第92話 プライベートビーチ その一
【水上都市オルタシュ : プライベートビーチ】
ルーカスさんと打ち合わせをした翌日、サンクエトワールの船長の家に行った俺達は勧められるがままにプライベートビーチを使わせてもらうことになった。
(……こんなことをしてていいのかな)
早くネアの仲間(?)を追った方がいい気がするのだが……
(昨日の通信では二〜三日は休養するように言われてるし、船長さんのご厚意も無駄にできないし……)
勿論、“カイスイヨク”なるものへの興味はある。白い砂浜に青い波、頬を撫でる潮風……心洗われる気分だ。
(それにしてもリィナ達はまだかな)
“カイスイヨク”には水着に着替える必要があるとのことだったが、リィナ達は時間がかかってるな。何でだろう?
「お待たせしました、マスター」
──!
「どう……でしょうか?」
ミアの着ている水着は水色のセパレートタイプでバスト部分の布が大きく、首元まで覆われたデザイン。少し背伸びをした大人っぽい水着はミアの瑞々しい魅力をかきたてるスパイスになっている
(か、可愛い)
それ以外に言葉が出ない。
(折れそうなくらい細い腰や控えめではあるがしっかりと存在を強調している双丘……)
目が慌ただしくミアの体を行き来してしまう。
(だ、駄目だ。考えるな!)
とにかく何か答えないと……!
「に、似合ってるよ、ミア」
「ありがとうございます!」
そうミアが微笑んだと思うと……
ガクッ!
急にミアがバランスを崩す。砂地に足を取られたのか?
「ミアッ!」
俺はレベルを戻して、ミアを抱きとめる。よし、良か──
ぴと
ん? 何か滑らかな感覚が腕に……
「ふふふ……捕まえたぞ!」
ネアか! コイツ、何のつもりだ!
「妾を助けに来たときに仕掛ければ上手くいくと思っていたぞ……」
ネアは俺の手首を足で挟み込み、腕に体を這わせていく。こ、こら!
(待て待て! これってマズいんじゃ)
いや、マズくない要素がないのだが、このままじゃ敏感な部分に指が当──
(ネアめ! わざとか!)
アウトだ、アウト! 色んな意味でアウトだよ! 一体どうしたら……
「さあて、こっちも……」
こっちが動揺している間にネアは背中に手を回して……おい、まさか水着を脱ぐ気か!
(くっ……しかし、無理矢理ほどくわけにも……っ!)
ハラリ……
水着がはだけた瞬間、俺は思わず目を閉じる。が……
「も、申し訳ありませんっ!」
ミアが胸を手で覆いながら明後日の方向へと走っていく。あ、危なかった……
「あれ、ミアはまだ?」
レイアか。
「いや、来たけ──」
答えながら振り向いた途端、俺は急に動けなくなった!
(これはオスクリタの魔力!?……いや、違う。レイアは今完全に手ぶらだ!)
つまり、オレは単に水着を着たレイアから目を離せなくなったということだ。
(赤いビキニ……言葉にすればそれだけだが、レイアが着るとここまでのものになるとはっ……)
元々スタイルがいいのは今までのあれやこれやで分かっていたのだが……
(いや、分かってなかったな)
水着がはち切れそうなくらい大きな胸にくびれた腰、鍛えた体のみが持ち得る健康的なライン……などといったレイアの魅力は正直俺の想像を遥かに越えていた。
「動きやすいやつを選んだんだけど……どうかな?」
動きやすい!? 確かに覆う面積が狭いからそう言う評価になるか?
(でも、レイアの水着ってニ枚の布の両端を結んであるよな? あれが解けたら……)
はっ……駄目だ! しっかりしろ、俺!
「た、確かに動きやすそうだな。それによく似合ってるぞ」
「ありがとう、フェイ! 私も気に入ってるの」
ほっ……
「あ、そうだ。フェイ、これ塗ってよ」
レイアが俺に手渡したのは……日焼け止めだと!?
「……おい、これって」
「本当はリィナかミアに塗ってもらうつもりだったんだけどついうっかり忘れちゃって」
……おい、だからって
「あ、場所? あのパラソルの下でお願い」
俺の戸惑いをレイアは妙な方に誤解したらしい。まあ、本人がいいならいいか……?
「分かった」
レイアはパラソルの下へ行くとうつ伏せになり、俺に背を向けた。
「じゃ、お願い」
よし、余計なことは考えず、とにかく作業をこなせば……
(……って無理だろ!)
しっとりとして弾力のある素肌……柔らかい
触れて何も考えないというのはいくらなんでも……
「あ、それオイルタイプだから塗ったらこの間のをお願い」
例の笑いのツボか……?
(男女で効能が違うって聞いたけど……どんな効能なんだ?)
結局聞いても答えてくれないんだよな。
(しかも、何かだんだん大胆になってる気もするし……)
だが、何と言って断ったらいいか分からないしなぁ……
「ねぇ……早くぅ」
なっ、普段はそんな甘えた顔を絶対しない癖に……
(良いだろう……そこまで言うのなら)
何だろう……急に色んなことが馬鹿らしくなってきたぞ。
(“変なこと考えちゃ駄目だ”とか、“何も感じるな”とか、俺は何でそんなことを考えてたんだ?)
馬鹿らしい……全く馬鹿らしい……
「じゃあ行くぞ、レイア」
「早くしてよ、フェイ……」
なら、望み通り、本気でやってやるぜ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます