第10話
高瀬くんから飴をもらってしばらくが経った頃。
「『皆の者!聞いてくれ!』」
と、明日香が帰り道の時急に言い出した。
「『手話でもその元気ありあまってるのがわかるのなんなの?』」
『どうかした?明日香。』
「『5月、我々学生たちを癒すあの時期が来る。そう!ゴールデンウィークだ!!』」
『だからテンション上がってるんだね。』
「『こっちの身にもなってよ、練習三昧になる苦痛の休みだよ。』」
「『だからって言っても璃緒の部活絶対2日か3日は休みあるでしょ?だからその時3人でちょっと出かけない?』」
友達とお出かけ。私には縁遠い話だと思っていたが、こうやって誘ってくれる友達ができたのにすごい感謝だ。
『いいね!私友達とお出かけするの初めてだからお母さんに聞いてみるね。』
「『確かにそれはあり。うちも予定表出たら確認するわ。』」
「『決まり!じゃあそれまで各々準備しとこ!』」
私は初めての出来事にワクワクする反面、少し心配なことがあった。それは母のこと。私が耳が聞こえないことも相まって少し心配性なところがある。
家に着いて2人と別れた後、お母さんに先程の明日香の提案を話してみた。
「『3人でお出かけ?どこまで?』」
『まだ決まってないけど、そこまで遠くには行かないよ。』
「『そうだとしても…お母さんも少し考えておくね、少し心配だから。』」
『うん、わかった。ありがとう。』
「『ほら、早く着替えてきて、簡単なサラダ作ってもらってもいい?今日はちょっと時間なくてまだ全然ご飯出来てないの。』」
『わかったよ。今着替えてくるね。』
真っ向から全否定されないだけ良し。昔はこれより酷かったから少し心配だったけど、いつもの3人だということもあるのだろう。
もしダメでも絶対説得してみんなとお出かけするんだ。
そう心に決めて、着替えたあとは気合を入れてサラダ作りに取り掛かった。
父は帰りが遅いため、いつも夕食はお母さんと私の2人でとる。その時に母から
「『お母さん、あれから考えてたけど、いいわよ。3人で楽しんできなさいね。』」
と、急に言われた。
『え、いいの?』
「『もちろん、明日香ちゃんたちと行くんでしょ?少し心配だけど、いつも学校行く時に連れて行ってくれてるし、それに千春の成長の良い機会だと思って。あ、その代わり、あんまり遅くはダメよ、せめて夜の7時には帰ってくること。いい?』」
『うん!ありがとう!お母さん!』
こうして私は連休にある初イベントを勝ち取り、それまでの間とてつもないやる気に満ちて日々を過ごした。
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