第十七話 再会

 母親はすぐに見付かった。

 女の子がデパートの入口付近にいたことと、母親と一緒に買い物に来たという発言――佐々木が更に聞き取りをすると、どうやらさっきまで女の子は、母親と一緒に服を見ていたことがわかったため、俺と佐々木はとりあえず、女の子を連れてデパートの中に入った。

 デパートの階層の案内図を見ると、服屋は一階や二階に複数個あったが――俺と佐々木は迷子センターを目指した。

「すいません。迷子センターってどこですか?」

 一番近くにあったお店の店員にそう言って、事情を説明した佐々木は女性の店員から丁寧に場所を説明してもらって、女の子と手を繋いで迷子センターへ向かった。俺はただ二人のあとを付いて行っただけだったが、言われた場所に行って受付らしき店員にまた事情を説明して、そのまま奥の部屋へと案内されると――扉を開けた先に女の子の母親がいたのである。

 どうやら買い物中に子供とはぐれたことに気付いて――問い合わせていたらしい。

「ありがとうございます」

 子供と再会して抱き締めたあと、母親は佐々木に頭を下げた。

「一体、なんとお礼を言ったらいいか」

「そ、そんな……いいですよお礼なんて――それよりも、すぐ見付かってよかったです」

「本当に……ありがとうございます!」

「いえ……本当に大丈夫です」

 佐々木は照れ臭そうにそう言っていた。

 善行を行って感謝されるのが、こそばゆいみたいだった。

 そのあとも佐々木は何度も感謝の言葉を述べられていたが……その場の空気に耐え切れなくなったのか、頃合いを見て母親に会釈をして、

「では。あたし達は用事があるので……これで」

 と言って、踵を返して扉を出た。

「ありがとうございます――ほら、ひなこもお礼言って」

「うん、ありがとうおねえちゃん……おにいちゃんも」

 その言葉に佐々木は無言で手を振りながら、その場を離れた。

 二人の姿が完全に見えなくなってから――俺は佐々木に言う。

「すぐ見付かってよかったな」

「そうね」

「俺としては――助ける必要あったのかって思うけど」

「……どういう意味よ?」

「別に。そのままの意味だよ」

 俺は言った。

「あの場でお前が助けなくても、あんなところで子供が泣いていたら、そのうち誰かが手を伸ばした――お前がやったことは無駄とは思わないけど、別にしなくてもよかったことだろ? ……特に俺達は今――優先的にやらないといけないことがあるわけだし」

「…………」

「必要のない寄り道は、避けるべきだと思うな」

「……そうね」

 咬み付くように何か言い返されるかと思ったが……意外にも俺の言葉に、佐々木は同意をした。

「あたしもそう思うわ――けど、あれは必要不回避の出来事だった」

「…………」

 佐々木は俺の方を見ない。見ようともしなかった。

 歩く速度は別段変わらず。

 自分は自分の信じる正しいことを行った――とでも言うように。

「だから助けた――それだけよ」

 佐々木はそう言った。

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