第2話出会い

僕は会社までバスを利用している。朝のラッシュ時にはすし詰め状態になる。

最寄りのバス停で降りようとするには、人をかき分けて、脱出するしかない。

その時だ!

右足に痛みが走る。

「いって~」

良く見ると、女性のハイヒールのかかとが右足の甲に当たっていたのだ。

踏んだ女性を見て、一言言ってやろうかと思い、顔を見てみた。

……好みだ!

女性は平謝りして、走って降りて行った。

僕は、右足をかばいながら出勤した。

「どうした?平松?」

課長が声を掛ける。

「通勤途中、女性のハイヒールがかかとに乗りまして」

「血が出てるじゃないか?産業医にみてもらおう。今な、オレは離せない仕事があるから、あっ、中川君」

資料室から出てた女の子を呼び止めた。

「あっ」

「あっ」

「ねえねえ、2人とも知り合いなの?」

「すいません。朝は痛かったですよね?あっ、血が出てる」

「大したことないよ!」

「中川君が平松を怪我させたの~?」

「は、はい」

「じゃ、中川君、キミが平松を病院へ連れて行きなさい」

「はい」


中川の運転で病院へ向かったが、お互いの自己紹介で話しは続かなかった。

中川は、

「平松さん、喫煙されます?」

「はい、ハイライトを吸ってます。中川さんは?」

「メビウスの8㎜です」

2人はコンビニでアイスコーヒーを飲みながら、喫煙所でタバコを吸った。

「さ、平松さん。病院行きますか」

「う、うん。ウッ!」

「どうされました?」

「ちょ、ちょっとトイレに行きたい」

「早く行って下さい」

「うんちだから、10分待って下さい」


平松はハァハァいいながら車に乗った。

「安産だったよ!」

「何をです?」

「うんち」

「……キャハハハ、平松さん面白いね」


病院で処置してもらった。消毒してガーゼを当ててテーピングした。

普通に歩けるから、問題ない。

「平松さんホントに今日は、ごめんなさい」

「いいよ、いいよ」

「今夜、時間空いてます?」

「ず~っと空いてる。干支が変わっても空いてる」

「良かった。一緒に飲みませんか?」


僕は、こやつの魂胆が分からずOKしてしまった。作業員にはイケメンで筋肉質なヤツも居るのだが。

何故、中川は彼氏がいないのか?確かめてやろう。

会社に戻ると、書類と格闘し、ひたすらナンバーを打ち込む仕事をした。定時の5時になった。

横の中川が、

「さっ、平松さん行きましょ?」

「う、うん」

2人は会社を後にした。課長は目で合図した。きっと、秘密を探れのサインだ。


中川は会社を出ると、良く話す女の子であった。




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