第23話 大泥鼠(ビッグマッドマウス)
ピィィィン!
バシャッ!
俺の〔ホーリーライト〕を食らった泥鼠(マッドマウス)は即座に倒れるが、〔クリアウォーターボール〕を食らった泥鼠(マッドマウス)は倒れない。が、かなりのダメージは負ったらしく目に見えて動きが悪くなった。
ガキン!
俺達が狙わなかった泥鼠(マッドマウス)の攻撃は盾で受ける。魔法を打った直後に剣を振るうのは難しいが、このくらいなら朝飯前だ。
「ハッ!」
俺の盾に弾かれた泥鼠(マッドマウス)にレイアが剣をつき立てる! これで残りはたった一匹だ。
◆◆◆
泥鼠(マッドマウス)は逃げ出した。
◆◆◆
追い打ちすることも出来るが、あんまりメリットがないな。
「さっきよりも安定した戦いね」
「……いや、レイアの方に行った可能性もあるし、やっぱり俺が引きつけた方が安心かな」
まあ、レイアが攻撃を受けるより俺が受けたほうがダメージは少ないだろうし。
「ちょっと、私じゃ不安だってこと!?」
待て待て!
「いや、レイア──」
俺が何か言おうとしたその時……
“たすけて……”
またあの声だ。しかもだんだん声が弱っているような……
「また聞こえたの?」
俺が頷くと、レイアは顔を引き締めた。
「急がないと! 誰か分からないけど、こんな危険な場所にいて何かあったら!」
確かにレイアの言う通りだ。俺達は次の区画へと急いだ。
※
そんな感じで俺達は次々に『蒼風の草原』を進んだ。道中でニガハッカは十分な量が集まったのだが、声の主をほっておくわけにもいかないので進み続け……
(おいおい、確か次は最終区画じゃ……)
大分前にはなるが、俺もこのダンジョンには入ったことがあるので、構造は覚えているのだ。
【『蒼風の草原』 最終区画】
ついにここまで来てしまった。『蒼風の草原』の最終区画はボスの間に広いスペースがあるだけのシンプルな空間だ。
「……誰もいないわね」
レイアの言う通り誰もいない。じゃあ、俺が聞いていた声は一体何だったんだろう?
“たすけて……”
また聞こえた。けど、その方向は……
「フェイ、どちらから聞こえたの?」
「それが……」
俺が首を傾げながら指した先を見て、レイアが困惑した表情を浮かべる。
「ボスの間? まさか今誰か戦っているってこと……?」
確かにおかしい。この声、一体なんなのか。
「何かの罠かも。フェイをボスの間に入らせるのが目的とか」
でも、本当に助けが必要な人だったら……
「正直レイアの言う通り、罠である可能性もあると思う。でも、俺は確かめずには居られないよ。レイアはここで待っていてくれないか?」
馬鹿な選択だと思う。でも、ここで確認せずに帰ったら、リィナや他の患者が助かったとしても後悔するような気がするのだ。
(まあ、反対されるよな)
と思っていたのだが……
「フェイ、見直したわ!」
意外や意外、褒められた。
「弱き者を助けるのは強者の義務よね!」
レイアは機嫌よく肩を叩いてくるけど……いや、そんな大した考えじゃないぞ。ただ単に寝覚めが悪いことはしたくないだけだからな。
「勿論私も行くわ!」
「ありがとう、レイア」
邪魔どころか、レイアの存在はかなり心強い。ステータスは既にA級冒険者に近い上、スキルを使いこなしているからな。
「じゃあ行くよ。ここのボスは大泥鼠(ビッグマッドマウス)だけど、Lvが80以上あるはずだ。気をつけよう」
「まっかせない!」
キリッとしたレイアの顔は綺麗だな。性格はちょっとアレだけど……っていかん、いかん!
俺は〔超鑑定〕を準備しながらボスの間に足を踏み入れた!
◆◆◆
大泥鼠(ビッグマッドマウス)
Lv95
◆◆◆
Lv95だと!? 高すぎるだろ!
「レイア、気をつけろ! こいつLv90以上だ」
返事を聞く前に俺は〔励声叱咤〕を発動させる。俺達を見ていた奴の視線は今、俺だけに固定された。
「〔飛刃∶三連〕!」
俺に向かってくる大泥鼠(ビッグマッドマウス)にレイアが斬撃を飛ばす。この〔飛刃〕の攻撃は通常の斬撃よりもダメージが低いが、間合いの外の相手にも攻撃出来るのがメリットだ。
ザクッ! ザクッ! ザクッ!
レイアの攻撃は大泥鼠(ビッグマッドマウス)に浅くはない傷を負わせるが、ボスの動きは鈍らない。そして、そのまま俺が構えた盾めがけて……
ドカッ!
なっ! 蹴ってきただと!?
俺を蹴飛ばした勢いで宙を飛んだ大泥鼠(ビッグマッドマウス)は体を丸めて、さらにはあり得ないことに回転しながら俺めがけて突っ込んで来た!
◆◆◆
〔ハードホイール〕
◆◆◆
これはヤツのスキル攻撃か!
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