第57話 〔邪炎嵐(イビルストーム)〕

◆◆◆


 〔邪炎嵐(イビルストーム)〕


◆◆◆


 

 スキル名がポップアップすると同時に黒い豹炎悪魔(フラウロス)が黒い炎に包まれる。その熱量たるや触れてもいないのに肌が火傷しそうなくらいだ。


(これはヤバい!)


 なるべく離れなくては!


“お兄ちゃん!”


 リィナの声と共に近くの地面が光る。俺は迷わずそこへ滑り込んだ!


 ドォォン!!!


 〔邪炎嵐(イビルストーム)〕と名がついているが、もはや熱の嵐というよりも爆発に近い。盾では防ぎようもない攻撃だ。


(危なかった……)


 俺は豹炎悪魔(フラウロス)の拳が地面に空けた穴に入って爆発をやり過ごしていた。


「フェイ、大丈夫?」


 虹色の防壁からレイアが姿を現した。この防壁もリィナの力なのか?


(まだクラスも得てないのに……)


 いかん! 今は豹炎悪魔(フラウロス)に集中だ!

 

「行くぞ、レイア!」


 そう言って俺が駆け出すと、レイアは嬉しそうな笑顔を浮かべた。


(相変わらず好戦的だなぁ……)


 こういうところが普段は玉に瑕なのだが、今は心強い。


(ここが攻め時……) 


 豹炎悪魔(フラウロス)はスキル攻撃を放ったことにより今は硬直しているハズ。つまり、絶好のチャンスなのだ。


「〔剣の舞〕!」


 〔剣の舞〕はLv÷3の回数の斬撃を連続で放つ強力なスキルだ。一撃のダメージは通常の七割程度になってしまうが、今のレイアなら最大十二回の攻撃が可能になる!


 ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ!


 斬撃が次々とヒットするが、硬い皮膚に阻まれ、豹炎悪魔(フラウロス)にはダメージがあまり入らない……


 ガキン!


 しかも五発目の斬撃は硬直が解けかかった豹炎悪魔(フラウロス)の腕甲で防がれた。マズイ!


 ブンッ!


 その瞬間、さっき〔邪炎嵐(イビルストーム)〕からレイアを守った虹色の防壁が現れた。よし、これなら大丈夫か!


 パリィン!


 だが、虹色の防壁はあっさり破れ、レイアは豹炎悪魔(フラウロス)の拳で吹き飛ばされた!


(レイアッ!!!)


 だが、俺が今すべきなのはレイアの心配じゃない。俺は攻撃直後の豹炎悪魔(フラウロス)目がけてギフトを放った!


「【ディバイド】ッ!」

「ガァァァッ!」


 角の分断にのみ力を集約させた攻撃に豹炎悪魔(フラウロス)が今までとは違う苦しみ方を見せる。そして……


 ピシ……


 ピシピシピシ……


 や、やったか?


 パリーン!


 よし、角が破壊できた!


「オ、オノレ!」


 急に豹炎悪魔(フラウロス)の輪郭がぼやけ、体のあちこちから黒い炎が吹き出した。


「グ、グググ……」


 だが、黒い炎は自分の意思で出ているわけではないらしく、豹炎悪魔(フラウロス)は鬱陶しそうに抑えようとしている。


“お兄ちゃん、レイアさんは大丈夫だから今のうちに!”


 よしっ!


「行くぞっ!」


 俺が盾を構えて突進すると、豹炎悪魔(フラウロス)は炎弾を飛ばして応戦する。


(さっきほどの熱量はないな……)


 角を折る前はガードしても肌が焦げそうなほどの熱量だったが、今はさほどでもない。


(これなら……)


 俺は盾を前に構えて徐々に距離を詰める。


「ッ! ナメルナ!」


 近づいた俺に豹炎悪魔(フラウロス)は拳を振るう。だが、その動きも最初と比べれば雲泥の差。これなら……


「〔デュアシールドカウンター〕!」


 カウンター気味に放ったスキルは本来武器破壊のためのものだが、生身でも効果を発揮する。例えば……


 ガツッ!


 頭部にクリティカルヒットした〔デュアシールドカウンター〕が豹炎悪魔(フラウロス)にスタンを付与した。もしやと思って使って見たのだが、やはり状態異常耐性も下がっているみたいだ。


「〔グランドクロス〕!」


 縦横二回の斬撃ダメージに最後の聖属性ダメージまで綺麗に入った!


(結構削れたよな)


 これくらいの攻撃で倒れるはずはないが、同じようなダメージを後一〜ニ回与えればHpが七割くらいにはなるはずだ。


(そうだ! 試してみるか)


 俺はスタンから回復しつつある豹炎悪魔(フラウロス)にから距離を取り、〔超鑑定〕を発動した。



◆◆◆


 豹炎悪魔(フラウロス)

 Lv???

 Hp 29800000/30000000


※角が破壊されたため、弱体化中。ステータス、状態異常耐性が大幅な低下したことに加え、一部のスキルが使用不可になっている。角の再生まで後287秒。


◆◆◆



 な、なんだって……

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