第7話 ソロクリア

「〔グランドクロス〕!」


 二撃共綺麗に入り、完成した十字がデュハランに聖属性ダメージを与える。デュハランは苦痛にのたうちながら消えていった。



◆◆◆


 ダンジョンボスを倒しました


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 レベルが上がりました


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 レベルが上がりました


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 レベルが上がりました


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 レベルが上がりました


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 レベルが上がりました


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 レベルが上がりました


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 レベルが上がりました


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 レベルが上がりました


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【黄昏の迷宮】をクリアしました


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◆◆◆


 ソロクリア報酬としてダンジョンコアを入

 手しました。


◆◆◆



 おおっ……俺は本当にクリア出来たんだ。


(黄昏の迷宮を俺が……しかもソロで……)


 つい数日までパーティのお荷物だったのに


(俺はもっと強くなれる。ひょっとしたら誰よりも……)


 よし、決めた。最強を目指そう。これは冒険者になる前から抱いていた夢だ。自分があまりにも弱いから今までは考えることさえ出来なかった夢だけど。



◆◆◆


 黄昏の迷宮を出ますか?


  →YES    No


◆◆◆



 足元に青く光る魔法陣が現れた。これはダンジョンをクリアすると現れる帰還の魔法陣。その名の通り、地上に戻ることが出来る魔法陣だ。

 

(今は感傷に浸っている場合じゃないな)


 俺はデュハランのドロップを回収し、地上へ戻った。





「え─────!」


 朝一番、誰もいない冒険者ギルドに受付孃のジーナさんさんの声が響き渡る。普段は冷静で、冒険者からはクールビューティーの名を轟かせている彼女だけにたまにこんな顔を見せると可愛く思える。


「フ、フェイさん? 本当に本物?」


 本物ってどういうことだ?


(あ、そうか! 普通はあの穴から落ちた時点で死ぬな)


 まあ、助かったとしても最下層を一人で生き残るの

は難しいだろうな。


「アバロンさんからは“足を滑らせて最下層につながる穴に落ちた”って!」


「落ちましたけど、ダンジョンボスを倒して帰って来ました」


「はあぁぁぁ???」


 ジーナさんさんは再び驚いた顔をする。うん、まあ、そうだよな。それにしても可愛い。何とか網膜に焼き付けたい……


「ク、クリアって……ソロであの【黄昏の迷宮】を? C〜B級冒険者がパーティを組まないとクリア出来ないだろうって言われているダンジョンですよ、あそこ」


 ちなみに俺はE級でランクとしては下から二番目。アバロン達はC級だ。


「証拠を出した方がいいですか?」


「ち、違いますよ……疑ってるわけじゃないんですよ。大体ダンジョンボスを倒したならしばらく【黄昏の迷宮】が休眠するんですから、ギルドとしてはそれで確認できます……っていうか、フェイが嘘言うとか思ってないから!」


 俺は興奮のあまりついに最後にはいつもの砕けた口調になってしまったジーナさん──俺は密かにデレモードと呼んでいる──を宥めた。


「フェイ、生きててくれて良かった」


「心配してくれたんだ」


「当たり前でしょ! リィナと二人で絶対生きて戻ってくるってお互い励まして……他にも心配してた人が大勢いるんだからね!」


「ありがとう、ジーナさん」


 そう言いながらも、俺はジーナさんの頭をポンポンと叩いた。ジーナさんは俺より二つか三つ年上。さらにしっかりした性格ということもあって普段は冷静だが、突発的なアクシデントには意外に弱い。


「そ、そんなくらいじゃ許してあげないから」

 

「分かった。じゃあ、何か食べに行こう。勿論奢るから」


「……! 分かった。それなら……」


 だが、俺はそんなジーナさんとは結構付き合いが長いのでこの辺はお手の物だ。


(ふぅ~。やっと落ち着いたか。こんなところが他の冒険者にバレなきゃいいけど)


 受付孃はギルドの顔だから毅然とした態度が必要だ。それはともかく、俺はジーナさんがそれなりに落ち着いた頃合いを見計らって次の用事を頼んだ。


「あ、ドロップの買い取りもお願いします」


 俺はリィナに生活費を持って帰らなければいけないのだ。


「あ、うん、そだね。リィナが待ってるもんね」


 ジーナさんが指で髪を漉きながら俺が出していくドロップを確認していく……が、次第にその動きは鈍っていった。


「ちょっ……これは何なの? レア物ばかりじゃない!」


「その辺をウロウロしてた奴らなんだけど」


「……まあ、【黄昏の迷宮】の最下層ならそうでしょうけど。とにかく、後で何があったのか説明してね」


 そう言うと、ジーナさんは俺に代金を渡してくれた。その金額は……


「き、金貨三枚!?」


「そりゃそうよ。どれも下〜中層ではボスになっていてもおかしくない魔物ばかりなんだから。それにこの量! まさか二〜三日魔物を狩り続けていたとでもいうの?」


「あ、うん。レベリングのためにね。でも、強くなれるのが楽しくて、ちょっとやりすぎたかな?」


「“ちょっと”では済まないけどね」


 ジーナさんは俺ののめり込み癖をよく知っている。だから、理解してはいるようだが、納得はしていない。 


(まあ、E級冒険者が最下層でレベリングって言うのが既におかしいよな)


 だが、冒険者のステータスやスキルに関する情報を公の場で問いただすのはタブーだ。だから、ジーナさんも何故俺が最下層の魔物を倒せたのかは聞いてこないのだ。


「ほんと、後でしっかり説明してよね」


 俺はそう念押しされながら冒険者ギルドを後にした。

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