第3話僕のホッピー

中川は僕を連れ回し、やっと目当ての場所に着いた。

暖簾がかかり、店名は「きも善」と言う焼き鳥屋であった。

中川が串盛りと、生ビールを注文した。

「平松君は飲みものどうする?」

「ホッピーの黒で」

と、言う。

「中川さん、いい店知ってるね」

彼女は付きだしの浅漬けをボリボリ食べながら、

「平松君、わたしの名前は恵なの。だから、メグちゃんって呼んで!」

「メグちゃん、どこでこの店知ったの?」

「会社の先輩に教えてもらったの」


お待ちどうさま~、生とホッピーですね。


「タカちゃん、ホッピー渋いの飲むね~」

「た、タカちゃん?」

「だって、貴史だからタカちゃんでいいじゃない」

「ま、まぁ~」

僕は、焼酎にホッピーを注ぎ、2人で乾杯した。

「タカちゃん、朝、ごめんね、ホントに」「いいよ、いいよ」

「今夜はじゃんじゃんやって!これでも、小金持ちなのです」

「割り勘じゃないと飲めないよ!」

「気にしない気にしない。だって、いつも羽弦課長に言われてたの。今はお前が後輩であり、部下だから飲ませてやるが、新人の後輩が出来たら飲ませてやるんだぞっ!っていつも言われてたし」

僕は少し考え、

「じゃ、メグちゃんに甘えよっかな~。知り合って初日に飲めるなんて夢にも思わなかったよ」

はい、串盛りど~ぞ~


「タカちゃん、ニンニク串食べていい?」

「あ、明日も仕事だよ?大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。この会社の連中みんなカッコつけて、オシャレなレストランとか予約して、頑張ってるけど男に興味ないなー。あっ、変な意味じゃなくてね」

僕は、砂肝串を食べてホッピーで流し込んだ。

「メグちゃんはどうして、僕を飲みに誘ったの?」

中川は男らしく?ニンニク串を豪快に食べて、

「ケガさせたお詫びと、何となく気が合いそうだから」

「まだ、知り合って1日目で分かるの?」

「病院に行く前に、トイレ行ったでしょ?うんちが安産だったって言ったよね。そこで、ピコーンて来たんだよね」


僕は、ホッピーセットのお代わりをした。

「タカちゃん、ホッピーってなに?」

「焼酎をホッピーで割ったヤツ。ビールより安くて飲みやすいよ。白と黒があるけど僕は、断然黒だね」

「へぇ~、ホッピーなんてタカちゃんもいぶし銀だね」

「いぶし銀って!アハハハ」

「でも、会社じゃ、中川って呼んでね?タカちゃんの事も平松さんって呼ぶからさ。あと、会社の人には見付からないように、これからも飲もうね。勘違い野郎が多いから。わたしは男なんて必要ない」

「じゃ、僕は?」

「仕事の相方。見つかっても変な事言っちゃだめよ」


「ハーッ、飲んだな~、メグちゃん。もう、9時か~、帰ろっか?」

「そうだね」

2人は外の喫煙所でタバコを吸った。

すると、後ろから声を掛けられた。

「よう、平松」

現場監督の五島が作業員2人連れて、立っていた。

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