120.代行の実力
闘技場では毎日のように試合が行われており、闘技場ランキングを上げようと多くのユーザーがしのぎを削っている。
しかし、今日に限って言えば俺たち以外の試合は行われていない。
それだけレヴォVSゴールドの試合が注目を浴びているということだろう。
おそらくだが、この試合を知らなかったユーザーも周囲のお祭り騒ぎを聞きつけて集まったという可能性も少なくはない。
だが、これは俺にとっても好都合。
御曹司野郎を直接叩き潰すことはできなくなったが、代行を叩き潰すことでそれを公に晒すことは可能だろう。
そうすれば御曹司野郎もそうだが、ゴールドへの信頼感はさらにがた落ちとなり、今後はこのアカウントを使うことすらなくなるかもしれない。
「準備はいいか、レヴォ?」
「当然。そっちはどうなんだ?」
「問題ない」
……へぇ。神話級大剣装備のレジェンディアーを手にして、問題ないか。
何度も神話級を扱ってきたことがあるのか、その逆なのか。
まあ、問題ないと言っているのだから、俺が気にする必要はないだろう。
目の前のウインドウから【YES】を選択すると、俺とゴールドの間の空間にテンカウントが表示される。
観客席のユーザーたちも歓声をあげていたが、数字が減っていくごとに静まり返っていく。
……5……4……3……2……1……!
「「「「ゴー!」」」」
ゼロになった途端、観客たちから声が響いてきた。
直後にはゴールドが開幕一番のスキルを発動させた。
「一撃で終わってくれるなよ! ゴールデン・ブレイド!」
レジェンディアー固有スキル、ゴールデン・ブレイド。
ただでさえ剣身が長いレジェンディアーだが、そこへさらに長大な黄金のオーラが顕現し間合いが広くなる。
黄金のオーラだが、使用者の意思によって最大で10メートルまで伸ばすことができる。
これをタイミングよく伸縮させることで間合いを掌握し、俺はユーザー相手に負け知らずを続けていた。
そして、この事実は多くのユーザーも知るところであり、当然ながら今回もゴールドがゴールデン・ブレイドを駆使して俺を圧倒すると考えていることだろう。
「お前に扱えるのか? ゴールデン・ブレイドが」
「当然だ! せいやああああっ!」
いきなり最長の10メートルに伸びたゴールデン・ブレイドを見て、俺は軽く後方へ飛び退く。
それを見たゴールドは前に出ようとしたが――そうはならなかった。
「うおっ!? な、なんだこれは!」
やっぱり、ゴールデン・ブレイドの性能をしっかりと把握できていなかったようだ。
ゴールデン・ブレイドは間合いを掌握できる便利なスキルなのだが、発動している間はその場から動くことができなくなる。
そのことを知っていれば自分の空間に相手を追い込んでからスキルを発動させるのだが、代行はそのことを知らなかった。
過去のゴールドの動画を見たことはあっただろうが、今ではそれも全て削除されてしまっている。
そして、御曹司野郎がゴールデン・ブレイドを使った動画を俺は見たことがない。
探せばあったのかもしれないが、代行ですら知らなかったのだから、おそらく御曹司野郎も知らなかったのだろう。
いや、御曹司野郎は知っていたとしても自分で調べろとか言って教えなかっただろうな。
「全く届いていないぞ?」
「くそっ! なんだ、この使えないスキルは!」
「スキルを使えないだなんてなあ! 本当にゴールドなのかー?」
俺はあえて大声で挑発すると、観客席のユーザーたちがざわついていく。
そのことに気づいたゴールドは焦ったのか、ゴールデン・ブレイドを解除して前に出てきた。
「ならば、単純に技術で終わらせてやる!」
「そこで俺に勝負を挑むか。……舐めるなよ?」
振り下ろされたレジェンディアーを受け止めることは、レヴォのステータスでは難しい。
しかし、受け流すことは可能だ。
隼の短剣を振り抜いて僅かに軌道をずらし、流れる動きでシンボル・オブ・ブラッドを肩に張り付けてレジェンディアーへぶつける。
少しでもタイミングがズレれば肩から真っ二つになってしまうが、俺は完璧なタイミングで叩きつけた。
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