第11話 皆伝
その後、俺はジーナさんに色々教えてもらってから冒険者ギルドを後にした。
(ダンジョンコアの用途自体はジーナさんも良くわからない……か)
ちなみにダンジョンボスであるデュハランのドロップは特殊な装備──例えば状態異常を付与する武器や逆に状態異常を防ぐ防具──を作れるかも知れないとのことだった。
(次は師匠か……)
俺は師匠の家へと向かった。ちなみに、ジェイド師匠は俺に武器の扱いを教えてくれた人だ。クラスの関係で攻撃スキルが覚えられなかった俺はせめて剣術を学ぼうと思って師匠に教えを請うたのだ。
「お久しぶりです、ジェイド師匠」
師匠の家は住居兼武器屋となっている。何故なら師匠は武術を極めた後、自分に相応しい武具を作るために武具制作の道に入った人なのだ。
(変わった魔族だよな……)
ちなみに師匠が魔族というのは街の人には秘密だ。
「どちら様でしょうか」
奥から出てきたのは見たことのない女の子。黒髪を肩口まで伸ばし、横髪を赤い紙紐でくくった美少女だ。
(!!! すっごい美人だな)
自慢ではないがリィナやジーナさんのおかげで(?)美人なれしているはずの俺が一瞬見惚れてしまうなんて……
(リィナは可愛い系だが、この人は綺麗系って感じだな)
リィナと人気を二分しそうな美人がリーマスにいたとは
(しかも、この人相当出来るな)
隙のない動きから武術を修めた人だと一目で分かる。新しい弟子かな?
「師は今、遠方に出かけていて不在です。伝言があれば承りますが」
そうか。師匠はいないのか。まあ、約束していたわけじゃないしな。
「いえ、急ぎではないので出直します。失礼しました」
俺は持参した手土産だけ渡して帰ろうとしたのだが……
「待って! もしかして、あなたはお爺ちゃんの話に出て来たフェイって人!?」
あれ、急に口調が……
それよりお爺ちゃんって言ったよな。てことは……
「あ、はい。俺はフェイですが」
「やっぱり…」
黒髪の美少女はにやりと微笑んだ。
「フェイのことは聞いたことがあるわ。類まれなセンスで、お爺ちゃんが唯一免許皆伝だと認めたとか」
「いや、その……」
それでも『白銀の翼』では戦闘の役には全く立たなかったけどね……
「お願いがあるの! 話だけでも聞いてくれない?」
いきなりだな……でもまあ、妹弟子のようなものだしな
(それに……よく分からないけど何か必死な感じもあるのが気になるな)
まあ、話くらい聞いてあげてもいいか。
「とりあえず話だけなら聞くよ、えっと……」
「あ、私はレイア。立ち話も何だし、こっちへ」
俺は勧められるままに師匠の家へ上がった。
※
「ただいま」
「おかえり、お兄ちゃん」
レイアの話を聞いた後、家に帰るとリィナは既に家に戻っていた。
「今、昼ご飯出来るからね!」
「ありがとう、リィナ」
昼食はトマトパスタだった。今まではトマトや葉物野菜が少し入ったサンドイッチとか簡素──でも美味しい──なものが多かったけど、【黄昏の迷宮】から戻ってから食事は凄まじくグレードアップしている。
「っ! 旨い!」
程良い弾力を持ったパスタはツルツルっと喉に入ってくる! 更にまた、パスタに良く絡んだトマトソースが絶品で……
(あ、ベーコンまで入ってる!)
昼食から肉が食べられるなんて……しかもトマトの酸味とベーコンの旨味が互いに相性抜群だ。
(サッパリしたトマトソースにベーコンが重厚な満足感をプラスしてくれる……最高だな!)
料理上手な妹を持って俺は幸せだ!
「リィナは本当に料理が上手いな……いっそレストランでも開けばいいのに」
「もう……お兄ちゃんったらそんなこと言っても何も出ないからね!」
そう言いながらもリィナはデザートに葡萄を出してくれた。どうやら満更でもないらしい。
「それに私はお兄ちゃんに美味しいものを食べてもらいたいだけなの」
つまり、俺以外に料理を作る気はないと……
(贅沢な話だなあ)
ん? だけど、結婚したらどうする気なんだ?
「そう言えばお兄ちゃん、ジーナさんやジェイドさをは元気だった?」
「ジーナさんは元気だったよ。あ、ダンジョンコアのことは秘密にしておいた方がいいって言われたから……」
「大丈夫! ジーナさんからギルドへの報告内容はきいてるから」
ん? そうなのか?
この二人は本当にどうやって連絡を取り合っているのか……
「で、ジェイド師匠には会えなかった」
「そうなんだ。採掘に行ったのかな?」
師匠は作るものが独特なため、材料の調達から自分ですることも多いのだ。
「みたいだ。でも中々帰ってこないから留守番をしている弟子が一緒に様子を見に行ってくれないかって」
「え、危険じゃないの?」
「【朝霧の鉱山】だよ。Fランクの時に散々潜ったダンジョンさ」
【朝霧の鉱山】は初心者向けのダンジョンでLv10〜20程度の冒険者が組めば攻略可能という危険度の低い場所だ。
「師匠が家を出てから一週間が経つらしいんだ。何もないとは思うけど……」
「……分かった。本当はまだ休んで欲しいんだけど、仕方ないよね」
リィナはため息をついた。
「分かった。明日お弟子さんの分もお弁当作るから持って行って。晩御飯までには帰れるよね?」
「ああ、大丈夫」
【朝霧の鉱山】は
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