第5話 再誕4

「では、お二人とも手を出して下さい。」

桜翠は、両の手を二人の前に差し出す。夜月と源はそれに従って目の前の手のひらに乗せた。

「少し胸の辺りに熱を感じると思いますが、正常な状態ですのでご心配なく。」

二人の手が握られる。それから一瞬の後、女神が言ったように体の中に熱が伝わってきた。しかし、それは熱いというよりも温かい。そのぬくもりが心臓を包み込むようなそんな感覚を夜月は感じていた。

その熱が消えていく。そして、その冷めたところには何かが固まっているように感じる。液体だったものが冷えて個体になったように。これが、能力が宿ったという感覚なのだろう。

しかし、女神はまだ手を放そうとはせず、真剣な顔で目を閉じている。

「えっと、もう終わったんでしょうか?」

同じように感じたのだろう、源が問いを投げかけるもそれに対する返事はない。何かに集中しているのだろうか?どちらにせよ今話しかけるのは良くないだろうと、夜月は黙ったまま再び彼女が口を動かすのを待つことにする。

それに対して、源の方はと言うと無視されたと思ったのだろうか、焦ったように「え、え?」と繰り返していた。


「また、面白い能力ね。」

しばらくした後、「ふふ」とわずかに笑った後で、小さくぼそりと呟いた。

吐息が漏れるくらいの声であったため、二人には聞こえていない。つまり、夜月たちにとっては、次からが桜翠が再開した言葉なのだ。

「長らくお待たせしました。あなたたちの能力の解析も終了いたしましたので、その結果を伝えていきたいと思います。」

そう告げて、女神はその内容を淡々と話していく。

源の能力は『八雷(やついかつち)の体現』。発動すると自身の身体を覆う雷の膜を作り出すことができる。複雑でなく簡素ではあるが、強力なものではあるだろう。

夜月の能力は『天目一箇(あまのめひとつ)の恩恵』。自分が触れているものに熱を加えることができる。その物全体ではなく、一部にのみ熱を与えることもできるとのことだ。

「一風変わった能力だと思いますが、あなたにはちょうどいいのではないでしょうか?」

女神が放ったその言葉に、夜月はしばらく考えを巡らせていたが、何かに気づき合点がいったように首を縦に振った。

二人の能力について一通り話した後で、彼女は付け加える。それによると、能力の内容についてはすべて解析しようとすると時間がかかるため、細かいところまでは見れていないとのことだった。つまり、能力を使っているうちに新たな発見があるかもしれないということだ。

「これで、私の方から話すことは終了となります。これからあなたたちを恵白の拠点へと飛ばすことになりますが心の準備はよろしいでしょうか?」

彼女はそう言って立ち上がる。

「大丈夫です。」

「俺も。いつでも大丈夫ですよ。」

頷く二人もそれに倣って腰を上げる。

「分かりました。」

桜翠が最後にそうつぶやくと同時に白い光の粒たちが夜月と源を取り囲み、視界が白で覆われていく。眩しすぎる光。きっと、次、目を開けたときには違う場所にいるのだろう。そう思いながら夜月は目を閉じるのだった。

「第二の人生があなたたちにとって明るいものになりますように。」

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