第59話 リィナの秘密
ピィィィン!
そんな音と共に豹炎悪魔(フラウロス)の体が光の中に消えて行く。よ、良かった。封印は成功したのか……
“お兄ちゃん、大丈夫!?”
“マスター!?”
いきなり倒れ込んだ俺に二人が心配そうに声をかけてくる。視界の端にはレイアが何か言いながらこっちに走ってくるのも見えるな。
「大丈夫。ちょっと疲れただけだから」
そう言うと俺は起き上がり、〔ピュアヒール〕で怪我を治療した。怪我は跡形もなく治ったが、鎧の損傷は酷いな……もう駄目かも。
「フェイ、大丈夫?」
「ああ、疲れただけだ。レイアも怪我を見せてくれ」
レイアは防具を外し、打たれた場所を見せてくれた。回復魔法は傷口近くに触れて発動するのが一番効果が高いのだ。
(思った以上にダメージが低いな)
打たれた腹は赤くなってはいるが、内出血さえしていない。正直、もっと酷いことになっていると思ったが……
そんなことを考えてると、頭に拳骨を落とされた。
「早く治して!」
あ、すみません。
〔ピュアヒール〕で治癒すると、レイアは怒ったようにそっぽを向くが、その顔はちょっと赤い。どうしたんだろう。
「周りへの被害は……」
「赤煉瓦亭の壁と道路の穴くらいよ。途中からリィナが結界を張ったみたい。私が豹炎悪魔(フラウロス)に打たれた時もリィナが防壁を張ってダメージを抑えてくれたの」
戦いに夢中で気づかなかったな……いやそれより、リィナだ!
俺がそう思った瞬間、景色が歪む。レイアが言っていた結界が解け、リーマスに戻るのだろう。
“リーマスに戻るね。詳しい話は家でゆっくりしてからね”
そうだな。そうしよう……
※
一息ついた後、俺達は一緒に情報を整理しようと集まった。何せ急に訳わかんないことが起こったからな。
「私の魔法でアリステッド男爵とエーデルローズが戦っていたように偽装したわ。結局直ぐにリィナが結界を張ってくれたからあんまり意味がなかったけど」
口火を切ったのはジーナさんだ。
「あの豹炎悪魔(フラウロス)は封印が破られたせいで現れたってことで良いんだよな」
「そうだよ、お兄ちゃん。でも、あれで本物の三割程度の差力だって」
あ、あれで三割!?
(いや待て、それよりも……)
そもそも何でそんなことが分かるんだ?
「そう言えば、何でリィナはそんなに色々と知っているの? それに色々な力で私を助けてくれたけど、まだクラスは無いのよね?」
この世界では十八才になると天からクラスを賜って様々なスキルを使うことが出来るようになるのだが、リィナはまだ十七才(正確には十七歳と三ヶ月)。まだ、クラスを得られる年齢ではない。
「……私にも良くわからないけど、不思議な声が聞こえてきて、知らないことを教えてくれたり、お兄ちゃんやレイアさんを助けることが出来るようになっちゃって」
不思議な声……もしかして俺も聞いたアレかな。
(封印はリィナの両親が自らの心身と共に豹炎悪魔(フラウロス)を封じたもの。それが解けつつある今、リィナのご両親の意識も解放されつつあるのか?)
「よくすぐに使いこなせたな。かなり的確だったけど……」
「実はいつもジーナさんとやり取りしているときにやってることと似てて……」
何でもリィナは結界の礎になっているリィナのお母さんを介すれば、どこにいてもリーマスにいる住民と会話できるとのことだった。
(それであんなに情報が早かったのか)
あれ、何で俺には秘密だったんだ?
「オレとは使ってなかったよな?」
「そ、それはデメリットがあるというか……違うの、相手が女の人じゃないと駄目なの」
そうなのか。相手の性別が問題になるような力なのか……?
「よく分からないけど助かったわ。ありがとう、リィナ!」
確かにレイアの言う通り、よく分からないけど助かったな。正直リィナのサポートが無かったらどうなっていたか。
「残るのは第五封印だけ。何としても守らなきゃ」
「第五封印へ行くときもリィナに救けてもらえたら安全なんだけどね」
無茶苦茶言うなよ、レイア……
「大体今も使えるのかどうか」
ジーナさんがそう言うと、リィナは“試してみる!”と言い、虹色の防壁を出現させた。
「出来るみたい。もしかして、私、お兄ちゃんとレイアさんの役に立てる?」
「リィナにそんな危険なことをさせられない!」
封印内は下級悪魔(レッサーデーモン)で一杯なんだ! そんな場所にリィナを連れていけるもんか!
「でも、お兄ちゃんとレイアさんは行くんでしょ?」
「それとこれは話が別だろ」
だって俺達は冒険者だし、スキルもクラスも……そうだ、クラスだよ!
「俺達はクラスを得てスキルが使えるが、リィナはそうじゃない。スキルが無いのに戦うなんて有り得ない!」
あれ、ジーナさんが何か言いたげな顔をしてるけど、何でだ? 別に間違ったことは言ってないけど。
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