第22話 その声は……
【蒼風の草原 第一区画】
【蒼風の草原】はダンジョンとは呼ばれてはいるが、その名の通り草原だ。
(あった。ニガハッカ)
早速ニガハッカを見つけた。リィナの分だけならこれで足りるのだろうが、それではヘーゼルさんの療養所にいる患者達は助からない。今回、俺はある程度の量を確保しようと決めていた。
「来たわよ!」
採取の間、見張りをしてくれていたレイアの声で俺は剣と盾を取る。実は誰か仲間を連れていくというのがジーナさんの条件だったので、レイアに同行を頼んだのだ。
ちなみに俺がレイアを選んだのは俺の秘密を知っているからやりやすいことに加えてもう一つ理由が……
◆◆◆
角兎(ホーンラビット)
Lv70
突進攻撃に注意
◆◆◆
◆◆◆
角兎(ホーンラビット)
Lv70
突進攻撃に注意
◆◆◆
◆◆◆
角兎(ホーンラビット)
Lv70
突進攻撃に注意
◆◆◆
〔超鑑定〕の結果が出た!
(全部で三匹。〔超鑑定〕がわざわざ警告してくるくらいだし、要注意だな)
予定通りで行くか。
「〔励声叱咤〕!」
角兎(ホーンラビット)の注意が一斉に俺に集まる。三匹は角を俺に向け、走り始めた。
(突進攻撃か!)
〔励声叱咤〕は効果が発揮している間、DexとMndが上昇する効果があるし、大丈夫だろうけど……
ドンッ!
一匹目の角兎(ホーンラビット)の突進攻撃には何の痛みも感じない。だが、何だ? 妙な違和感が……
ドンドン!
そこに二匹目と三匹目が続くと、クッ、意識が……
(スタンか! クソっ、ダメージはほとんどないが……)
注意っていうのはこういうことか! レベル差があるせいで〔超鑑定〕で分かる情報が限られてしまうな。
「〔六連刃〕!」
俺の隙をカバーするようにレイアのスキルが三匹の角兎(ホーンラビット)を切り裂く。ちなみに同じ武術を学んでいるため、こんなふうに連携がしやすいというのがレイアを選んだもう一つの理由だ。
ザクザク! ザクザク! ザクザク!
ソードマスターは連続攻撃が得意なクラス。今は〔六連刃〕で三匹に二回ずつ斬りつけたが、一体に六回斬りつけることも出来る。
ダダダッ!
角兎(ホーンラビット)が飛び退いた。手傷を負ったことに驚いたのと、次の突進攻撃に向けて距離が取りたかったんだろうけど……
(むしろ好都合だ!)
遠距離戦の方が俺達には有利だからな!
「〔ホーリーライト〕!」
「〔クリアウォーターボール〕!」
俺の〔ホーリーライト〕が一匹の角兎(ホーンラビット)を倒す。レイアの〔クリアウォーターボール〕を食らった角兎(ホーンラビット)は倒れなかったが、もう瀕死のようで、向かって来たのは一匹だけだ。
(一匹なら!)
さっきは三匹の攻撃を受けなきゃいけないから使えなかったが、今ならこのスキルを使える!
「〔デュアシールドアタック〕!」
カウンター気味に放った〔デュアシールドアタック〕が角兎(ホーンラビット)に止めを刺す。俺が残りの角兎(ホーンラビット)に目を向けた時には既にレイアが二発目の〔クリアウォーターボール〕を放っていた。
バシュッ!
最後の角兎(ホーンラビット)も倒れ、ドロップと化した。
(一応ドロップも確認しておくか)
◆◆◆
短い角×2
柔らかな毛皮×1
◆◆◆
やはりボスのレベルが上がる前のドロップと同じだ。恐ろしく割に合わないダンジョンになったな。
「お疲れ様、レイア。助かったよ」
「フェイこそ、やるじゃない!」
そうか? スタンしていたけど……
「あの角兎(ホーンラビット)の突進攻撃を三回も受けたのに平然としているなんて」
そ、そうかな?
だけど、レイアみたいな美人に褒められると悪い気はしないな。
“たすけて……”
そんな時、不意にどこからか声が聞こえた。これは一体……
「どうしたの?」
どうやらレイアには聞こえないらしい。
「“たすけて”という声が聞こえた。誰か迷い込んだのかも知れない。助けないと」
「そうね」
俺の言葉にレイアは笑顔を見せる。その綺麗な笑顔に見惚れそうになるのを我慢しながら、俺は先に進んだ。
【蒼風の草原 第ニ区画】
“たすけて……”
またあの声だ。ニガハッカを採取しつつ、声の方へ向かうと魔物が出た。
◆◆◆
泥鼠(マッドマウス)
Lv72
前歯の攻撃に注意
◆◆◆
◆◆◆
泥鼠(マッドマウス)
Lv72
前歯の攻撃に注意
◆◆◆
◆◆◆
泥鼠(マッドマウス)
Lv72
前歯の攻撃に注意
◆◆◆
また、“注意”か。くそっ、前歯にどんな秘密があるんだよ……と言いたくなるが、それが分かるだけまだマシだよな。反省。
「レイア、今度は近づく前に倒そう! 〔ホーリーライト〕!」
「分かった! 〔クリアウォーターボール〕!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます