第4話 それぞれの現状

<アバロン視点>


【黄昏の迷宮 入口付近】



 黄昏の迷宮を出た俺達は皆、厄介者を処分できた解放感で溢れてい──なかった。正直、黄昏の迷宮35Fから地上までは今までで一番キツかった。


(何故だ……もっと苦しい状況なんていくらでもあったはずなのに)


 まあ、一つには荷物だ。ドロップや食料などの荷物を運びながら戦うのは予想以上に体力を使う。それにマッピングなんて誰もやったことがなかったから迷いまくったし、それに……


(馬鹿な! それじゃまるで俺達がアイツに助けられてたみたいじゃないか!)


 そんなことは断じてない! アイツは役立つの穀潰しで、俺達のお荷物。だから、今回の苦戦もたまたま。そう、たまたまだ!  


「はあはあ、もう駄目……」


 入口から二、三歩歩いた辺りでエスメラルダが座り込み、持っていた荷物を撒き散らす。おいおい、みっともないぞ!


「エスメラルダ、宿までもう少しだ」


 そう言いながらも俺は内心でエスメラルダに悪態をついていた。幸いまだ誰もいないからいいものの、こんな人目のある場所ですることじゃない。


「も、もう無理。だって食事は携帯食ばかりだし、睡眠時間はいつもより大分短いし、何より荷物が重いし……」


 うるさいな! それはみんな同じだ!


 そう怒鳴りそうになったその時、バルザスがエスメラルダに割り当てられた荷物に手を伸ばした。流石怪力のバルザス、代わりに持ってやるつもりだな。


「っ!!!」


 ひょいと持ち上げるのかと思いきや、膝を曲げた拍子に何とバルザスはよろめいてしまった。おいおい、バルザスまで疲労困憊なのか!


(まあ、皆は雑用に慣れてないからな。そのせいだろう)


 戦闘以外の雑用は全てヤツに任せていたせいか。


(慣れれば問題ない)


 この思い違いを俺が後悔するのはもう少し後のことだ。





<フェイ視点>


「よしっ、盾だ!」


 剣は二番目に開けた宝箱に入っていたが、盾が出たのはこの六個目の宝箱が初めてだ。



◆◆◆ 


 常闇の盾

  装備時回避率10%上昇。闇属性防御力 

 20%上昇


◆◆◆



 いい防具だけど、パラディンには似合わないなあ……まあ、剣も似たりよったりだけど



◆◆◆


 黒炎の剣

  攻撃力+650 

  装備時闇属性攻撃力10%上昇 

  装備時火属性攻撃力10%上昇


◆◆◆


 

 まあ、この【黄昏の迷宮】はアンデッド系の魔物が出るダンジョンなので仕方ないか。


(マップはあと少しで完成だな)


 俺が書いたマップは中央部分を残すのみとなっている。多分そこにダンジョンボスがいる部屋があるんだろう。 


(確か今のステータスは……)


 俺は“ステータス”と念じた。



◆◆◆


 フェイ〈パラディンロード〉

 Lv  32

 Hp  738 

 Mp  4655

 Str  1768

 Dex 1923

 Int  1670

 Mnd 1924

 Vit  1671

 Agi  1700

 luk  1861

 スキル

 〔グランドクロス〕

 〔デュアアタック〕

 〔デュアカバーガード〕

 〔励声叱咤〕

 〔デュアシールドカウンター〕new!

 〔ホーリーライト〕

 〔ターンアンデッドクロス〕

 〔ピュアヒール〕

 〔ピュアフレッシュ〕

 〔アンデッド超特効〕

 〔聖属性攻撃超強化〕

 〔近接攻撃超強化〕

 〔盾防御超強化〕

 〔回復魔法強化:特大〕


 スロット

 〔アイテムボックス〕 

 〔超鑑定〕

 〔アクロバット〕


◆◆◆



(中央部分に行く前にもう少しレベルを上げるか)


 正直、魔物が群れで出てくるとややキツイ。「パラディンロード」は聖属性のスキルが多いのでここの魔物に与えるダメージが大きい。だから、一体ずつ潰すという戦い方がなんとか成り立つけど……


(ただ、呪いみたいなバッドステータスを付与する魔物はヤバイよな)


 ちなみにそういう魔物は〔超鑑定〕が教えてくれるので速攻潰している。ありがとう、〔超鑑定〕!


 ちなみにパラディンロードにクラスチェンジした時に現れた「スロット」という項目だが、これは他のクラスで獲得したスキルを装備させるものらしい。便利だよな。


(! 魔物か)


 気配に気づいた俺は物陰に隠れ、〔超鑑定〕を発動した。



◆◆◆


 骸骨魔剣士(スケルトンエース)

 Lv53


◆◆◆



◆◆◆


 骸骨魔剣士(スケルトンエース)

 Lv55


◆◆◆



◆◆◆


 骸骨魔剣士(スケルトンエース)

 Lv53


◆◆◆



 盾も手に入れたことだし、コイツラはいい練習相手になりそうだな。



 だけど、次のコイツは厄介なヤツだな。



◆◆◆


 包帯木乃伊(マミー)

 Lv55

 ※マヒ毒に注意


◆◆◆


 こいつは最優先で倒さないとな。


(最後の一匹……ん?) 


 この魔物は初めて見るな。



◆◆◆


 毒屍人(ポイズンゾンビ)

 Lv56

 ※毒攻撃に注意


◆◆◆



 げ、バッドステータスを付与する魔物が二体もいるのか!


 だがまあ、マヒはとにかくヤバイ。動けなくなれば、攻撃や回避が出来ずに死ぬだけだ。俺は包帯木乃伊(マミー)に向けて〔ターンアンデッドクロス〕を発動した!


 バシュッ!


 いつもの音と共に包帯木乃伊(マミー)が姿を消す。それと共に俺の存在に気がついた魔物達が一斉にこちらに向かってきた!


「てや――っ!」


 俺は盾を前に掲げて突進! そして骸骨魔剣士(スケルトンエース)に〔デュアシールドアタック〕をお見舞いした!


「ガガっ!」


 盾での打撃に骸骨魔剣士(スケルトンエース)──こいつは骸骨魔剣士(スケルトンエース)Aと命名する──がのけ反った。


(この手応え……クリティカルしたな!)


 勿論これはたまたまじゃない。俺はスキルこそなかったが、盾を使っていたことがある。しかも、盾による殴打は意表を突くためにかなり練習していたのだ。さらにさっきの〔デュアシールドアタック〕にはこんな効果がある。



◆◆◆


〔デュアシールドアタック〕

  盾による殴打。高確率で相手をスタンさ

 せる。なお、クリティカル時は100%スタ

 ンさせる。


◆◆◆



 これで五〜六秒は稼げるはず。しかし、その隙に別の骸骨魔剣士(スケルトンエース)──こいつはBにする──が迫る!


(だけど問題ない!)


 俺は右手の剣で骸骨魔剣士(スケルトンエース)Bに用意していたスキルを放った!


「〔グランドクロス〕!」

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