101.レベルバッタ
早速移動した俺たちを待っていたのは、当然ながらレベルバッタである。
このレベルバッタ、一匹倒すとレベルがそのまま1上がるというゲームバランスをぶっ壊しかねない幻のモンスターなのだが、実は巣が存在している。
この巣を見つけられたのは正直なところ偶然なのだが、何も俺だけが知っている情報ではないと思っていた。
それに、俺の過去データを解析したのであればゴールドも知り得る情報のはずだが、どうしてエリザやリンが知らないのか。
「……本当にありましたね、レベルバッタの巣」
「……えっと、私、夢でも見てます?」
「現実だよ。まあ、レベルバッタでレベル上げできるのはレベル100までだし、とりあえずそこまでは一気に上げるとするか」
「「は、はい!」」
とっても元気の良い返事が聞こえてくると、エリザとリンが巣の中へ飛び出していった。
この場所はレベルバッタが現れる、とすら言われていない沼地フィールド。
俺も最初はレベルバッタ目的ではなくここを訪れていたのだが、徹夜のしすぎで眠気に負けて操作を誤り、底なし沼に足を取られてしまった。
そのまま飲み込まれて終わり、ペナルティが明けるまでログインできないのか、なんて考えていたところで、何故か死ぬことなく底なし沼の底に到着してしまった。
そこがまさかのレベルバッタの巣だったのだ。
当時の俺はすでにレベル100を超えていたから無視してしまったけど……って、もしかして俺が無視したから御曹司野郎も重要な場所じゃないと気づかなかったのか?
「……いや、まさかな。ワンアースをプレイしていてレベルバッタを知らないはずはないし、何より大企業の御曹司だろう? そんな簡単に不要だと決めつけたりはしないよな」
大企業の御曹司なんて、俺には雲の上の存在ではあるものの、上に立つ人物だからこそ判断は慎重になるのではないかと考えてしまう。
となれば、ゴールドのレベルが高いこともあって不要と判断したのかだけど、ギルメンを育てるには十分すぎる場所なんだがなぁ。
……よし! わからないことを考えてもわかるはずがないな! 何せ、相手は雲の上の存在だし!
「そもそも、人のアカウントを乗っ取ってる時点で、俺たち一般人には思考が追いつかねえんだよな」
「ねえねえ、ご主人様ー! フィーも戦いたいのー!」
俺が一人で考え込んでいたせいもあり、フィーも頭の上に止まったままだった。
「おっと、すまんな。フィーも行ってきていいぞ」
「やったのー! 行ってくるのー!」
元気よく答えてくれたフィーは、一目散にレベルバッタの群れへと突っ込んでいった。
「ご主人様は行かないのかにゃ?」
「俺も行くよ、ニャーチ」
「頑張るのにゃ! 僕は応援しているのにゃ!」
「おう、任せろ」
俺は隼の短剣に続いてシンボル・オブ・ブラッドを抜き放つ。
まさかシンボル・オブ・ブラッドの初陣がレベルバッタになろうとはな。明らかにオーバーキルだ。
とはいえ、レベルバッタを倒すのはそう簡単ではないので、ある意味ではふさわしい相手なのかもしれない。
「な、なかなか、倒せませんね!」
「っていうかさー、当たらないんだけどー!」
「むむー! フィーも当たらなーい!」
ゲームに出てくるモンスターといえば、大抵の場合で人間と同じサイズに巨大化しているものが多いと思う。
虫系のモンスターであれば特にそうだろう。
しかし、レベルバッタは違う。現実のバッタと同じくらいに小さいモンスターなのだ。
だからこそ攻撃を当てることが難しく、さらにレベルバッタ自体も敏捷が非常に高い。
巣を発見できたとしても、そう容易く倒せないのがレベルバッタなのだ。
「うっし! それじゃあ俺も行くか!」
「頑張るにゃ、ご主人様ー!」
ニャーチの声援を背に受けて、俺もレベルバッタの巣に飛び込んでいった。
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