第12話
レジに向かって明日香が私たちの注文をしてくれている時、璃緒に肩をポンポンと叩かれた。
前を見てという璃緒のジェスチャーに合わせて定員さんの方を見てみると、最近何かとご縁があるあの高瀬くんがいた。
『た、高瀬くん!?』
そう思い急いで何か書くものを用意しようとしたら
「『こんにちは。』」
と、高瀬くんが手話で挨拶をしてきた。
なんで、最近まで文字で会話してたのに。
理解に追いつこうとして頭の中がぐるぐるしていると、また璃緒から肩を叩かれ前を向く。
するとまた高瀬くんが
「『また学校で。』」
と、私にもわかるように手話で会話をしてくれた。
明日香や璃緒の時ももちろん嬉しかったが、手話で会話できる人がもう1人増えてくれてより嬉しかった。
明日香はもう注文し終わったみたいで、後ろにも人が並んでいたから私も高瀬くんに『また学校で!』と返しその場を離れた。
「『いや〜、しっかしまさか高瀬がここでバイトしてるなんて思いもしなかったわ!』」
「『私は親経由で知ってたけどまさか今日いるとは思わなかったよ。しかも、あいつ手話まで覚えてるなんてね。』」
『なんで急に手話なんて……なんで!?』
「『そりゃぁ、ねえ?璃緒?』」
「『ん?んー、うん。ね。』」
『え?待ってどういうこと!?』
「『それは千春さん自分で気づかなきゃ〜?』」
「『ま、面白みはないよね〜。』」
『ちょっ、なにそれ!』
「『ほらほら!早く食べないと!この後の映画遅れるよ?』」
明日香と璃緒に上手く話をかわされて、なんで高瀬くんが急に手話を覚えたのか私だけ分からないままにされてしまった。
確かに早く食べないと映画に間に合わなくなってしまうため、急かされたままのスピードで食べ終えた。
その後は特に何かあったということはなく、無事に映画を見終わって買い物を楽しみみんな帰路に着いた。
ただ、家に帰ってから私の頭の中は高瀬くんのことでいっぱいになりながら自分の部屋でバタバタしていたのは秘密。
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