87.サブクエスト

 俺は気を引き締め直すと、朽ち果てたダンジョンをさらに奥の方へと進んでいく。

 リンが言っていたみたいに、俺の目的はサブクエストだ。

 このクエストだが、最も難易度の高いクエストを成功できれば神話級装備の素材を手に入れることができる。

 ただし、クエストの存在自体を俺しか知らなかったので、今までは誰も受けることはなかったのだが、これからはそうも言っていられない。

 何故ならゴールドのログを遡り御曹司野郎がクエストの存在を知ってしまったからだ。

 こうなると、俺が動画でアップしても問題はないだろう。

 むしろ、そうすることでゴールドギルドの邪魔にもなるわけだしな。


「独占なんて絶対にさせないだろうな。上位のギルドが」


 用事を済ませたら、さっさとログアウトして動画をアップするかな。


「レヴォ様。そのクエストは私も受けられるのでしょうか?」

「誰でも一回だけだが可能なはずだ」

「そうなんですねー」

「そういえばリン。お前たちはどうしてあの場所に留まっていたんだ? クエストは受けたのか?」


 目的がサブクエストであれば、あの場に留まっていた理由がわからない。

 あの場所には特にクエストだったりイベントはなかったはずだ。

 それとも、俺の知らない情報があったりしたのか?


「あれはレグゼが勝手にやっていたことだよー。お小遣い稼ぎ」

「小遣い稼ぎ? ……あー、素材でも集めていたのか?」

「そゆことー。それこそエリザさんがさっき言っていたブルースパイダーの粘液を集めていたんですよー」

「小遣い稼ぎのせいで俺に追いつかれて、目的も果たせないまま倒されたのか」

「本当にバカですよねー! あっははー!」


 赤髪に対して相当恨みが溜まっていたのか、リンはお腹を抱えながら爆笑している。

 まあ、俺も赤髪がバカみたいなことをしていたんだと思ってしまったので何も言えないけどな。


「そのクエストはどういうものなのですか?」

「あー、それは私も聞きたいかもー。ゴールドさんはとりあえず独占しておけとしか言わなかったしー」


 うーん、これは言ってもいいのだろうか。

 エリザはまだしも、リンは元々ゴールドギルド所属のユーザーだ。

 簡単に脱退したのを見ると、こちらのことを同じように裏切る可能性も少なくはない。

 ……まあ、ギルド対抗イベントの時のエリザみたいなもんだけどな。


「……わかった、教えるよ」

「いいのですか!」

「やったねー!」

「ログアウトしたら動画でアップするからな。知られるのも時間の問題だし」


 というわけで、俺は朽ち果てたダンジョンで受けられるサブクエストの説明を始めた。


「簡単に言えば、指定されたアイテムを制限時間内でいくつ集められるか、それだけだ」

「……聞くだけだと簡単そうですが」

「……そうはいかないんだろうねー」

「その通り。そのアイテムってのがドロップ率5%以下のレアアイテムで、最高ランクの報酬を得るためには99個獲得しないといけない」

「「きゅ、99個!?」」


 運が良ければ今日中に終わるだろうけど、そうでなければ二日から三日は掛かるかもしれない。

 妥協すればそこまでの数は必要ないのだが、神話級装備の素材を手に入れるならそれをやらなければならないのだ。

 ……まあ、神話級装備の素材を手に入れるには、楽な方法はないってことだな。


「ま、欲しい報酬が段階的に存在しているし、途中で終わっても問題はない。ただし、さっきも言ったが受けられるのは一度きりだからな。後悔しない選択をする必要があるってわけだ」


 俺が説明を終えると、二人は考え込んでしまった。

 まあ、それもそうだろう。

 あとで報酬リストを見られるのでわかることだが、中にはスキルブックも存在している。

 ギルド対抗イベントで大量に配布されたものの、その価値は今もなお高いはずだ。

 伝承級以上のスキルも貴重なものなので、選択は慎重になるべきだろう。


「そろそろ到着するはずだが……お、見えてきたな」


 俺が通路の先を見ながらそう口にすると、二人も顔を上げて同じ方向へ視線を向けた。

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