第71話 本当の全力
「〔アイテム複合〕!」
俺が〔アイテム複合〕でソレを手にしたと同時に爆発が起こり、アバロンを囲んでいた虹色の防壁が砕け散った!
“ごめん、お兄ちゃん。もう限界みたい”
(大丈夫。十分だよ、リィナ]
俺はリィナにそう礼を言うと、アバロンに視線を向けた。
「く……こんな小細工……くそ、フェイはどこだ!」
まだ視力は十分に戻ってないようだが、時間の問題だろう。
(まずは……)
俺はステータスを操作し、スロットに装備したスキルを変更。それから……
“リィナ、レイアに伝言を頼む”
俺の頼んだ伝言にリィナが驚いた声を出す。が、全てを説明している時間はない。俺は徐々に動き始めたアバロンに向かって駆け出した!
「くぅぅっ! 不意打ちか!」
俺が突き出した盾を腕で受け止めながら、アバロンは呻き声を上げる。どうやら思った以上にリィナの閃光が効いたらしい。
(〔超鑑定〕は意味ないか)
〔超鑑定〕を使ってHpを始めとしたパラメーターを知りたい気もするが、流石にそこまでの余裕はない。
「ラァ!」
力まかせにアバロンが俺を押しのける。普通なら追撃を警戒して距離をとるところだが、今は敢えて踏み止まる。
ブン!
一瞬遅れて空気を薙ぐような音。それと共に俺の視界が揺れた。
(何……)
“マスター!”
が、ミアの言葉と共にHpが回復し、視界がクリアになる。俺が新たにスロットに装備したスキル、〔オートアイテム〕が発動し、自動でハイポーションを使ったからだ。
(初めて使ったけど、かなり便利だな)
色々な使い方が出来そうだが、今はアバロンに集中だ。
(オーラで尻尾を作って攻撃してきたのか)
目の前のアバロンには下級悪魔(レッサーデーモン)や中級悪魔(ミドルデーモン)のような尻尾がある。
(というより……)
爪に牙、翼と悪魔に必要なものは全て揃っている。だが、それでいて下級悪魔(レッサーデーモン)や中級悪魔(ミドルデーモン)とは違う。
“恐らく豹炎悪魔(フラウロス)を真似ようとしているのでしょう”
(やっぱりか)
実は俺もそう思っていた。時間経過と共に豹炎悪魔(フラウロス)に近づいていくのなら、やはりあまり時間はかけていられない。
「〔ピュアヒール〕!」
リィナの魔法でHpが全回復するのを感じながら、俺は再びアバロンへ突進する。俺はとにかくアバロンと密着したいのだ。
(そうすれば後はレイアがやってくれる!)
ビュッ!
俺が振り下ろした斬撃はアバロンにあっさりと右腕でガードされる。が、俺もアバロンが振り上げた左腕の攻撃を盾で受け止めた。
(今だ!)
その瞬間、俺とアバロンの体の重みが激増する。それにより俺達は地面に縫い付けられたように動けなくなった。
(オスクリタの魔力、やはり凄いな)
俺はアバロンの見動きを封じるために俺ごとオスクリタの重力で拘束するように頼んだのだ。
(まあ、俺も動けないけど……)
でも、良いのだ。俺の切り札は身動きが取れるかどうかは関係ないのだ。
「〔アイテムスロー〕!」
俺が至近距離からアバロンに投げたアイテムが発動し、効果を発揮する。ちなみに投げたのはこれだ。
◆◆◆
虚無の申し子
邪な魂と冥府の瘴気が混ざり、出来たあらゆる生
を貪り喰らうモノ。周囲の敵に最大値Hp×0.85倍の
ダメージを与えるが、至近距離で使うと自分も巻き
込まれる。
◆◆◆
(ぐっ……)
未体験の虚脱感……巻き込まれることを覚悟して至近距離で使ったのだが、なかなかキツい。だが、次の瞬間、俺のHpは回復した!
(〔オートアイテム〕! やっぱり発動してくれた!)
Hpが減少した時にハイポーションを使うように設定していたのだが、この自爆攻撃でもやはり発動してくれた!
既に重力は消えているが、アバロンは急激にHpが減った虚脱感からまだ回復出来ていない。今だ!
(行くぞ、ミア!)
“はい、マスター!”
俺はミアと心を合わせ、渾身の力でスキルを放った!
「【ディバイド】ッ!」
「オオオァァァ!」
白光に両断されたアバロンは獣のような悲鳴を上げる。そして、赤黒いオーラがアバロンから分離し、砂の城が崩れるようにその形を失う。やった、今度こそ成功だ!
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