第13話 ステータス
<フェイ視点>
「レイアは冒険者だったんだ?」
乗り合い馬車の中で暇だった俺達はお互いについて情報交換をしていた。
「……直ぐに活動は休止したからLvは低いわよ」
レイアの手には真新しい冒険者プレートが握られている。
「何かあったの?」
「……このまま冒険者をしても強くなれないと思ったのよ」
「?」
どういうことだ?
「……私は強くならないといけなかったから」
レイアは絞り出すようにそう言った。おそらく安易に聞けないような特別な理由があるんだろうな。
「でも相当強いんじゃない?」
「まだまだよ。半年でやっと中伝なんだから」
半年で中伝!? めちゃくちゃ早いぞ!
「しかもダンジョンには入ったことがないから、フェイに力を借りたかったのよ」
「なるほど」
そんなことを話していると、目的地である『朝霧の鉱山』に着いた。
「俺が敵を引きつけるから、レイアは行けそうだと思ったら攻撃してくれ。ただし、無理は禁物で」
「分かったわ!」
俺達はお互いの動きについて確認してから『朝霧の鉱山』に入った。
※
【朝霧の鉱山1F】
「鉱石を採るなら……まずはあっちかな」
師匠がどんな鉱石を狙っていたのかは分からないから、採掘が出来そうな場所を片っ端から探していくか。
「キキキ―!」
青蝙蝠(ブルーバット)か。やけに数が多いな! だが、まだ距離があるから……
「〔ホーリーライト〕!」
俺がスキルを放つのと同時にレイナもスキルを発動させた。
「〔ウォーターボール〕!」
ん? 攻撃魔法!? しかも水属性って……
(俺、レイアが勝手に前衛向きのクラスだと思いこんでいて確認してなかったな)
水属性の魔法は攻撃魔法よりも補助魔法が得意なクラスが覚える魔法だ。
(ってことはウイッチか、セージ、道士あたりか)
ピィィィン!
〔ホーリーライト〕が青蝙蝠(ブルーバット)の群れに炸裂し、魔物を殲滅した。
◆◆◆
レイアのLvが上がりました!
◆◆◆
◆◆◆
レイアのLvが上がりました!
◆◆◆
◆◆◆
レイアのLvが上がりました!
◆◆◆
パーティを組んでいるから俺にも仲間(レイア)がレベルアップした旨のメッセージが届く。青蝙蝠(ブルーバット)は決して経験値が高い魔物じゃないけど、とにかく数が多かったからな。
「い、今の魔法は一体……」
レイアが驚くのも無理はない。俺の装備は明らかに前衛向きなのに攻撃魔法を使ったんだからな。
「説明したいところだけど、まずは今の状況に集中だ」
「……確かに。でも、帰ったらちゃんと説明してよね」
不服そうな顔をしながらもレイアは俺の指示に従った。
「さっきの青蝙蝠(ブルーバット)は普通じゃなかった。アイツらがあんなに群れになるなんておかしい。さっき一撃で群れを倒せたのは奴らがおかしな行動を取っていたからだ」
〔ホーリーライト〕は基本的に単体を対象とする魔法だが、光を遮るものが無ければ対象の周囲にも影響を与える。だが、青蝙蝠(ブルーバット)は今の俺にとっては雑魚とはいえ、群れを攻撃魔法一発で倒せたのは奴らが極端に密集していたからだ。
「何か起こっているのかも知れないってこと? 気をつけないと……」
「そうだね。あと、レイアのクラスを教えてくれないかな? まさか後衛向きのクラスだとはおもってなくて……」
そう言った瞬間、レイアの表情が曇る。だが、しばらくするとレイアは小声で俺の問いに答えた。
「……私のクラスはアルケミスト」
「アルケミスト!?」
「アルケミスト」はアイテムを作ることを得意にしている上級クラス。普通はLv50以上にならないとつけないクラスだが、戦闘向きのクラスじゃないな。
(それで師匠に師事していたのか……)
強くなりたいけど、クラスは戦闘向きじゃない。だから師匠に師事したってことは、要は俺と同じってことか。
「攻撃魔法や補助魔法を使った戦いが有効だと言うのは分かるわ。でも私は……」
強くなりたい理由はよく分からないが、もし
俺達が住む街、リーマスでは住民全員が共有しているある目標がある。それは地下に封印されているある悪魔の打倒だ。七年前にある冒険者がその身を投げ打って作り上げた封印が解ける前に悪魔を倒せる力を身につけるのが住民の目標なのだ。
(まあ、別に使い途がある訳でもないし、いいか)
俺は〔アイテムボックス〕から託宣の聖印を取り出した。
「何?」
「これは託宣の聖印といって、クラスチェンジ出来るアイテムなんだ」
「クラスチェンジって、冗談でしょ!」
まあ、無理はない反応だろうな
「今は時間がないから説明出来ないけど、俺はいくつかこれを持っているんだ。で、良かったら」
「嘘! 何でこんな貴重なものを!?」
うーん、何と説明したものかな
「俺も君と似てるんだ。強くなりなかったけど、戦闘向きのクラスじゃなくて……でも、たまたま託宣の聖印を手に入れたから強くなれなんだ。だから……」
こんな言葉で伝わるのかと思ったが、レイアはしっかりと頷いた。
「……ありがとう」
そう言うと、レイアは託宣の聖印を使う前にステータスを操作した。
(ん? 一体……)
◆◆◆
レイアのステータスが公開されました。
以後、いつでも閲覧可能です。
◆◆◆
どういうこと?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます