86.新生?DRギルド

「ちょっと待て! なんでそんな簡単に脱退ができるんだよ!」

「そうですよ! 最終的にギルドマスターが決定しなければできないはずですよ!」


 エリザの言う通りだ。

 本来、ギルドへの加入、脱退はギルマスに権限がある。

 それをすっ飛ばしてギルメンだけで脱退を決められるなんて、それではギルマスがいる意味がなくなってしまう。

 そう思っていたのだが、どうやら全てはギルマス――御曹司野郎のせいだったようだ。


「実はゴールドさん、ギルメンの脱退権限を外しちゃったんですよねー」

「……そ、そうなんですか? 私がいた頃は、そんなことなかったはずですけど?」

「使えないギルメンは勝手にいなくなれ、だそうですよー。だからランカーの幹部もごそっといなくなっちゃって、さっきみたいな若手のホープが無駄に台頭しちゃったんですよねー」


 無駄に台頭って……どうやらリンは赤髪がリーダー格として威張り散らしていたことをよく思っていなかったみたいだな。


「なら、どうしてお前は今日まで残っていたんだ? ゴールドギルドに少なからず利用価値があると思っていたんじゃないのか?」


 リンが口にしていることが本当であれば、彼女はすぐにでもギルドを脱退できたということ。

 それなのに残っていたということは、何か理由があるはず。


「うーん……まあ、暇だったから?」

「「……はい?」」

「だってー。今までソロでダラダラと続けていたんですけど、やることがなくなっちゃってー。セカンドキャラを作ってみたけど、それでもつまらなかったんですよねー」


 おいおい、ここにいる全員がセカンドキャラなのかよ。

 ん? ということは、エリザもそうだが、リンも実はトップランカーということなのか?


「そんな時にゴールドがギルドを作るって言うから入ろうと思ったんだけど、イベントが始まっちゃってさー。だから終わってから入ったんだけど……あれでしょう? でもまあ、これからかなーって思って残っていたんだけど……」

「結局は変わらなかった、ってことか?」

「そういうことー。そこへ君が現れた! というわけで、乗り換えようと思ったんだよねー」

「全く、あの人はなんということを……」


 エリザだけではなく、多くのトップランカーが抜けた。

 それでもゴールドギルドに期待しているユーザーは多く、今もなお加入者は多いということなんだろうな。


「そういえば、エリザは大丈夫だったのか? その、リアルの方だが……」


 彼女はリアルで御曹司野郎のお守りをさせられていたらしく、裏切ったせいもあり会社を追放された可能性が高い。

 ゴールドを叩き潰すためとはいえ、他の人間の人生にまで影響を及ぼすのはさすがに気が引けてしまう。


「問題ありません! あんな会社、私から退職届を出してやりましたから!」

「もしかして、エリザさんはゴールドさんと知り合いなんですか?」

「知り合いですが、知り合いではなく、でも知り合いになりましたよ!」

「……何を言っているんですか?」


 うん、それは俺も言いたいかな。


「すでに別の会社に就職の内定を頂いていますし、そちらの方がより良い条件でしたのでワンアースも楽しめそうです!」

「いや、リアルの方の充実を目指そうな?」

「レヴォ様がいるところが私が充実できる場所なのです!」

「おぉー! お熱いですねー!」

「リンさん、わかっているじゃないですか!」


 俺がわかっていないんだけどな。

 だけど、エリザのリアルに問題がないようで一安心だわ。


「私はレヴォ様のギルドに加入するため追い掛けてきたんです!」

「私も加入しまーす!」

「ってか、なんで俺の居場所がわかったんだ?」

「そんなもの――愛の力です!」


 いや、答えになっていないんだが!? マジで怖くなってきたんですけど!!


「……っていうのは冗談で、ゴールドギルドの動きを見ながら近い場所へ足を運んだらビンゴでした」

「あ、そういうことか」

「それで、どうなんですかー? ギルド加入、いいですよねー?」


 ホッと胸を撫で下ろす横で、リンが上目づかいでこちらを見てきた。


「……とりあえず、保留だな」

「「えぇ~?」」

「俺も予定があるんだよ!」

「「それを終わらせたらよろしくお願いします!」」


 ……これ、断れない感じなのか? どうなんだ?

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