第70話 反省
「〔邪炎連弾〕!」
再びアバロンがスキルを放つ。おいおい、このスキルは連発できるのか!
“お兄ちゃん!”
リィナの防壁が目の前に展開する。それはすぐに壊されるものの、確実に威力と速度を削ってくれる。
“マスター、これは恐らく……”
(……分かってる)
俺にはアバロンの狙いが分かってる。それはかつて仲間だったからではなく……
ガキン!
俺は不意に右手から突き出された鉤爪を聖剣フェリドゥーンで受け止めた。最後の〔邪炎連弾〕が着弾したのとほぼ同時に繰り出された攻撃はアバロンの驚異的なAgiもあって初見殺しといっても良かったのだが……
「いいカンしてるじゃないか、フェイ!」
「カンじゃないよ、アバロン。ここに来るまで何度も見たんだ」
この動きは下級悪魔(レッサーデーモン)や中級悪魔(ミドルデーモン)達の動きだ。
「そうか。だが、次はどうかな?」
アバロンは俺から飛び退くと、赤黒いオーラを鉤爪にしたまま、切りかかってきた。
(動きこそ下級悪魔(レッサーデーモン)や中級悪魔(ミドルデーモン)と同じだけど、パラメーターが段違いだな)
少なくともStrとAgiは今の俺とかなり近いだろう。おかげで反撃する隙がない。
“お兄ちゃん、〔紫陽の加護〕を使うよ”
(いや、まだいい。ちょっと様子を見たいんだ)
俺は連撃の隙をつき、ミアのギフトを放った!
「【ディバイド】!」
狙いはアバロンと豹炎悪魔(フラウロス)の間に境界を張る──つまり、アバロンから豹炎悪魔(フラウロス)を引き剥がすことだ。
ズン!
ミアのギフトは発動し、アバロンから一瞬赤黒いオーラが消える。が、再びアバロンの体からオーラが立ち上った!
“も、申し訳ありません。手応えは合ったのですが、もう何回か仕掛ける必要があるみたいです”
(大丈夫だよ。ありがとう、ミア)
悔しそうにそう言うミアを労う一方で、俺は思わず考え込む。
(ミアの口振りだと何度か仕掛ければアバロンと豹炎悪魔(フラウロス)は分離できるかも知れない……)
けど、ギフトはミアを疲労させるから乱発はしたくない。アバロンを弱らせてからギフトを使うのが現実的だろう。
(だが、この調子でアバロンのHpを削って行ってなんとかなるのか?)
豹炎悪魔(フラウロス)の影と戦ったときに見たデタラメなHpが脳裏をよぎる。勿論、あそこまででは無いだろうが……
「見たか、フェイ! 生まれ変わった俺を!」
アバロンが生まれ変わったというのは、つまり今までの自分──経験や知恵、戦い方など──を捨てたということだろう。今の攻撃は今までのアバロンの影も形もない。
“……愚かなことを”
確かにミアの言う通り。だが、俺はその瞬間、自分も同じことをしていることに気がついた。
(でも、俺も同じか……)
確かに俺は強くなった。でも、「パラディンロード」のスキルを使うばかりで「アイテム士」や「アイテムマスター」のスキルを生かした戦い方などは考えなくなっていった。
(「アイテム士」で覚えたスキル、チェックさえしてないな)
今までと変わっていないつもりだった。出来ることを理解し、それを最大限に生かしているつもりだった。だが、現実はそうではなかったのだ。
(リィナ、少し時間を稼いでくれないか?)
(……? うん、分かった)
リィナが手を振ると、虹色の防壁がアバロンを囲み、一斉に目も眩(くら)むような閃光を放った!
(ナイス、リィナ!)
俺はステータスを操作した。えっと、アイテム士で新しく覚えたスキルは……
◆◆◆
〔オートアイテム〕
ダメージを食らうなど特定の条件で自動
的にアイテムを使用出来る。
◆◆◆
◆◆◆
〔投げる〕
アイテムを投げてダメージを与える。ダ
メージは投げたアイテムによって異なる。
◆◆◆
で、アイテムマスターの新しいスキルが……
◆◆◆
〔アイテム節約〕
消費アイテムを使用しても無くならない
ことがある。
◆◆◆
◆◆◆
〔アイテム複合表〕
手持ちのアイテムを使って〔アイテム複
合〕で作れるものが確認できる。
◆◆◆
うおっ……なんだ、このスキル! とりあえず〔アイテム複合表〕で作れるものを確認してみるか。
◆◆◆
悪魔の邪爪×悪魔の邪爪
→呪いの丸薬(飲むとStr(力)が50上がる
が、しばらくすると100低下する)
悪魔の邪爪×ポーション
→ダークポーション(Hpを50回復する
が、しばらくするとHpの最大値が100
低下する)
悪魔の邪爪×エーテル
→ダークエーテル(Mpを50回復するが、
しばらくするとMpの最大値が100低
下する)
◆◆◆
じっくり見たいところだが、時間は限られている。役に立ちそうなものを見ていくと……
(ん……これは!)
俺はある場所で手を止めた。
◆◆◆
大悪魔の邪魂×冥府の呼び声
→虚無の申し子
◆◆◆
これだ!
「〔アイテム複合〕!」
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