第15話 異変
それからいくつか採掘ポイントを周りながら魔物と交戦したが、俺が手を出す場面は全くと言っていいほどなかった。
(でも……やっぱりおかしいな)
レイアの戦いを見ているうちに、俺の最初の違和感が確信に変わっていった。
「やっぱりおかしいな、このダンジョン」
「……確かに」
俺がそう言うと、レイアも頷いた。
「ほとんどの魔物が何かにおびえてる。魔物なのに私を──侵入者を襲おうという意思が感じられないわ」
ダンジョンで生まれた魔物は、例外なく侵入者に敵意を持つ。彼らにとってダンジョンは住処であり、縄張り。ダンジョンに入る者は誰であろうと敵なのだ。
「そうだな……それに遭遇する組み合わせも変だ。普段群れない魔物がまとまっていたり、仲の悪い種類の魔物が一緒にいたりする」
例えば、さっきは子鬼(ゴブリン)と鬼(オーガ)に一度に出くわしたのだが、コイツらは普段とても仲が悪い。顔を合わせれば即殺し合いをするレベルなのだ。
(何か嫌な予感がする……)
レイアの戦い方が進化していくのが面白くて、途中から魔物探しがメインみたいな感じになっていたけど、早く師匠を探した方が良いかも知れない。
「まだ探してない採掘ポイントはさほど多くない。少し急ごう」
「そうね、分かったわ!」
俺はレイアがついてこられるレベルの速度で走り出した。
※
その後、俺達は採掘ポイントを探しに探したが、師匠は見つからず、遂にボスの間についてしまった。
「師匠は……どこ……に……」
かなりペースを合わせたつもりだったが、レイアは息を弾ませている。Lvは上がったが、パラメーターに差があるもんな。
(!)
レイアに水を渡そうとしたその時、暗がりから誰かがこちらに歩いてくるのが見えた。嘘だろ、今の今まで気が付かなかったぞ。
「フェイじゃないか、何でこんなころに?」
「ジェイド師匠、それはこっちのセリフですよ!」
暗がりから現れたのは探していたジェイド師匠だった。まあ、それなら近寄られるまで気配に気づかなかったことも頷ける。
「しかもレイアまで……すまん、心配をかけてしまったか」
「お爺ちゃん、一体何があったのよ」
レイアが問うと、師匠はちょっと得意げな顔になる。げ……師匠がこういう顔をする時って、大抵ロクででもないことが起こるんだよな……
「実は
「
首を傾げるレイアとは対照的に俺は顔を引きつらせる。思ってたよりも、ヤバいかもしれない。
(
普通、魔物はダンジョンで生まれ、ダンジョンで死ぬ。だが、ダンジョンで魔物が増えすぎると、居場所がなくなり、魔物がダンジョンの外へと溢れ出す。これをスタンピードと言う。
(で、ダンジョンの外に出た魔物のうち、再びダンジョンに帰ろうとする魔物を
(勿論、そんなことは滅多にないことらしいけど)
ちなみにボスが交代するとダンジョンの様子が一変する迷宮改変(コラップス)という現象が起こる。隣国のガイザルック帝国はこれを利用してダンジョンを利用しやすいものへと改良しようとしたらしいが、そんな都合の良いものではないらしい。
「って、師匠! 早く避難しないと迷宮改変(コラップス)が」
「いや、儂は迷宮改変(コラップス)が見たくてここにいるんじゃ」
「は?」
「見たことないからのう、迷宮改変(コラップス)は」
はあ……また始まった。ジェイド師匠は物好きな性格でよくトラブルに首を突っ込むのだ。
(でも、今回ばかりは駄目だ。何とか説得しないと!)
ダンジョンの構造が変わるということは何が起こるか分からないのだ。床が突然なくなるかもしれないし、突然壁が現れてぺちゃんこにされてしまう可能性だってある。
「しかし、妙じゃのう……未だに迷宮改変(コラップス)が起こる気配がない。
「三日!?」
三日も戦闘が続くはずがない。普通なら
「
レイアの言った通りなら何も起こらなくても不思議じゃない。でも……
「ここのダンジョンボスは大青蝙蝠(ビッグブルーバット)じゃろ? あ奴は精々Eランク。チラッと見た
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