第5話 バトルとドロップ

「〔グランドクロス〕!」


 光の尾を引きながら俺の剣が骸骨魔剣士(スケルトンエース)の体に十字を描く! 


 弱点である聖属性であることに加え、〔アンデッド特効〕〔聖属性攻撃超強化〕〔近接攻撃超強化〕の三つのスキルで強化された攻撃に骸骨魔剣士(スケルトンエース)は断末魔を上げることなく消滅した。


(次は……)


 俺は骸骨魔剣士(スケルトンエース)のドロップには目もくれずに後退した。最後の骸骨魔剣士(スケルトンエース)──こいつはCと呼ぶことにする──と包帯木乃伊(マミー)がすぐそこに迫っているはずだからだ。


 ガキン!


 繰り出された突きを反射的に盾で受ける。その突きを放ったのは骸骨魔剣士(スケルトンエース)Cではなく、骸骨魔剣士(スケルトンエース)Aだった。


(あの手応えでスタンしていないのか!)


 有り得ない!


 だが、次の瞬間、俺は別の可能性に気がついた。


(まさか、状態異常を無効化するのか!)


 だが、俺に動揺はない。何故ならこの程度のピンチは今まで幾らでもあったからだ。だから、盾で防御したせいで動きが止まった俺に骸骨魔剣士(スケルトンエース)Cが剣を振りかざして来たときには………


 シュッ!


 俺は急に右に回転! すると、その急な動きに対応出来なかった骸骨魔剣士(スケルトンエース)Aは体勢を崩す。さらにはその勢いのまま骸骨魔剣士(スケルトンエース)Cに剣を振りかぶった!


 スパッ!


 体勢を崩された上に一撃を受けた骸骨魔剣士(スケルトンエース)はよろめき、俺に無防備な姿を晒す。今だっ!


「トドメだっ!」


 俺の渾身の力を込めた袈裟斬りを受けた骸骨魔剣士(スケルトンエース)Cの目から光が失われ、一瞬で崩れていく。よし、これで一対一に──


(いや、違うっ!)


 思い違いに気づいた時には毒屍人(ポイズンゾンビ)が後ろから殴りかかってきた!


 ガスガスッ!


 ぐがっ! 油断していた俺は地面にたおれ──いや、それじゃ隙だらけだ。そのまま転がって少し距離をとった。


 立ち上がる前に骸骨魔剣士(スケルトンエース)が剣を振り下ろしてきたが、何とか盾で受け流す。


「〔ホーリーライト〕!」


 聖なる白い光の奔流が骸骨魔剣士(スケルトンエース)に襲いかかる。魔物が苦悶の声を上げる間に俺は体勢を立て直した。


(ラッキー! 〔ホーリーライト〕の余波で毒屍人(ポイズンゾンビ)も動きが止まってる!)


 俺は隙だらけの骸骨魔剣士(スケルトンエース)に剣を振り下ろそうとする。が……



◆◆◆


 毒によるダメージを受けました。


◆◆◆



 まるで心臓を鷲掴みにされるような痛みが俺を襲う。が、俺は何とか剣を振り切り、骸骨魔剣士(スケルトンエース)に止めを指した。


「治療はアイツの後だな……」


 俺はようやく立ち上がった毒屍人(ポイズンゾンビ)に〔ターンアンデッドクロス〕を放って戦闘を終わらせた後、〔ピュアフレッシュ〕を発動した。



◆◆◆


 解毒に成功しました


◆◆◆



 やれやれ、ギリギリだったな。


(でも、何かこういうのは冒険者の醍醐味というか、生きている実感が湧くというか……)


 多分、こういうのは危ない発想なんだろうな。リィナが怒る顔が自然と脳裏を過ぎる。


(必ず帰るからな、リィナ)


 強くなりたいから冒険者をすると言っても、妹を泣かせるつもりはない。血のつながりはない妹だが、たった一人の家族なのだから。


(さて、ドロップを回収っと)


 何が出たかな………



◆◆◆


 骸骨魔剣の欠片×3

 アンデッドソウル×1

 黄色い巻き爪×1

 触りたくないくらい毒々しい液体×1new!


◆◆◆  



 触りたくないくらい毒々しい液体って……


 でもまあ、きっといい素材なんだろう。普通ならこれをパーティで分けるのだが、俺はソロなので全部独り占めだ。


 ちなみにいまアイテムボックスに入ってるドロップは……



◆◆◆


 魔剣の欠片×8

 漆黒の骨片×3

 邪な頭蓋×2

 黄色い巻き爪×5

 汚れた包帯×3

 触りたくないくらい毒々しい液体×1

 アンデッドソウル×2


◆◆◆



 見たことがない素材ばかりだから価値は分からないが、当分の生活に困らないくらいはあるだろう。


(リィナがビックリするぞ!)


 尤もいつも“生活費なんてどうにでもなるんだから無理はしないで!”と怒られているので、最下層に行ったなんて言ったらお説教を食らう可能性の方が高い。


(そろそれ今日は終わりにするか)


 ここは薄暗いので時間が分かりづらいが、外はそろそろ日も落ちるころだろう。キャンプに適した場所も見つけてあるし、今日はもう休むことにしよう。


(三〜四日はレベル上げに費やして、それから中央部分に向かおう)


 俺はもと来た道を戻り始めた。

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