第3話
「こんなところで何してんだ。」
正直何を言っているか分からなかったが読唇術と今この状況を考えてこう言っただろうと思った。
朝の状況と同じくメモ帳とペンをだし急いで書いて高瀬くんに見せる
「…ぶつかった拍子にここのどこかに補聴器を落とした。ふーん、あれ補聴器だったんか。」
高瀬くんが何か言いながらメモ帳に文字を書き始める。
「ん。」
渡されたそれを見ると
[俺も手伝う]
と書いてあり、当の本人は既に捜索に入っていた。
人に探させておいて自分がやってないのはまずい。私も急いで探すのを続けた。
15分くらいだった頃、雑草だらけの敷地を探すのは大変で全く見つからない。
これは諦めて新しいのを買うしかないだろうか。痛い出費だな。
それから5分後、また急に肩を叩かれた。
後ろを振り返ると服に少し土がついた高瀬くんが立っていた。
どうしたのかと思い首を傾げていると彼が手を差し出してきた。
そして私の手を指して「手を出せ」と言った。
大人しく手を出して待っていると高瀬くんの手から私の補聴器が出てきた。
私がメモ帳を出しお礼を書こうとすると高瀬くんがそれを取り逆に何かを書いていた。
[それで合ってるか?]
私が頷くとまた何かを書き出し
[もう落とすなよ]
とだけ書いてどこか去っていってしまった。
取り残された私は1人で補聴器を見ながら悶々と考えていた。
お礼できなかったどうしよう、ていうかなんで手伝ってくれたの?
軽くプチパニックも起こしていたがスマホの振動が鳴り目をやると璃緒からどこにいるのというメッセージが届いていた。
そっか、そんなに2人を待たせてたのか。
そうだ、高瀬くんのお礼に何がいいか2人に相談しよう。
そう思い、私はすぐに体育館裏を後にした。
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