第66話 ダッシュ!

 第二封印からは下級悪魔(レッサーデーモン)の数とLvが上がったため、俺とレイアも加わった全員で戦うことが多くなった。


(ノルドさん達がいてくれなかったらもっと時間がかかっていただろうな……)


 意図していなかったレベリングの効果でノルドさん達のLvが上がったこととリィナの掩護のおかげで、結構な戦力になってくれていたのだ。


「パーティで連携すれば下級悪魔(レッサーデーモン)がニ〜三匹いても戦えるな」


「おい、調子に乗り過ぎだぞ。リィナちゃんのバフや防壁での神援護のおかげってことを忘れるなよ」


 戦闘終了時に『金獅子』のメンバーがそんな軽口を叩いていたが、まあ元のパラメーターが低かったらリィナのバフもここまでの効果はなかったと思うけど。


(そう言えば、俺はまだリィナのバフを受けてないな)


 第二封印に入ってからはパーティ全員のバラメーターを上げる〔白陽の加護〕ではなく、前衛のStrとDexを上げる〔赤陽の加護〕を使っているのだ。


“マスターはバフがなくても戦えるからですよ。逆にそれ以外の方は〔白陽の加護〕よりも強力なバフがないと戦えないのです”


 第一封印よりも下級悪魔(レッサーデーモン)のLvが上がったからかなぁ


(確かに俺は一人で下級悪魔(レッサーデーモン)を倒すように言われることが多いな)


 まあ、良く言えば遊撃とでも言うのだろうか。


“どらかと言うとノルドさん達はマスターが相手をされるまでの時間稼ぎをしている感じですが”


(いやいや、それは流石に言い過ぎじゃないか?)


 まあ、下級悪魔(レッサーデーモン)を倒した数はずば抜けて多いけど。


(またか!)


 下級悪魔(レッサーデーモン)の気配だ! 


「下級悪魔(レッサーデーモン)が来ます! ノルドさんを中心に陣形を組んでください!」


「え?」


「でもリィナちゃんが言うなら絶対だ。皆、早く!」


 言うが早いか、下級悪魔(レッサーデーモン)が五〜六体俺達の方へ走ってくるのが見えた。


“お兄ちゃん、お願い!”


(分かった!)


 俺が走りながら〔励声叱咤〕を発動させると奴らの視線が一斉にこちらへ向いた。


(まずは一体!)


 飛びかかってきた下級悪魔(レッサーデーモン)を蹴り飛ばす。方向はそいつの右後ろを走っていた奴のいる方だ。


 ゴン! グチャ!


 当たりどころが悪かったのか、蹴った下級悪魔(レッサーデーモン)だけでなく、当たった奴まで倒れたみたいだ。


(いや、当たりどころが良かったのかな?)


 そんなことを考えながら三体の下級悪魔(レッサーデーモン)と向き合っていると、更に二体が奥から姿を現した!


“お兄ちゃん、こっちに流して大丈夫だよ!”  


 リィナがそう言うと同時にノルドさん達の方から声が上がる。新たに現れた二体は声に誘われるようにノルドさん達の方へ向かった。


(あんまりもたもたしてられないな。行くぞ、ミア!)


“はい、マスター!”


 俺は聖剣フェリドゥーンを構え……

 

 ザンッ! スパッ! ブスッ!


 正直、下級悪魔(レッサーデーモン)とはパラメーターがかなり違うのでよほどの無茶をしなければ瞬殺だ。俺はノルドさん達のところへ駆けつけたが……


「〔九連刃〕!」


 レイアのスキルが一匹の下級悪魔(レッサーデーモン)に止めを刺した!


「じゃあ後一匹か」


 俺は無防備な背中を晒す下級悪魔(レッサーデーモン)に聖剣フェリドゥーンを振った。


「これで終わりか」


 だが、戦闘は終わっても為すべきことが無くなったわけじゃない。先を急がないと……


“さっすが、お兄ちゃん!”


(いや、リィナのおかげだよ)


“本当!? 私、役に立ってる?”


 確かに助かってるけど、これでまた冒険者になりたいとか言われると困るなあ……


「アリステッド男爵! 済まないが、先を急ごう」


 ノルドさんの声だ!


「勿論です!」


 もう残された時間はあまり無いかもしれない。急がないと!




【第五封印 第一区画】



 第五封印には下級悪魔(レッサーデーモン)が見当たらない。ってことは……


“間に合った……ありがとう”

“彼はもう少し先にいる。彼を止めてくれ……”


 第五封印内にいる陽炎のような人影が口々に話しかけてくる。よし、後一踏ん張りだな。


(そう言えば、この声ってみんなには聞こえてるのかな)


 先を急ぎながらふとそんなことを考えると、すかさずリィナから答えが返ってきた。


“レイアさん以外には聞こえてないから私が伝えてるよ”


(そうか……)


 それなら話が早くて助かるな。


「ここには下級悪魔(レッサーデーモン)はいない。最終区画まで走りたいと思うんだが、構わないか?」


「ええ、勿論!」

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