100.進化を目指して
「レヴォ様はこのあとどうするのですか?」
外に出た直後、エリザから質問された。
「神話級装備を揃えたいところだが、ひとまずは直近で戦力強化だな」
「それはリンたちがギルドに加入したから問題なしじゃないですかー?」
「いや、ギルドに加入してもらったが、特にギルドで活動するつもりはないからな?」
俺の言葉にリンは愕然としていたが、ひとまずこいつは置いておこう。
そのままエリザに向き直ると、俺は頭の上に乗っているフィーを指差した。
「まずはフィーを進化させるつもりだ」
「霊獣の進化ですか。ということは、フィーのレベルは70になるのですか?」
「今が58だから、レベル上げに集中できればすぐだろうな」
「り、リンたちよりレベルが高いとは」
まあ、予想以上に早く霊獣の卵を手に入れることができたからな。レベル上げもほとんど俺と一緒なようなものだったし。
「フィーは伝承級の霊獣だから、伝説級になれば確実に強くなれる。そうすれば神話級霊獣まではあと一歩だからな」
「そ、そうでしょうか? 神話級霊獣になるにはレベル150が必要になるので、なかなかの道のりだと思うのですが」
「レベル150なんてあっという間だろう。違うのか?」
集中的にレベル上げ、まあ何回かの徹夜は必要になるだろうけど、それなら一週間もなくレベル150は達成できると思っている。
そこまで難しいことではないと思うんだが……なんだよ、二人とも。その視線は!
「……レヴォさん、ゲームジャンキーですねー」
「……さすがと言いますか、なんと言いますか」
まあ、普通の奴らは仕事や学校があるだろうから仕方ないけど、俺の場合はゲーム配信で稼いでいたからな。いわば、ゲームをすることが仕事みたいなものだ。
一般企業で言えば、残業をしているくらいの感覚なんじゃないかな。
……まあ、楽しく残業なんてあり得ないと言われそうだけど。
「俺はこのままレベル上げに向かうから、お別れだ」
「えぇー? ついていきたいんですけどー?」
「あの、ご迷惑でなければ私もご一緒したいです」
「俺と一緒にいてメリットなんてないぞ? むしろ、ゴールドに狙われるかもしれないしな」
今回の件もおそらくはゴールドに伝わっていることだろう。
もしかすると、朽ち果てたダンジョンへ俺たちを倒すための部隊が送られているかもしれない。
すぐに立ち去るつもりだが、いないとわかれば追い掛けてくる可能性だってあるだろう。
そうなれば、レベルの低いセカンドキャラであるエリザとリンではやられてしまうかもしれない。
モンスターとユーザーは違う。ゴールドギルドから多くのランカーが抜けたとも聞いているが、それでも残っている奴だっているだろう。
そいつらと当たれば、もしかすると俺だって無事では済まないかもしれないのだ。
「大丈夫ですよー、レヴォさん」
「ゴールドと対立する覚悟はできていますから」
「……ったく、物好きだよなぁ、お前たちも」
これ以上ここで議論していても時間の無駄だし、討伐部隊と鉢合わせになるかもしれない。
「んじゃまあ、とりあえずは動くか」
「それがいいですね」
「ちなみに、どこへ向かうんですかー?」
レベル上げと聞いて、リンは少しだけワクワクしているように見える。
まあ、効率よくレベル上げをする場所といえば一つしかないのだが、ランカーなら誰もが知っている場所だろうな。
「そんなもん、決まってるじゃないか。今から向かう場所は――レベルバッタの巣だ!」
「「…………レ、レベルバッタの巣ううううぅぅううぅぅっ!?」」
あ、あれ? これ、普通のことだよな? レベルバッタの巣、知っているよな?
そう思い口にしたのだが、二人は驚きの声と共に唖然とした表情のまま固まってしまった。
うーん、どうやら俺の知識は、そこまで浸透していないみたいだな。
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