第43話 聖剣アロンダイト
「う……なん……だ?」
どうやら轟音によりドレイクか意識を取り戻したらしいな。
「くそっ……魔力の使いすぎで意識を失っていたか。そうだ、封印は……よしっ、成──」
“おおっ、そんなまさか……”
聖剣はドレイクを完全に無視して俺達に話しかけてきた。
“これほどの聖剣と聖騎士がおられるとは…”
「いえ、私はそんな……確かにマスターは凄い方ですが。ところで、あなたの名は何というのですか?」
“アロンダイトです。頭を垂れることが出来ないことをどうぞお許し下さい”
「私の名はミア=フェリドゥーン=エルヴァスティです。貴方に聞きたいことがあるのです」
“フ、フェリドゥーン様ですと! まさか人界におられたなんて!?”
え、どういうこと?
「聖剣には地上に存在するものと必要に応じて神界から地上へ送られるものがあるんです」
「え?」「は?」「ふ~ん」
シノンとドレイク、レイアが三種三様の反応をする。シノン達が知らなかったということは聖剣や神についての情報が豊富な神聖オズワルド共和国でもあまり知られていない話なのかな
“失礼しました……フェリドゥーン様。かねがねお噂は聞いております。なんなりとお尋ね下さい”
アロンダイトは何とか動揺を抑えて畏まった。まあ、とは言っても最初の位置から動いた訳ではなく、あくまでも態度の話だ。
「まず──」
「おい、お前は誰だ!」
あ、ドレイクはミアに会うのは初めてだっけ?
(ミアが俺の聖剣だって気づいてないのか)
でも、シノンは気づいてるっぽかったけど……
「馬鹿っ! フェイ様の聖剣が化身した姿だって気づかないの!」
「えっ! あ……」
そう言われてようやく気づいたらしいが……
“私ならともかく、フェリドゥーン様の言葉を遮るとは、神官騎士の風上にもおけんな……”
「えっ、これはアロンダイト様の声!?」
あ、これはドレイクにも聞こえてるんだ。
「ということはアロンダイト様が俺を認めて下さって……」
“その逆だ! この馬鹿者が!”
バリバリバリッ!
アロンダイトから白い雷が飛び、ドレイクは丸焦げになった。
“ふぅ……ミア様、失礼しました”
「私は別に気にしてないのですが……」
“何を仰るのです! 貴方様は神から遣われし存在。人間……しかも神に仕える神官騎士ともあろうものが、粗略に扱って良いはずがありません”
ミアって凄い聖剣なんだな……
(一緒にご飯食べてるとか、同じ部屋で寝てるとか知られたら怒られるかな……)
とにかく余計なことは言わずに黙っとこう。
「私は使命を帯びて人界に参りましたが、邪悪な存在に捕らえられ、すんでのところでマスターに救われました」
“おおっ、お労しや”
「今は回復が先ですが、今後のためにも何が起こったのかを知りたいのです。私は地上の魔法やスキルにあまり詳しくないので是非知恵を貸して下さい」
“勿論です。フェリドゥーン様”
「確か私は神聖オズワルド共和国の教会に降りる予定だったのですが、実際には違いました。こんなことが可能な力に心当たりはありませんか?」
“あるとも言えますし、ないとも言えます。フェリドゥーン様の降臨は神の意志、つまり神の御業によるものです。それを歪めることが出来るとしたら、それは魔王の力以外にはありえません”
「「魔王!」」
俺とミアの言葉にレイアとシノンがビクッと反応した。どんな話でも一瞬で最悪の展開に出来る単語、それが魔王だ。
魔王は約百年毎に現れるとされる存在で前回現れたのが約八十年前。まだ大丈夫そうに思えるが、現れる時期は二〜三十年程度は前後するため、各国はピリビリしている。
ちなみによく魔族の王と勘違いされるが、魔族と魔王は全く関係がない。この勘違いのせいで魔族は生きにくいとよく師匠がボヤいていたな。
(早く説明した方がいいな)
俺はミアとアロンダイトの話を聞きながら二人に今までの話を説明した。
“ネットワークでは魔王出現の気配を感じる聖剣もいると聞いています。前魔王の部下などが動いている可能性はあります”
ちなみに魔物が妙に繁殖したり、本来の生息域ではない場所に現れたりといった現象は魔王出現の前触れとされている。
“ただ、表立った動きはまだないため、ミア様を攫った輩の目星はつきません。申し訳ありません”
「いえ、教えてくれてありがとうございます。恥ずかしながらまだネットワークを使えるほどには回復していないので助かりました」
そう言えば、さっきから話に出ている“ネットワーク”って何だろう。聖剣同士の掲示板みたいなもんかな。
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