第14話 アイテムスロー

「レイア、これは?」


 首を傾げる俺にレイアは決意に満ちた声で答えた。


「私の決意よ」


「決意……」


 一体何の決意なんだ?


 冒険者にとって、ステータスを公開すると言うのは信頼の証だ。それを一方的に行うとなると……


「だけど、誤解しないで! 別に何でも言うことを聞くとか、心身を捧げたとかそう言うのじゃないんだから!」


 何いってんの!?


「まあ、気軽に使って見てよ。望んだクラスが出るとも限らないしさ」


「じゃあ、使うわよ」


 ピロピロリーン!


 いつもの効果音の後、ステータスウインドウが開いた。



◆◆◆


 レイアが称号「シスター」を獲得しました


◆◆◆



 あ……駄目か

 

「じゃあ、もう一回」


 俺は肩を落とすレイアに託宣の聖印を渡した。


「待って、それは……」


「まだまだあるし、気にしないで」


「でも……」


 遠慮するレイアを制して五〜六回試したが、前衛向きのクラスは出なかった。


 だが、レイアには落ち込んだ様子はない。ステータス画面を見ながら新たな戦い方を模索している。


「フェイ、この“スロット”と言うのは?」

「ああ、それは……」


 説明しているうちに俺はふと思った。


(そう言えば、新しいスキルを覚えていたな)


 出発前、ステータスを確認した時に気づいたのだが、クラスを複数持ってレベルアップするとそれぞれのクラスでスキルを覚えるらしいのだ。


(アイテム士として新しく覚えたのが〔アイテムスロー〕と〔アイテム複数使用〕、アイテムマスターとして覚えたのが〔アイテムボックス+〕と〔アイテム合成〕だったな)


 それぞれのスキルの説明分はこれだ。



◆◆◆


〔アイテムスロー〕

  アイテムを仲間や敵に投げつけて効果を

 発揮させることが出来る。対象との距離と

 効果が反比例する。


◆◆◆


◆◆◆


〔アイテム複数使用〕

  一度にアイテムを複数回使用するスキ

 ル。ただし、アイテム一つ一つの効果は落ちるので、二個同時に使用しても効果は1.5倍程度になる。


◆◆◆


◆◆◆


〔アイテムボックス+〕

 〔アイテムボックス〕よりも収納できるア

 イテムの種類と数がかなり増える。


◆◆◆


◆◆◆


〔アイテム合成〕

  二種類のアイテムを合成し、新たなアイ

 テムを作る。結果は運次第。


◆◆◆



 改めて見てみて、俺はあることに気づいた。


(これならもしかして……)


 ちょっと乱暴な気もするが、上手く行ったら万々歳だ。


「レイア、ちょっと後ろを向いてくれるかな?」

「……変なことしないでよ」


 レイアは作業を中断した。そして、俺はレイアから距離を取る。


 俺はクラスをアイテム士からアイテムマスターに変えて、スロットには〔アイテムスロー〕を入れておく。 


「ちょっと考えがあるからかわさないでね」

「……分かったわ」


 とはいえ、気づかれないように多少は距離を取らないとな。上手く行ってくれよ……


「〔アイテムスロー〕!」


 託宣の聖印がレイアの後頭部に激突する。ちょっと乱暴だが……



◆◆◆


 レイアが称号「ソードマスター」を獲得しました


◆◆◆



 やった! 前衛向きのクラスだ。


(しかも上級のクラス! やっぱり〔アイテムスロー〕は俺の〔アイテム効果超強化〕の効果が発揮されるんだな!)


 予想通りの結果に俺は小躍りしたが、レイアは驚きのあまり声も出ないようだ。


「早速色々試してみよう!」

「そ、そうね。ありがとう、フェイ!」


 ぎこちない仕草で礼を言うレイアを急き立てるように俺は採掘場に向かう。勿論、魔物がいそうな場所は必ずチェックする。


(いたっ!)


 子鬼(ゴブリン)が三匹。〔ホーリーライト〕で一発の相手だが、今回はそれはしない。


「レイア、行くよ」

「分かったわ!」


 今のレイアのステータスなら子鬼(ゴブリン)相手に遅れを取ることはないだろうから、正面からぶつかる。まあ、いざとなればこのスキルがある。



◆◆◆


〔デュアカバーガード〕

  仲間の近くに一瞬で移動し、攻撃を代わりに受けることが出来る。使用時にDexとMndが二倍になる。


◆◆◆

 


 パラディンロードは仲間を守る手段が多くて便利だなあ。


「はっ!」


 子鬼(ゴブリン)が振りかぶる手斧をかわし、レイアは剣を魔物の胸につき立てる! 流石だ!


「ギギギッ!」


 Lv差があるためか、子鬼(ゴブリン)は俺の方には近寄ってこない。まあ、ちょうどいいかな。


 ザシュ! ブスッ! ザシュッ!


 レイアはほとんどスキルを使わずに子鬼(ゴブリン)達を倒してしまった。

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