第60話 クラスと託宣の聖印
「つまり、フェイはリィナにまだクラスがないからパーティには入れられないって言うのね?」
ん? そう言うことになるのか?
レイアの言葉に首を傾げた俺が何かを言う前にジーナさんが口を開く。
「逆に言えば、リィナにクラスがあれば一緒に行っていいのよね?」
………?
「いや、それは──」
「なら解決ね! リィナに託宣の聖印を使えばいいのよ」
は?
「後は封印に入る方法だけど……」
「いや、待ってくれ!」
俺がそう言うと、何故か皆が不思議そうな顔をする。オイオイ、何でこんな展開になってるんだ?
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「どうしたのって……危険すぎるだろ」
俺がそう言うと、三人は顔を見合わせた。
「そうは言うけど、今やリーマスはどこもかしこも危険よ。フェイの側にいるほうが安全かも」
まあ、いつ封印が解けるか分からないし……っていくら何でもそれは言いすぎだろ、レイア!
「リィナが何の知識も経験もない一般人ならこんなことは言わないけど……実はリィナは既に冒険者になるための初心者研修を全て終えてるの」
なっ! 聞いてないぞ!
「黙っててごめんね、お兄ちゃん。反対されると思ってつい……」
悪びれた様子もなくそういうリィナだが、そんな顔も可愛くて怒りたくても怒れない! ズルいな!
「実地を含めた研修はどれも成績優秀。しかも、さっきの戦いでの行動もとても良かったわ」
「ありがとう、ジーナさん」
リィナは嬉しそうに頬を赤くしてるけど、違うから! 問題はそこじゃないから!
「リィナは防壁の後ろから私達をサポートするだけなんだし、危険なんてないでしょ」
レイアまで簡単にそう言ってくるが……
(そういや、さっきの戦いで俺はリィナがどこにいたのかを見てなかったけど……そうか、何処かに展開されていた防壁の後ろにいたのか)
まあ、それが分かったところで結論が変わるわけじゃないけどな!
「ねぇ、お兄ちゃん……」
そんな可愛い表情でねだっても駄目だぞ、リィナ!
「クラスを得てからじゃないと冒険者にはなれない。これはルールだ」
「別に封印は冒険者じゃなくても入れるでしょ」
クッ……レイア、覚えとけよ!
「お兄ちゃん、前に私に“一緒に戦おう”って言ってくれたでしょ? 私だって力がないのにお兄ちゃんについていこうとは思わない」
…………
「けど、助ける力があるなら話はまた別だよね? 私だってお兄ちゃんのことが心配で守りたいと思ってるんだから」
でも、俺はリィナに危険な目には会ってほしくないんだ。
(何て言えば伝わるんだろう)
俺が返事に窮していると、助け舟を出すようにジーナさんが俺とリィナに声をかけてくれた。
「とりあえずクラスを手に入れてみたら? 戦闘向きなクラスが出るとは限らないし」
「まあ、今のリーマスの状況を考えたらクラスを持っていて悪いことはないわね」
俺も託宣の聖印を使ってクラスを得ること自体は反対じゃない。いざという時に自分を守れる力を持つことは特に今のリーマスではとても重要なことだ。
「俺もリィナがクラスを持つことには反対じゃないけど……」
「じゃあ、とりあえずやってみたら? 生産職なら
生産職っていうのは何かを作り出すクラスで例えば武具の作成に便利なスキルを持つ鍛冶師や調理に役立つスキルを持つ料理人などが挙げられる。どれも身を立てるには役立つクラスだが、一般には冒険者には向かないとされてるクラスだ。
(生産職が出ても
まあ、十八歳になったら別のクラスが手に入るから……ってことだよな?
「まあ良いけど、生産職が出たら封印に行くのは諦めるんだぞ?」
「分かった」
ゴネるかと思ったが──ちなみにゴネられて困るのは俺が多分負けるからだが──リィナは素直に頷いた。
「逆に言えば、冒険者に向いたクラスならリィナを連れて行くのね?」
くっ……レイアめ、余計なことを!
「クラスによるだろ、それは」
俺がそう言うと、ジーナさんが不満そうに口をパクパクさせた。何となく、“どの口が……”とか“アイテム士はどうなの?”とか言ってる気がする。
「……まあ、とにかくやってみましょ。フェイ、どうしたらいいの?」
「近くに来て後ろを向いてくれたらいいよ」
そう言いながら、俺はステータスを操作してクラスをアイテム士からアイテムマスターに変更する。ジーナさんの忠告を受けてから、町中ではクラスを常にアイテム士にしているのだ。
「よし、行くぞ。避けちゃだめだぞ、リィナ」
「うん、分かった」
まあ、レイアも戦闘向きのクラスが出るまで何回もかかったし、一回だけなら大丈夫だろう。
「〔アイテムスロー〕!」
リィナの後頭部に託宣の聖印がぶつかると同時にウインドウがポップアップした。
◆◆◆
リィナか称号「聖女」を獲得しました
◆◆◆
は、何だって……
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