1 錠児side

 昔から、俺はこのギターって決めてる。

 ML学園でヤバい奴が現れて、俺たちのバンド【FLY】が負けちゃった日から、多分憲誠においてはベースは弾いてへんのやろうな……でも、やっぱり俺はギター弾いてないと、調子が出ぇへん。

 いつもの音楽バーでギターを弾かせてもらったばっかり。ホワイトファルコンで鳴らしたのはチャックベリー。バック・トゥ・ザ・フューチャーでマイケル・J・フォックスが演奏した……


「やっぱり流石でしたよ。JOHNNY B GOODE」

「おおきに、誰や思うたら、ハリーやないか。懐かしいなぁ」

「そのギター、八剣センパイといえばそれですよね」


 俺は眉を上げて笑いかけてから、ポケットから赤のマルボロを取り出し、一本抜いて唇にくわえた。


「ええか?」

「構いませんよ」


 火をつけて、煙を吸い込んだ。


「俺んとこに来たってことは、なんかあったやんやな?学園に」

「いや、まぁ。オレがちょっと気になってるだけなんですがね」

「え?」

「それより、オレはちょっと思い出話でもしたくなっただけなんですよ」


 ハリーはグラスに入ったバーボンをちらりと舐めるように飲んで咳をした。大して飲めないなら無理すんなや……


「明日は、冠城センパイのとこにまた行ってみようかと」

「おぉ、冠城かぁ。懐かしいなぁ。あいつもう娘がおるんやってな。可愛いらしいやないか?」


 ハリーを見ていると、否が応でもあの日のことを思い出す。事件とも伝説とも言われているあの日のことを……

――まぁ、俺は楽しかったけどな。めっちゃ

 


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