第25話 戦いが終わって……

見方によったら微エロ回


 俺が手を伸ばしたのは大泥鼠(ビックマッドマウス)の背についた塊……の中にある物だ。


(レイアには感謝だな)


 今、レイアの猛攻で大泥鼠(ビックマッドマウス)の動きが止まっているからこそ出来る芸当だ。


(痛ッ!)


 酸か何かで焼かれるような痛みが走るのは無視して俺はそれを掴み、引き抜いた。


(剣、なのか君は)


 声の主が剣だとは思ってなかった……まあ、何だと思ってたんだと言われたら返す言葉もないんだけど。


“ありがとう……”


 何故か続きは言われずとも分かった。俺は引き抜いた剣を鞘から抜き放った!


「%&$#!」


 緑の塊が音にならない悲鳴を上げ、まるで溶けるように崩れ落ちる。すると、大泥鼠(ビックマッドマウス)は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。  



◆◆◆


 ダンジョンボスを倒しました


◆◆◆


◆◆◆


 レイアのレベルが上がりました


◆◆◆


 レベルが上がりました


◆◆◆


 蒼風の草原をクリアしました


◆◆◆


◆◆◆


 クリア報酬としてダンジョンコアを入手しました。


◆◆◆



 や、やった……


 だが、安堵した途端、バタッという嫌な音がした。


「レイア!」


 慌てて駆け寄ると、レイアの防具を外し、服を脱がせて体を診る。負荷をかけたことによる内出血などはないし、大泥鼠〈ビックマッドマウス〉からうけた傷もさほど深くない。


〔ピュアヒール〕で傷を癒やした後、さらに詳しく体の状態を診ていく。こういった知識は武術と同じように師匠から教わっている


(腱も無事……脱臼はしてないかな)


 大丈夫みたいだ。良かった。


「んっ……」


 良かった。レイアの意識が戻る!


「……私、一体」


「大泥鼠(ビックマッドマウス)を倒した後、急に倒れたんだ」


「大泥鼠(ビックマッドマウス)……そうだった。私、無理にスキルを発動して……っ!」


 今まで朦朧としていた意識がここで急に戻ったらしく、レイアは急に腕で体を覆う。触診をするため、今のレイアは下着同然の格好なのだ。


「誤解しないでくれよ。触──」


「分かってる。最後までお願い」


「今終わったところだ。大丈夫、問題ない」


「……ありがと。ちょっと後ろを向いていて」


「分かった」


 俺が素早く後ろを向くと、衣擦れの音がする。さっきまでレイアの体を触っていたときは何の意識もしていなかったのに、なんだか急に妙な気分に……


「もういいわよ」


 恐る恐る振り返ると、そこにはいつも通りのレイアがいた。


「ふぅぅ。今日はアンタの無茶のせいで酷い目にあったわ。肩でも揉んでよ」


「肩もみ……」


 その瞬間、俺に稲妻が走り、俺はマシーンと化す。肩こりは万病の元。滅すべき存在だ!


「何よ! 私はあなたの無茶のために体を張ったのよ? そのくらい良いじゃない」


「……そうだな」


 この焦りよう……相当体に負荷がかかったんだろう。


(大丈夫だ。俺なら完治してやれるからな)


 俺の肩揉みには定評があり、アバロンを始めとした同性だけでなく、リィナやジーナさんでさえ俺の顧客になっているほどなのだ。


「じゃあ、行くぞ」


「ちゃんと力をいれてよね。私、中途半端は嫌いだから」


 俺はレイアの滑らかな肌に手を伸ばす。だが、雑念が生じるのはほんの一瞬。以後、俺は一個のリラックスマシーンと化す。


「えっ、ちょっと待──あッ! ああッ!」


 機械に悲鳴は聞こえない。分かるのはターゲットの凝り具合のみだ!


「かなり負荷がかかったみたいだな。よくほぐしておくぞ」


 お望み通り、俺はガチガチの肩を容赦なく揉みほぐす。これほどの凝り……未だかつて出会ったことがない!


「ん!」


 効いてる、効いてるぞ!


「ひょっとしてここもか?」


「んんんっ!」


 よし、なら……


「ここも弱いのか。ひょっとしてここもか?」


「アンッ!」


「次はここ!」


「やんっ!」


「さらにここだ!」


「ああんっ!」


 弱点は全て分かった。なら……


「時間もないし、一気にいくぞ!」

「だ、ダメぇぇぇ!」


 終わった後、レイアは赤い顔をしながら肩で息をしていたが……どうしたんだ、一体。


「大丈夫か、レイア?」


「……このことは秘密だからね」


 このことってどのことだ?


「分かった? 分かったら返事をして!」


 レイアからのプレッシャーが強すぎて、「何を?」とか言える雰囲気じゃない……




<レイア視点>



 倒れた後、私は直に意識を取り戻した。フェイは丁寧に触診をしてくれてた。しかも、全く下心なく、である。


(けど、私は……)


 自分でも訳が分からないのだが、フェイに触れられるのを嬉しく感じてしまったのだ。それが何だか恥ずかしくて意識を失っているフリをしたのだが……


(何なの……ただの肩揉みであんな……)


 触診が終わってしまったのがちょっと残念だったので不自然ない範囲で……と思い、肩揉みを思いついたのだが、これは失敗だった。


(あんな醜態……信じられない)


 でも、体の疼きはまだ……って駄目!


(とにかく他のことに意識を向けて……)


 そうよ、大丈夫。大丈夫。


(そう言えば何しにここに来たんだっけ?)

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