第41話 失敗

 食事が終わった俺達は二階にたくさんあった個室で寝ることにした。寝具が駄目になっているから、今日も寝袋だが、屋根があると大分違う。


「そう言えば、ドレイク達はまだ寝ないのかな」


 ドレイク達は食事を終えた後、再び部屋を出たまま戻って来なかったのだ。


「まあ、別にどうでもいいんじゃない? 関係ないし」


 まあ、確かにそうなんだが……そう言われると身も蓋もないな。


(まあ、時間があったら明日様子を聞いてみるか)


 そう言ってレイアと別れて部屋に入ろうとしたところ……


 ドカドカドカッ!


 下の方だが、一体何の音だ!?


「様子を見てくるよ」

「私も行くわ」


 ちなみに俺もレイアも(ついでに言えばミアも)防具と上着を脱いだだけで寝間着やパジャマ姿と言うわけではない。楽な格好ではないが、冒険中は大体こうだ。


「手分けして様子を探りましょう」

「ああ」


 一階に降りた俺達は早速あちこちを見てまわったのだが……

 

「特に何もないわね」

「さっきの音……一階じゃないな」


 何も変わった様子はなかったのだ。あれだけの音だから、何か壊れたりしていてもおかしくはないと思う……


「マスター、地下室ではないでしょうか」


 え、地下室?


「この建物、地下室があるの?」


「地下室というより、地下に空間があります。そこに聖剣の存在を感じます」


 同じ聖剣だから分かったってことかな。


「じゃあ、地下を見てみるか。入り口は……」


「そこです」


 ミアは俺達の足元の絨毯を指差した。なるほど、こうやって隠してあったのか!


 降りる順は俺、レイア、ミアの順だ。レイアにボソッと“上を見ないでよ”と言われながら降りた先にあったのは……


「あれ、ドレイクじゃないか」


 降りた先には疲れ切ったドレイクが倒れていたのだ。


「貴方達は確か聖剣に認められたという……」


 俺達の姿を見て、ドレイクと同じ格好をした可愛い女の子がこちらを向いた。多分、矢を放ってきたドレイクの仲間だろう。


「フェイです」

「私はレイア」


 俺達が名乗ると、女の子は深々と頭を下げた。


「私はシノンと言います。ドレイクを止められず、いきなり攻撃してしまってすみませんでした。彼が無断で修道院に入ろうとする者は賊に違いないと聞かなくて……」


 ああ、そう言う理由か。


「のわりに矢を爆発させたりしたじゃない」


「すみません。でも、あれはスタン効果だけでダメージはなくて」


 あ、そうなんだ。


「といってもLvが高い人には効かないんですけど。前のクラスで覚えたスキルなんです」


 ということは少なくとも上級クラスなのか。スロットに下級クラスのアビリティをセットしてる感じかな?


(弓関係の下級クラスだとよくあるのは『狩人』とかかな)


 だとすると、セットしてあるアビリティは……


「……今の話が理解出来るということはお二人共上級クラスなんですね」


 鋭い!


 いや、これはカマをかけられたのか。


「まあ、私達の攻撃をあれだけあっさりかわした段階で既に分かっていたことですけど」


「………」


 シノンはドレイクとは違って分析派なんだな。


「ところであなた達は何をしてたの? 寝る前に凄い音がしてびっくりしたんだけど」


「実は……」


 シノンが地面に伸びているドレイクに目をやりながら口籠るところを見ると、言いづらいことなのか。


(別に無理に聞くつもりはないんだけどな)


 とか思っていると、意外なところから答えがやって来た。


「聖剣の封印をし直そうとして失敗したんでしょう」


 ミアが指を指す先には絵や複雑な文字が四方に書かれた杭のようなものがある。多分これが封印の鍵なんだろう。


「恥ずかしながら……封印をし直すにはまず封印を解かなくてはならないのですが、それさえ出来ていないのです」


 封印の解除、封印のし直しか。きっと複雑な手順があるんだろうな。


“マスターは既にお出来になりますよ”


(え?)


 俺はミアの言葉に驚いた。


“封印は装置に然るべき手順で魔力を供給すれば解除することも発動することもできますが、そのための魔道具は彼らが持っています”


 あれ、じゃあ何で封印の解除が出来ないんだろう?


“Mpや魔力を始めとしたステータス不足の可能性が高いです”


 つまり、俺はそれを満たしているから封印の解除が出来るということか。


「ちょっとフェイ、どうしたのよ黙り込んで」


 こうは言っているが、レイアも俺とミアがテレパシーのような会話が出来ることは知っている。なので、意味合いとしては“そろそろ自分にも説明しろ”だ。


「実は……」


 俺はミアから聞いた話をレイアに聞かせた。

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