108.本物の神話級モンスター
「……おいおい、まさか、無傷なのか?」
「……ゴールドギルド、もう終わりですね」
「……ゴールドさん、よっわぁ」
俺たちの目の前では、シェイルフィードがいびきをかきながら眠っている。
パッと見ただけだが、その体には傷の一つもついていないように見える。
ということは、ゴールドギルドは手も足も出せずにシェイルフィードにやられたということじゃないか。
「……はああぁぁぁぁ~。これじゃあ、ここまで来た意味がなくなっちゃいましたね~」
「リンさんの言う通りですね。ゴールドがいないのであれば、私たちがシェイルフィードを倒すのは意味がない――」
「いいや、あるぞ」
「「……え?」」
二人はゴールドに手を下すことができなくなったことで意味がないと言っているが、それは違う。
ゴールドは動画で宣言したのだ。始祖竜シェイルフィード討伐を。
そして、それは失敗に終わった。さらにデスペナのせいでゴールドは現実時間で24時間のログイン不可となる。
必然的に今日中のログインは不可となり、有言実行も達成できない。
動画を公開するか? 否、御曹司野郎の性格ならしないだろう。何せ、過去に俺が上げた動画を削除していた奴だ。
自分ではないゴールドが達成した成果を削除したのなら、自分の失敗を公開するなんてことは絶対にしないだろう。
そこへ俺が無傷のシェイルフィードを倒す動画をアップすればどうなるか?
動画を見た奴らは図らずもこう思うだろう。それは――
「ゴールドは有言実行に失敗した。それも、相手が無傷な完膚なきまでにな。それを俺たちが倒せばどうなる?」
「……ゴールドの視聴者は落胆」
「……レヴォ様に視聴者が流れ込む」
「そして、俺が動画でゴールドへの宣戦布告を行う。そしたら?」
「「コメントでゴールドに視聴者が暴露する」」
二人の答えに俺はニヤリと笑う。よくわかっているじゃないか。
「俺は今からシェイルフィードと戦う。お前たちは戻っていろ。こいつの相手をしながら周りを見る余裕は――」
「私も戦いますよ、レヴォ様」
「報酬を独り占めするつもりですかー?」
「……デスペナになるかもしれないぞ?」
「レヴォ様のためになるなら、構いません!」
「っていうか、レヴォさんは勝つつもりなんでしょう?」
……全く、こいつらは。
エリザはともかく、リンはどうして……って、楽しそうだからか。
「始祖竜の討伐ですよ! 絶対に楽しいし、報酬もいいですよねー!」
「……あー、そっちもか。まあ確かに、報酬は伝説級選択BОXと神話級素材ランダムBОX、それとランダムスキルブックだな」
「豪華ですね! これはやる気が出てきましたー!」
「やりましょう、レヴォ様! 新たな神話級素材を集めるチャンスですよ!」
「……わかった。デスペナになっても知らないからな」
ため息交じりにそう口にしたが、二人はただ笑うだけだ。
こいつらも俺と同じで戦闘狂か……もしくは、単にワンアースを楽しみたいのか。
「レヴォ様。どうせならライブ配信にしませんか?」
「いいですね! その方が楽しいですし、視聴者も増えると思いますよ!」
「……それもそうだな。それじゃあ、ライブ開始……あー、今から始祖竜シェイルフィード討伐しまーす。ゴールドギルドが失敗、ちなみに相手は無傷みたいですね」
「……うっわー、軽いなー」
「……でも、これがレヴォ様ですよね!」
ゲリラ的なライブ配信だ。視聴者はそうそう集まらない……って、え?
『――いきなりのライブ配信、きたああああっ!』
『――しかも始祖竜かよ! ゴールドギルドはどうした?』
『――あっちのライブ配信は途中で切れたけど、そういう理由かー』
『――ってか三人かよ! 少ないなあ!』
『――……フィーちゃん、かわいい』
『――宣伝するぞ! 宣伝だ!』
……いきなり、100人近く集まった?
「レヴォ様は人気配信者ですね!」
「よーし! やるぞー!」
「……あぁ、絶対に成功させるぞ!」
負けられない理由が増えたところで、俺たちはシェイルフィードのフィールドに足を踏み入れた。
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