第9話 高瀬目線
最近、新学期初日にぶつかったやつと妙に遭遇する。
俺の幼なじみの話だと耳が聞こえないらしい。
どおりでぶつかった時何も言わないわけだ。なにか取り出そうとしていたのはきっと書くものだったんだろう。
それを知らずにぶつかった時何も言わなかったから「なんだこいつ」と思っていたことを少し後悔していた。
そんな時にあいつが体育館裏で耳に付ける…補聴器?というものを探していると言っていたので、自分の中の後悔を消すようにそれを手伝った。
自分で言うのもなんだが俺は素行が良い方では無い。だが、昔から母親や姉貴から「女の子には優しくしろ」と口酸っぱく言われているため女子に対してこういうことをするのはあまり苦でもなかった。
なんてことを改めて考えながら今日も学校をサボりふらつきながら帰路に着く。
家に着き玄関を開けると珍しく姉貴が帰ってきていた。
「おー!龍おかえり!」
「京、帰ってきてたのかよ。」
「んだよその顔、せっかくお姉様が帰ってきてんだからもっと盛大に嬉しいって顔しろよ〜。全くうちの弟は可愛くないねー。」
「っるせ、なんとでも言ってろ。」
姉貴は寮に泊まり込みで介護の仕事をしながら趣味でバイクに乗っているため長期の休みがない限りあまり家に帰ってこない。
うるさいやつが帰ってきたと思いながら部屋に行こうとすると
「龍、あんた彼女でもできた?」
と急に言われたから素直にいないと答えると
「じゃあ好きな子とかは?いないの?」
「いねーよ、なんだよ帰ってきて早々そんなこと。」
「いや、だって前のあんたと顔つきってか目つきが柔らかくなってっからさ。女でもできたのかなーって。」
正直心当たりがないわけではない。ただそれは最近遭遇することが多くなっているだけのことだと考えながらふと思った。
「なぁ姉貴、姉貴の介護の仕事に手話ってあるか?」
「え、なに急に。珍しいこともあるもんだね。まーあるにはあるけど私はちょっとできるくらいだよ。」
「教えてくれ。」
姉貴にものを頼むのはあまりないため、少し気恥しい気もしたが手話を覚えたいのは本当だ。
「……いいよ、知ってて損は無いしね〜。」
とニヤニヤしながら言ってきた。少し手が出そうになったがそれをしないのは昔からの教えがあるため。
そしてその日から京からかわれながらの手話教室が始まった。
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