二刀流の二頭の竜

!~よたみてい書

似てる竜

 一人の青髪の女性がペットショップの看板を見上げていた。


(頼む! ここに食べ物あってくれ!)


 青髪女性は十八歳に見える容姿で、身長百六十センチメートル程をしていた。前髪を目の上まで垂らし、背中上部まで後ろ髪が伸びていて、頭の両側面で髪を束ね、二つの尻尾が出来上がっている。また、髪の尻尾とは別に、頭頂部と側頭部の間から一対の角が生えていた。それから、目尻は吊り上がっていて、黄色い目に黒い瞳が宿っている。そして、口には鎌を咥えていた。また、黒い衣装を着ていて、薄い生地で全身を守っていた。腰の下部からは一メートル程の尻尾が伸びていて、先っぽで剣を握っている。


 剣は一メートル程の長さをしていて、銀色の刃を輝かせていた。


 鎌は長さ八十センチメートル程で、の片方の先端には緩やかに曲がった刃が付いている。


 青髪女性はペットショップの中に入っていく。




 青髪女性は雑貨が乱雑に置かれてる棚の間を通っていき、視線を忙しく動かす。


(食べ物ー……食べ物はー?)


 眉尻を下げながら歩き続ける。そして、【フード】と書かれた札が掛かっている棚の前で歩みを止めた。


(あった、食べ物!)


 微笑みながら棚に視線を向けて、目を横に動かしていく。


(食べ物の棚はあったけど、食べ物が一個もない……)


 真剣な眼差しを作りながら周囲を見渡す。


(無い……)


 頭を掻き、床に這いつくばった。


(まさか、ね)


 棚の下を覗き込む。


(てぃあっ!? なんか転がってる……もしかして!?)


 片腕を缶詰に向けて伸ばしていく。そして、掴んだら腕を引っ込ませ、戦利品に目を向けた。


(てゃっ!? 食べ物だ、食べ物だよ! 見つけた!)


 青髪女性はその場に立ち上がり、口角を上げた。




 ペットショップの外壁は少し汚れていて、時世の影響をわずかに貰っていた。


 そして、黄髪の女性がペットショップの入口を通っていく。


(食べ物まだ残ってるかな……お願い、一個くらいは!)


 黄髪女性は十八歳に見える姿で、約百五十五センチメートルの身長をしている。前髪を眉まで下ろし、後頭部で髪を束ねていて、大きめの尻尾を作り、頭頂部と側頭部の間からは対になって角が生えていた。また、右の角には短剣がくくりつけられている。それから、目尻は下がっていて、黒い瞳が黄色い目の中心に備わっていた。そして、白い衣装で身を包み、軽い素材で全身をおおっていて、腰の辺りからは尻尾が一メートルほど伸びている。また、右靴のつま先には剣が仕込まれていた。


 短剣は三十センチメートル程で、銀色の刀身が光を反射させている。


 剣は四十センチメートルくらいで、銀色の中に汚れがいくつか目立っていた。


 黄髪女性は無表情のまま店内を見渡しながら、雑貨が並べられた棚の間を通っていく。そして、缶詰を握りしめながら喜んでいる青髪女性の背中を見つめた。


(でぃゃっ!? だれかいる!?)


 黄髪女性は眉をひそめながら睨みつける。


(竜人間ドラヒュマンゴンの女の子……? うっ、物騒な武器持ってるよ……。あれっ、もしかして持ってるのって……食べ物?)


 青髪女性は素早く顔を黄髪女性に向ける。


(しまった! 無防備を晒しすぎた!)


 青髪女性は尻尾を立てながら睨んだ。


(女性の竜人間ドラヒュマンゴン?)


 黄髪女性も鋭い眼差しを作りながら少し屈んだ体勢を取る。


「……あの、持ってるモノって?」


「……食べ物」


「わたしも食べ物を探してたんです。他にありましたか?」


 青髪女性は鎌と一緒に首をゆっくり横に振る。


「多分、これしか残ってない。あと、これはあたしのモノ」


 こわばった笑みを浮かべる黄髪女性。


「そうなんですね……。でも、わたしも急いでるんです。食べ物がどうしても欲しいんです。なので、どうかその缶詰を譲ってもらえないでしょうか?」


 青髪女性は真顔のまま黄髪女性を見つめた。


「……他の店を回ってきな」


「ペットショップなんてそんなに多くないので……」


 青髪女性は眉尻を上げながら語気を強める。


「もっと色んなところ回りなさい!」


 黄髪女性も眉尻を上げて声を荒げた。


「もう時間が無いんです! 待てません!」


「つまり……」


 黄髪女性は右足を浮かし、青髪女性を睨みつける。


 青髪女性も首を少し横に向けながら尻尾を振り上げた。


 二人は見つめ合いながら、しばらく時が止まる。


 そして、店外からの銃声が店の中に響き渡った。


 黄髪女性は右足で蹴り上げるけど、青髪女性は剣で防いだ。軽い金属音が店内に響く。


 青髪女性はそのまま後退し、棚に隠れる。


 黄髪女性は青髪女性を追いかけて、棚を曲がっていく。


 青髪女性は入口に向かって走っていった。その途中で棚に置かれていたボールを掴み取る。そして、一瞬後方に顔を向け、勢いよく投げつけながら逃げていった。


 黄髪女性は真っすぐ宙を進んでいくボールを剣で弾き飛ばそうとしたけど、太ももに被弾し、顔をしかめさせる。


(痛ッ! ……素直に横に避ければ良かった)


 黄髪女性@8は足を数回撫で、店の入り口に向かう。




 黄髪女性がペットショップから出ると、入口の横で待ち伏せしていた青髪女性が咥えていた鎌を思い切り振った。


 鎌の刃が黄髪女性の胸を切り裂いていき、彼女は胸を押さえながら数歩後退する。


 黄髪女性@7は鋭い眼差しを青髪女性に向けた。


(くぅっ……油断し過ぎた!)


(こんな不意打ちも避けれないの?)


 青髪女性は硬い笑みを作りながら呟く。


「諦めなさい?」


「……諦めない!」


 黄髪女性は青髪女性に向かって走り出し、地面を蹴って宙に飛び跳ねる。更に、右足を青髪女性の顔をめがけて横に振るけど、青髪女性は剣で受け止めた。同時に、硬い衝突音が周囲に響き渡る。


 黄髪女性は地面に着地すると、すぐさま頭部を青髪女性の胸に向けて突きだす。短剣は青髪女性の胸部に刺さり、刃が体に飲まれていく。


 青髪女性@8は顔をしかめさせ、持っていた缶詰を地面に落とした。


(痛ッ!)


 青髪女性はすぐに剣を眼前の黄髪女性に向けて振り下ろす。しかし、黄髪女性は体を後ろに回転させながら後退した。その途中で、剣で青髪女性の胸部から顎まで一直線の切り傷を作り出していく。 


 眉をひそめながら後ろに下がる青髪女性@7。


(こいつッ!)


 青髪女性は真剣な眼差しを作り、剣で黄髪女性の足を薙ぎ払う。


 黄髪女性は飛び跳ねて攻撃を避け、再び足を横に振る。でも、剣によって防がれてしまった。


 しかも、青髪女性は首も横に振っていて、鎌の刃が黄髪女性の横腹を切り裂いていく。


 黄髪女性@6は着地と同時に地面に崩れ落ちた。


(痛いっ!)


 青髪女性は黄髪女性の首をめがけて剣を振り落とす。しかし、黄髪女性は頭を振って短剣で剣を受け流す。それから、右足を振り回し、青髪女性の左足を傷つけていった。


 青髪女性@6は崩れ落ち、両手を地面につける。


 黄髪女性は右足を青髪女性の胸部に向けて振り上げた。青髪女性は成すすべなく刃を体に受け入れていく。


 青髪女性@5は顔を歪めながら唸る。


 そして、青髪女性は黄髪女性の足を掴み、衣服の上から肌をつねった。


 黄髪女性@5は目を見開きながら悲鳴をあげる。


「いたっ!」


 青髪女性は首を横に大きく振り、黄髪女性の腕を切り刻んでいった。


 黄髪女性@4は腕を押さえながら飛び退き、鋭い眼差しを青髪女性に向ける。


 青髪女性は黄髪女性に向かって走っていき、首を大きく振った。鎌の刃が黄髪女性を襲うけど、彼女の大きく上げた右足が鎌を弾いていく。


 それから、青髪女性は尻尾を振り、剣を黄髪女性の股に突き刺す。


 黄髪女性@3は顔をしかめさせながら血を口から吐き、素早く後ろに下がる。


(んぐぅっ)


 黄髪女性は眉尻を下げながら息を大きく吸い込む。そして、血飛沫ちしぶきと一緒に電撃を吐き出す。電気の川は青髪女性に向かって進んでいく。


 青髪女性は急いで横に避ける。


(危ないっ!)


 電撃はコンクリートに直撃していき、青髪女性の剣を飲み込んでいく。


 青髪女性は目を見開きながら足を止めた。


(痛ッ痛ッ、尻尾痛ッ!)


 黄髪女性は元気よく青髪女性@4に向かっていき、大きく宙を飛んでいく。そして、体を大きく横に一回転させて、右足を青髪女性の側頭部に突き刺す。


 青髪女性@3は咥えていた鎌を地面に落とし、吹き飛んでいった。


 黄髪女性は無事に着地し終えると、すぐに周囲を見渡す。


(三十分に一回しか使えないブレス、ギリギリ成功! そんなことより、戦ってる場合じゃない! 食べ物拾って、早くいかなきゃ)


 黄髪女性は地面に転がっている缶詰を見つけたら、駆け寄っていく。そして、その場にしゃがみこみ拾い上げる。


 青髪女性は地面に伏せた体勢のまま、黄髪女性に顔を向ける。そして、息を大きく吸い込み、冷気と一緒に勢いよく吐き出した。


 冷気の川はコンクリートの表面を白くさせながら黄髪女性に進んでいく。それから、黄髪女性の背中を冷えた川が包み込む。


 黄髪女性@2はしゃがみながら全身を白くさせ、固まった。


 青髪女性はその場に立ち上がり、ゆっくり黄髪女性に近づいていく。


(三十分に一回のブレス、見事命中!)


 青髪女性は黄髪女性が握っている缶詰を引き抜く。それから、体を横に一回転させて、勢いをつけながら剣を振り回す。刃は黄髪女性を真っ二つに切断し、彼女の上半身は近くに転がっていった。  


 青髪女性はペットショップから離れていく。


(あたしも早く行かなきゃ!)


 体が元通りになった黄髪女性@1はその場に立ち上がる。


(これ以上は、本当に死ぬよ)


 黄髪女性は物陰に隠れながら青髪女性を静かに追っていった。




 青髪女性は缶詰を開けたら、黒い猫の目の前に差し出した。


「一個だけだけど、見つけてきたよ」


 黒猫は尻尾を上げながら缶詰に近づいていく。


(わーい、ご飯だー! お腹空いたよー)


 薄桃色の食べ物にかぶりつく黒猫。


 黄髪女性は微笑みながら青髪女性と黒猫を見つめた。


(あれっ、彼女もあの子を助けたかったんだ……それじゃあ、わたしたち一体何のために争ってたんだろう?)


 黄髪女性は後頭部で爆撃音を聞きながら、顔を引きつらせて肩をすくめた。

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