第16話 レベルアップ
「
「姿はよく見えんかった。マントのようなボロを纏っておってな」
「そうですか……」
その時、突然地響きが起こった。それが止んだ時、師匠は急に身構えた。
「一匹近くにいるぞ、フェイ!」
「はいっ!」
と答えながらも俺は既に魔物の方を向いている。見た目は青蝙蝠(ブルーバット)だが、発している威圧感は全くの別物だ。
(様子がおかしいな……〔超鑑定〕を使うか)
◆◆◆
青蝙蝠(ブルーバット)
Lv73
超音波による遠距離攻撃や牙による毒攻
撃に注意
◆◆◆
げ、何だよ、このレベル!
「───ッ!」
青蝙蝠(ブルーバット)が俺に向かって声にならない叫び声を出すと、ビリビリと何かを感じる……これが超音波攻撃か。
(後はキバによる毒攻撃……だがっ!)
俺は飛んでくる青蝙蝠(ブルーバット)に剣を走らせ、難なく両断した。確かに速いが、爆発的に上がったパラメーターがあれば倒すのは簡単だ。
「フェイ、一体何があったんじゃ?」
今までとは違う俺の動きを見た師匠がワクワクした顔で近寄ってくる。しまった、また師匠の病気がでてきてしまったか。
「後でゆっくり話しますから。今は何が起こっているのかを解明するのが先です」
「ムムム……確かにな」
師匠が冷静な判断をしたと思ったら大間違いだ。ただ単に俺の変化への興味よりダンジョンへの興味の方が大きいだけだ。
「それより一体何が起こったんでしょうか、師匠?」
「見たところ……ボスがレベルアップした時に起こる現象に似てるな」
「ボスのレベルアップ……どういうこと?」
レイアが理解できないといった顔で首を傾げる。まあ俺もさほど分かってるわけじゃないけど。
「ダンジョンボスも冒険者を倒すと僅かだが経験値を得る。それが繰り返されると、ダンジョンボスのレベルが上がることがある」
なるほど。まあ、ダンジョンボスも生き物だ。そう言うこともあるだろうな。だとすると……
「そうなるとダンジョンから生まれる魔物もレベルが上がるということですか?」
「正確には生まれてきた時のレベル、初期レベルとでも言うべきものが上がる」
なるほど。上がったレベルは大幅に違うが、起こった現象は似ている。
(普通、青蝙蝠(ブルーバット)はLv60くらいになると別の魔物に進化するけど、生まれた時にそのLvなら話は別だな)
まあ、強い魔物が出るダンジョンは価値の高いアイテムが出る傾向があるから悪いことばかりでも──
「だが、ダンジョンボスがレベルアップしてもドロップしたり、採掘出来るアイテムに変わりはないんじゃ」
「えっ!」「!?」
つまり、『朝霧の鉱山』はあまり価値のあるアイテムが出ない割に、リーマスのトップクラスの冒険者でもクリア出来るかどうかという難所になってしまったことになる。
「ひょっとしてこれが迷宮改変(コラップス)?」
レイアがそう問うが、師匠は首を振った。
「いや、迷宮の構造は変わっておらん。これは迷宮改変(コラップス)ではない」
これはヤバい……
ダンジョンは危険な場所ではあるが、同時に資源でもある。何故ならドロップや採掘できる鉱石、薬草などは近くの街で加工され、よその街との交易で売買される商品となるのだ。
(ダンジョンの難易度があがれば、当然、ドロップやダンジョンで採れる鉱石が入って来にくくなる)
そうなれば、リーマスの経済に大きな打撃となるのは火を見るより明らかだ。そして、それはリーマスで暮らす俺とリィナの生活にも大きな影響を与えるだろう。
「何とか元のダンジョンへ戻す方法はないのですか?」
「なくはないが……」
師匠がこんなふうに言い淀むのは珍しいな。基本無茶なことでも平気で口にしたり、やろうとしたりする人なんだけど……
「もし、今の状態がダンジョンボスのレベルアップと同じような現象なら、ダンジョンボスを倒せばダンジョンは元に戻る」
げ……
(さっきの青蝙蝠(ブルーバット)のLvを考えると、ダンジョンボスの大青蝙蝠(ビッグブルーバット)レベルは90以上かもしれない)
単純に考えて2倍近いLv差がある相手になる。戦うなんて論外だ。
「無論、リーマスに帰ってゆっくり対策を練るべきことだ。まずは外へ出ることを考えよう」
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