第52話 再会

 ズンッ!


 下級悪魔(レッサーデーモン)達をレイアの魔剣、オスクリタの魔力が襲う。


(これは……重力か!)


 二匹の下級悪魔(レッサーデーモン)が膝を折り、地面に這いつくばっている。だが、残りの三匹は俺達に向かって突進して来た!


“マスター、ギフトを!”


 ギフトと言うのはミアに宿る神の力、つまり聖剣としてのミアの能力だ。それなりに力が戻ってきたおかげで使えるようになって来たらしい。


「【ディバイド】!」


 ミアの能力が発動した瞬間、三体の下級悪魔(レッサーデーモン)はまるで砂が風に飛ばされるように消えていく。おおっ……まさかこれほどの威力とは


“私達と下級悪魔(レッサーデーモン)の間に境界を引きました。これを越えられない存在は私達に干渉できません”


 ミアのギフトは“境界”。何かと何かに線を引いたり、逆に引かれている境界を取り去ったりするらしい。


(何度か説明を受けたけど、まだよく分からないな……)


 まあ、使ってるうちに分かってくるよな?


◆◆◆


 レベルが上がりました。


◆◆◆


◆◆◆


 レイアのレベルが上がりました


◆◆◆


 拘束した下級悪魔(レッサーデーモン)に止めを刺したところでウインドウが開いた。下級とはいえ、悪魔は流石に貰える経験値が違うな。


(これでLv59か)


 Lvとしてはまだまだベテランには程遠いが、ステータスは既に無茶苦茶なことになっている。近いうちに力加減の調整について訓練しないとな。


(いや、今はそんなことを考えている場合じゃない!)


 俺は下級悪魔(レッサーデーモン)を手早く回収すると、レイアと共に先を急いだ。





【第一封印 最深部】



 小一時間ほどすると、俺達は第一封印の最深部へと辿り着いた。


「……壊れてる」


 そこには恐らく第二封印へ続いているであろう階段と壊れた石碑がある。


(この封印、何とか修理出来ないかな)


 ふとそんなことを思った俺だったが……


“かなり高度な封印なので困難です。それに封印に悪意を持つ者が内部にいてはまた破壊される可能性が高いです”


 確かにミアの言う通りだ。犯人を先に捕まえないとな。


「早く先にいきましょう!」


 レイアは下級悪魔(レッサーデーモン)相手に色々試せたのが嬉しかったらしく、テンションが高い。


(まあ、確かに見事な戦いぶりだったよな)


 魔剣オスクリタやスキルを上手く使い、ほとんどダメージを受けていないのだ。


“マスターも負けてませんよ”


(そうかな?)


“マスターの方が下級悪魔(レッサーデーモン)を倒した数はかなり多いじゃないですか”


(でも、まあミアの力があったからだしな……)


 ミアのギフトは正直強力すぎるくらいだ。これでまだ不十分とか言うのが信じられない。


“それはマスターが上手く使いこなせているからですよ。並のパラディンではこうはいきません”


 ミアの言葉がお世辞なのか事実なのかは分からないけど、まあここは素直に褒められていると思って置こう。


「フェイ、どうしたの?」

「何でもない。行こう」


 俺は第ニ封印へと繫がる階段に足を踏み入れた。



【第三封印 第一区画】



 第ニ封印を抜け、第三封印に入ると、そこには下級悪魔(レッサーデーモン)の姿はなく、代わりに……


“間に合ってくれたか……”


 第三封印に入って俺達が見たのは陽炎のような人影。それらに顔はないが、俺達を見て安堵したように見える。


“よくぞ呼びかけに応えてくれた”


“困難を乗り越え、ここまで来てくれたことに感謝します”


 周囲の陽炎のような人影は口々に俺達への感謝を述べ、俺達を奥へと誘(いざな)った。


(この人達が俺達を封印へ呼んだみたいだな)


 この陽炎の人影は恐らくリィナの両親の残留思念。封印が破壊されることを恐れ、俺達を封印内に導いたってところか。


(何で俺達なのかは分からないが……)


 まあ、ここまで来たらやることは一つだ。


“彼らには私達の声が届かない”


“私達の代わりに彼らに……”


 彼ら?


 道中、所々で首を傾げながら進むと、いよいよ第二封印の最深部が見えてきた。



【第三封印 最深部】


 

「あれは第一封印の時と同じ石碑じゃない?」

 

 最深部についた俺達の目の前には、第一封印の最深部にあったのと同じ石碑。そして……


「えっ……何なの、あいつら!」


 近づくと石碑の周りでうめきながら倒れる冒険者達……いや、こいつらは!


「ア、アバロンなのか!?」


 何と石碑の周りで苦しんでいたのはアバロン達、『白銀の翼』の皆だった!


「くそっ……誰だよ、お前! 邪魔する気か……」


 そう言って武器を構えるアバロンは俺の記憶の中の奴とは大分違う。有り体にいれば、今のアバロンは見すぼらしかった。


(一体何が……)


 俺が変わり果てたアバロンを前に呆然としていると、奴はまるで幽霊でもみたかのような声を出して俺を指さした。

 

「お前……まさかフェイなのか!?」

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