで一緒に戦った低レベル冒険者が集まり、付きまとっているのだ。
「おい、名簿はまだか?」
「ドレイク兄に見て貰ってる」
名簿? ってか、ドレイク兄ってなんだ? あいつも関わってるのか!?
「団の名称はどうしよう?」
団!? まさかこれからも俺に纏わりつくつもりなのか!
「え、アバロン団じゃないのか」
がっ……だ、だっさ
「馬鹿野郎! アバロン大兄の名前を軽々しく出すんじゃない! 直接出さずとも大兄の存在を匂わすような……」
いや、違うけど。お前らが付き纏うなと言ってるんだよ!
「イーサン隊……で──ガペブ!」
イーサンが何か言おうとすると傍にいた誰かがすかさず鳩尾に拳を突っ込んだ。
(懲りないな、お前も……)
一見酷い扱いのようだが、こいつはこいつで皆から一目置かれているような気はする。
「イーサン、早く働けよ! お前の借金はいつまでも減らねえぞ!」
イーサンは馬鹿だが、真っ直ぐな馬──
「借金!? 何の話だ!」
「お前が俺達に払うといった金の話だ! 金が出せないんなら働きで返すしかないだろ!」
俺達が現実を見る中で捨ててきたものを捨てずに持って──
「何だと!? この公認勇者を何だと思って──」
バキボコバキ……
「くそっ、今、俺を足蹴にしやがっ──」
ボコッ! バシッ! バキッ!
──うん、今日も平和だ。
「面白いことになっているじゃないか、アバロン」
げっ……こいつは、ジェイド! 俺をここに仕向けた張本人だ。
(一体いつの間に現れたんだ!?)
憎たらしい奴だが、腕は確かだ。学び取れれば俺は……
「まさかこんなに人が集まってるとは……丁度いい」
げ……この楽しそうな様子、嫌な予感しかしないな。
※
(フェイ視点)
「オルタシュともこれでお別れか」
いよいよオルタシュを立つ日になり、部屋を片付けた俺は空っぽの部屋を見ると、ふとそんな言葉が漏れた。
「色々あったなあ……」
俺は冒険者だから旅なんて当たり前。だけど、振り返って色んなことを思い出すくらい様々な出来事があったのは間違いない。
(だけど、これからはもっと忙しくなるな)
ギアス荒地の横断に大地の裂け目の攻略、さらにネアの仲間の確保……どれ一つとして一筋縄ではいかないものだ。
(それ以外にも、クロードさんの故郷のこととか、レイアの復讐、ミアの回復……やらなきゃいけないことは沢山ある)
“私は大丈夫ですよ、マスター”
(俺がしたいんだよ、ミア)
“マスター……”
それにもう一つ。ミアのこと、豹炎悪魔(フラウロス)の復活、それにオルタシュの騒動にクロードさんのこと全てに関わっている黒幕、魔将星の存在だ。
(奴らの狙いは何だ?)
関わりたくない相手だが、今後も衝突する可能性は高い。なら、備えは必要だ。
(魔将星と戦うならもっと強くならないとな)
かなり強くなったと思っていたけど、魔将星とやり合うには力不足な感は否めない。
(まずは新たに得たスキルの使い方の検討、そして敵の情報収集か)
レベルアップとかも必要だろうが、大王烏賊(クラーケン)戦で得たスキルとか細かいとこまでチェックしきれてないからな。
(まっ、一つ一つやっていけばいいか)
“私もお手伝いします!”
(頼りにしてるよ、ミア)
そう。俺には頼りになる味方が大勢いる。しなきゃいけないことは色々あるが、何とかなるだろ。
(ブリゲイド大陸、確か鉱山が多いが、農地が少ない上に魔物が強い過酷な環境だってルーカスさんが言ってたな)
一体何が待ち受けてるのか。今はそれも楽しみだ!
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