第7話
あれから数週間、ケガが増えそうな数日間からは特になにもなく平和な日々が続いた。
「『そういえば千春、あれから高瀬とどうなった?』」
『…え!?』
「『明日香またそんなこと言って…千春はまだあいつのことなんとも思ってないって。』」
『待ってよまだってどういうこと!?』
急に何を聞かれたのかと思いぽかんとしてしまった。本当にどういう流れでこんな話になったのやら…。
すると明日香は急に考え込むそぶりを見せて話し始めた。
「『だから、ほら、えーっと…あれからケガとかしてない?』」
『え?あ、うん、あれからは特に何もないよ?心配してくれてたならそう言ってくれたらいいのに。』
「『あはは、ごめんごめん変なこと聞いて!ちょっと気になってさ!』」
「明日香、相手が千春でよかったね。」
「ほんとだよ…この子ちょっと鈍感すぎない?」
「まあ、私もちょっと楽しみかな。」
「え、璃緒も?」
「明日香に言われてから気になってきた。」
「さすがだよ璃緒…。あんた最高!」
「あーハイハイわかったからくっつくな。『千春ー助けてー。』」
『私もくっつきに行こうとしたのに〜』
なんてことを話していると教室のドアから私たちの方に歩いてくる人がいた。
「お、噂をすれば!」
「ん?おー、龍じゃん。珍しいな学校いんの。」
「文月、お前これ前の教室に忘れただろ。立原のパシリだ。」
「え?まじか、ごめんごめんありがとう。」
どうやら璃緒が前の授業の教室にノートを忘れたらしく、それを高瀬くんが先生から頼まれたらしい。
そしてしばらく璃緒たちと話しているのを見ていると高瀬くんが急に私の方を見て何かを言う。
少し唇の動きが見ずらくあたふたしていると、璃緒が手話で通訳をしてくれた
『手を出して』
私が大人しく手を高瀬くんの前に出すと、彼から渡されたのはイチゴ味の飴だった。
そして彼は璃緒のノートを開いたと思うとおもむろに文字を書いていく。
[この前のお礼]
と書かれたノートを渡され慌てて手話で
『むしろこっちがお礼したのにいいの?』
と聞く。
それを璃緒達に通訳で伝えてもらうとまたノートに書く。
[これ食べないから]
男らしいが綺麗な字で書かれた文字を見てから彼を見て私はお礼を言う。
『ありがとう。』
すると明日香が高瀬くんに何かを言う素振りを見せるとまた私の方を見て
『どういたしまして。』
と高瀬くんから手話で伝えられる。
そのまま彼は教室を出てまたどこかに行ってしまった。
「『何今の、あいつああいうキャラだっけ?』」
と明日香が言う。
「『お礼されたまんまっていうのはあいつは好きじゃないかな、昔から。なんだかんだバレンタインにチョコもらった女子全員にホワイトデーは何かしらお返ししてたし。』てかあいつ何気に私のノート勝手に使いやがって…。」
「『へーそうなんだ。意外だわ。』」
そんな2人の会話を見ながら私は今貰った飴を口に放り込んだ。
気のせいではあると思うが、その飴はいつも食べている飴より少し甘い気がした。
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