第58話 呆然……そして

◆◆◆


 豹炎悪魔(フラウロス)

 Lv???

 Hp 29800000/300000000


※角が破壊されたため、弱体化中。ステー 

 タス、状態異常耐性が大幅な低下したこと

 に加え、一部のスキルが使用不可になって

 いる。角の再生まで後287秒。


◆◆◆



 Hpが3000000!?


 いや、それよりもまだHpがこんなに残ってるのか!


(しかも、角はあと少しで再生する……)


 〔超鑑定〕がもたらした絶望的な情報に俺は一瞬棒立ちになってしまった。


 ボカッ! 


 硬直が解けた豹炎悪魔(フラウロス)がその隙を見逃すはずがない。俺はヤツの拳をくらってしまった。


(くっ、しっかりしろ!)


 転がるように移動して追撃をかわしながら、俺は自分に喝をいれる。


“マスター、大丈夫ですか!?”


(大丈夫だ。すまない)


 くそ、ミアを心配させてしまったな。


(後どれだけHpが残っていようと俺のすべきことは変わらないハズだ!)


 俺のすべきことは豹炎悪魔(フラウロス)を倒す、それだけだ。そのためなら全力を振り絞ってやる!


(だが、オレ一人でこの膨大なHpを削り切れるのか……?)


 弱気になっては駄目だ! 心を強く持たないと!


“お兄ちゃん!”


 リィナ! そうだ、どんな手を使ってもリィナの大切な人がいっぱいいるこのリーマスを守らなきゃ……


“別にHpを削り切る必要はないの。また、封印してしまえば良いのよ”


 何だって!?


「チョコマカトッ!」


 おっと! リィナの話に気を取られて豹炎悪魔(フラウロス)の拳がカスった……危ない、危ない


“今、もう一回封印するための鍵を用意してる。もう少し待ってて”


 鍵?


 いや、何でもいいか。よしっ! オレ一人でも何とか……


“回復したレイアさんもそろそろ来てくれるよ!”


 リィナの言葉と共に〔飛刃:三連〕が豹炎悪魔(フラウロス)の頭にヒットする。レイアが戻ってきてくれたんだ!


「倍返ししてやる!」


 全快という訳ではないが、闘志は申し分ないレベルだ。よし、これならいけるか?


「〔デュアシールドアタック〕!」


 レイアの方に気を取られた豹炎悪魔(フラウロス)に盾でのスキル攻撃を放つ。こうやって注意を分散していけば!


「ガァッ!」


 効果はあったようだが、豹炎悪魔(フラウロス)はスタンにはならず、拳を振って反撃してくる。


「〔疾風切り:二連〕」


 俺が素直に後退した瞬間、レイアのスキルが入る。豹炎悪魔(フラウロス)のHpの多さを考えればダメージは大したことがないだろうが、とにかく自由にさせないことが大事だ。


(!!!)


 何か来るぞ!



◆◆◆


〔流星脚〕


◆◆◆



 標的は距離をとったはずのレイア。マズイ、コイツのスキルはこんなに射程距離が長いのか!


「〔デュアカバーガード〕!」


 スキルが発動し、俺は一瞬の内にレイアを庇うように背後へ移動して──


 ガスガスガスガス!


 豹炎悪魔(フラウロス)の連続蹴りが盾に打ち付けられる! スキル自体は「格闘家」という上位クラスで覚えるものと同じようだが、何せ人間とはパラメータが違う。文字通り流れ星を受けているかのような衝撃だ!


 ガスガスガスガス!


 く、手が痺れる………


“うっ……力場の維持がっ”

 

 その瞬間、盾が砕かれ、豹炎悪魔(フラウロス)の蹴りが俺に当たった!


 メリメリメリッ!


 骨が軋み、内臓が歪む。俺はそのまま吹き飛ばされたが、十メートルほど飛んだところで虹色の防壁に受け止められ、地に伏した。


“お兄ちゃん!”

“マスター!”


 だ、大丈夫。まだやれる。立ち上がった俺の目には、豹炎悪魔(フラウロス)が虹色の防壁を破壊しながらこちらに突進して来るのが見えた。


“出来た! お兄ちゃん、これが封印の鍵だよ!”


 リィナの声と共に虹色の槍のようなものが目の前に現れる。これがあれば、あの豹炎悪魔(フラウロス)を再び封印出来るのか……


“これで豹炎悪魔(フラウロス)の体を貫けば……でもお兄ちゃん、無理しないで”


 大丈夫だ、リィナ! まだ体はちゃんと動く。


(突進してくる豹炎悪魔(フラウロス)にカウンターを合わせる感じで突き刺してやる!)


 豹炎悪魔(フラウロス)はもう目の前だ。よし、そのまま……


 ボウッ!


 待ち構える俺に突如炎弾が飛んで来た! なっ、アイツ移動しながら!


(しまった、盾がない!)


 肩口に炎弾を食らった俺は姿勢を崩し、封印の鍵を取り落とす。クソっ! 殺られる……


 ズンッ!


 俺に突進していた豹炎悪魔(フラウロス)の片足が一瞬止まる。それにより、バランスを崩した豹炎悪魔(フラウロス)が転倒した。


「フェイ!」


 今のはレイアの魔剣オスクリタの力か!


「くらえっ!」


 とっさに放ったせいか、炎弾の威力はさほどではない。俺は封印の鍵を手に取ると、立ち上がろうとする豹炎悪魔(フラウロス)目掛けて投げつけた!

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