94.キングとクイーン

 まさか、キングとクイーンを同時に相手にしないといけないとはな。……いいや、アースアント……兵隊もか。

 魔導師が一人でもいてくれたら多少楽になったんだろうが、ここにいるのは全員が前衛職だ。

 暗殺者に剣士が二人。フィーを魔導師として計算してもいいが、これだけの数を相手にどれだけやれるかはわからない。


「……仕方がないか」

「……そうですね。この数はさすがに」

「……うん。それにクイーンまでいたら諦めるしか」

「ん? 誰が諦めるだなんて言ったんだ?」

「「……え?」」


 いや、こっちが、え? なんだが。

 神話級装備が手に入るクエストを、そう簡単に諦めてたまるかってんだ。


「二人にはキングアースアントの相手を頼みたいんだが、いいか?」

「ですが、レヴォ様はどうするのですか?」

「まさか、一人でアースアントとクイーンを相手にするとか言いませんよねー?」

「そのつもりだが?」

「「……え?」」


 いや、だからなんでそこで、え? って言われるんだよ。というか、そうするしか方法がないだろうに。


「む、無茶です、レヴォ様!」

「そうですよ! ここは難しいかもしれないけど、キングを倒してからクイーンを仕留める方が――」

「大丈夫だって。フィーは二人のサポートを頼む」

「はいなのー!」

「それじゃあ、そっちは頼んだぞ!」


 俺は二人の返事を聞くことなく、一気に兵隊の群れの中へ突っ込んでいった。

 兵隊に関しては上の階で戦っているから問題ない。関節に刃を滑り込ませ、そのまま両断すればいいだけの話だ。

 まあ、数が数だけにクイーンまで到着するまでどれだけの体力を残しておけるかが大事になってくるが、ここで力を温存して殺されてしまったら目も当てられない。

 だからこそ、ここは全力で前に進むしかないのだ。


「オラオラアアアアッ! もっと来いよ、この野郎!」


 声をあげて居場所を晒し、兵隊が二人の方へ行かないよう注意を引き付ける。

 数匹は行ってしまうかもしれないが、そこはフィーがなんとかしてくれると信じて進むしかない。

 クイーンに到着するまでに俺はどれだけの数を倒せるのか気になったが、数えるのも面倒なのでただひたすらに二刀を振り回し続ける。

 レベルアップの効果音が流れることもあったが、確認している余裕があるはずもなく、前へ、前へと進んでいく。


「もう少し、あと少しでクイーンに――!?」

『ゲゲギャギャギャギャアアアアッ!!』


 おいおい、こいつ、マジか!


「兵隊ごと――俺を殺す気かよ!」


 そう思った直後、クイーンの口から禍々しい紫色の毒液が広範囲に放出された。

 フィーに頼んで魔法を使ってもらうか? いいや、離れ過ぎていて魔法の範囲外になっている。

 なら毒液の範囲外に俺が移動するか? これも無理だ、あまりに範囲が広すぎる。

 頭の中でどう対処するべきかを必死に考え、俺は一つの答えに行きついた。


「仕方がない、制限時間付きだがやるしかないか!」


 そう口にした直後、俺の体から漆黒のオーラが放出された。


「暗黒竜のオーラ、発動!」


 全ステータスが25%上昇する暗黒竜のオーラを発動させた俺は、毒液が地面に落ち切る前に駆け抜けるため、あえて前進を選択した。

 途中にいる兵隊には目もくれず、時折玉砕覚悟で突っ込んで来る個体もいたが、俺は速度を落とすことなく二刀を振り抜き、進行方向の兵隊だけを倒して突き進んでいく。

 毒液が落ち切るのが先か、俺がクイーンを仕留めるのが先か。


「邪魔だああああぁぁああぁぁっ!!」

『ゲゲギャギャギャギャアアアアッ!!』


 一人と一匹が雄叫びをあげた。そして――


 ――ズババッ!


『ゲゲギャギャギャギャアアアアッ! ……ギャギャ……ァァ……』

「はあ、はあ、はあ、はあ……ったく、ギリギリ過ぎるだろう」


 毒液を辛うじて二刀の連撃が巻き起こす暴風によって逸らせた俺は、紙一重で毒液を掻い潜り、クイーンを連撃によって仕留めることに成功した。



※※※※

 私が執筆している別作品ではありますが、『職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職で自由にいきたい~』の2巻が本日発売となりました!

『セカンドキャラ』を読まれていて、『鑑定士』は読んでいない! という方で興味を持っていただければ、ぜひともご覧になっていただければと思います!


タイトル:職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職で自由にいきたい~ 2

レーベル:MFブックス

イラスト:ゆのひと先生

発売日:2022/08/25

ISBN:9784046816559


『セカンドキャラ』『鑑定士』共に、よろしくお願いいたします!

※※※※

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