95.初めての神話級装備

 クイーンを倒した俺はすぐにキングを倒す手助けをと踵を返した。

 だが、俺の心配は不要だったみたいだ。


「大したことありませんでしたね」

「見掛け倒しもいいとこだねー」

「フィーも頑張ったのー!」


 エリザ、リン、フィーの三人でキングを倒していたのだ。

 伝説級モンスターとはいえ、レベルの低い三人で倒し切れたのはやはり、エリザとリンの技術力が高いからだろう。

 エリザとリンのメインキャラって、誰なんだろうか。俺の知っているトップランカーなのか?


「お疲れ様」

「お疲れ様です、レヴォ様!」

「おぉー! クイーンを単独撃破とか、さすがですねー」

「フィーも頑張ったのー! 褒めてくれるのー?」

「あぁ、よく頑張ったな」

「えへへなのー!」


 俺がフィーの頭を撫でてやると、彼女は満面の笑みで喜んでくれた。


「……い、いいなぁ」


 ……エリザから謎の呟きが聞こえた気もするが、そこは放っておこうかな。


「さすがにこれ以上の敵は現れないよな?」

「神話級装備が手に入るのですから、まだ現れる可能性あるのではないですか?」

「だよねー。さすがにこれじゃあ拍子抜けだよねー」


 二人の言う通りではあるが、ボスモンスターが二匹現れるというのはなかなかない演出でもある。

 それもこの序盤での伝説級ボスモンスターが二匹なのだから、難易度的にはあまりに高すぎると思うんだよな。

 これが俺たちじゃなかったら、あっさりとやられていただろう。

 ……特に赤髪のあいつとかなら、キングに気を取られての奇襲で一発アウトだろうな。


「……何も、出ませんねぇ」

「……まさか、これで本当に終わりなのー?」

「とりあえず、奥に行ってみるか」


 しばらくその場に留まっていたものの、特に何かが現れる気配もないので、俺たちは先へ進むことにした。

 すると、奥の方に洞窟には不釣り合いな木製の扉を発見し、俺が代表して扉を開いた。


「……あれ、宝箱だよな?」

「……そうですね、宝箱ですね」

「……宝箱ってことは、これで終わりってことー?」


 俺たちが宝箱のある部屋に足を踏み入れると、目の前にウインドウが表示された。


【発展クエスト:神木を食らい進化した悪魔――クリア! おめでとうございます!!】


 ……どうやら、本当にあれで終わりだったようだ。

 まあ、間違いなくこの辺りのレベル帯では最高難易度だっただろうけど、それでもさすがに大盤振る舞い過ぎやしないか?

 これなら伝説級装備でも十分な気がするんだが。


「やりましたね、レヴォ様!」

「神話級装備だー! イエーイ!」


 ……まあ、考えても始まらないか。

 これも運営がやったことなんだし、ユーザーである俺たちが考えることでもないしな。

 というわけで、俺たちはありがたく神話級装備ランダムBOXを手に入れることができた。


「早速使いますか? 使いますよねー!」

「いかがなさいますか、レヴォ様?」

「まあ、使わない選択肢はないよな」

「だよねー! やったー! みんなで見せ合いっこしましょうよー!」


 リンの奴、上機嫌だな。それに見せ合いっこって、子供みたいな。

 ……まさかリアルはまだ子供とか? ってことは……あのトップランカーか?


「どうしたんですか、レヴォさん?」

「ん? あぁ、いや、なんでもない。んじゃあ使ってみるか」

「「はい!」」


 相手のリアルを探るのはマナー違反だからな、推測はこのくらいにしておこう。

 それよりもやっぱり神話級装備ランダムBOXだよな。

 これで暗殺者で使えない装備が出たらどうしようか。オークションに出して大金を稼ぐのもありっちゃありか。

 だが、俺の目的はゴールドをこの手で倒すことであり、胡坐をかいているだろう御曹司野郎を矢面に引きずり出すことだ。

 ならば、大金を稼ぐなんて言っている暇はない。やはりここは使える装備が出てくれることを祈るだけだ。


「頼む、出てくれよ!」


 俺は神に祈りを捧げながら、神話級装備ランダムBOXを使用した。

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