81.新スキル

「――……まあ、そう上手くはいかないか」


 伝説級ランダムBOXからは、予想通りに伝説級装備が手に入った。

 確率だけを見れば神話級装備が出ることもあるのだが、その確率はとても低い。

 ランダムBOXから神話級装備が出るなんてことがあれば、一生の運を使い果たしたといっても過言ではないだろう。

 何せゴールド時代の俺ですら、ランダムBOXから神話級装備を出したことがないのだから。


「ったく、マジで出てくるのかよ、神話級装備」


 ゴールドの時は素材を一から集めて作り上げたわけで、その苦労は計り知れない。

 ……それを乗っ取りという形で奪われたんだよなぁ。


「それにしても、ゴールドがまだ消されていないとはなぁ。まあ、予想はしていたことだけどな」


 やはり会社の不正を一プレイヤーに全て押し付けることはしなかったか。

 中にはアカウント削除を唱える者もいただろうけど、俺としては天童寺の御曹司に復讐する機会がまだまだあるということなのでありがたく思っておこう。


「とはいえ、今の装備よりも良いものが手に入ったのは間違いないし、戦力強化にはなったかな」


 気持ちを切り替えた俺は、次にスキルの獲得をすることにした。

 最初に使用するのはランダムスキルブック(希少級)だ。

 ここでどんなスキルを手にできるかによって、選択スキルブック(伝説級)で獲得するスキルが変わるかもしれないからな。


「それじゃあ、使うか!」


 気合いを入れながら、俺はランダムスキルブック(希少級)を使用した。

 頼む! せめて伝承級のスキルを俺に!!


「……おぉ……おお……」

「ど、どうしたのかにゃ?」

「ご主人様ー?」


 ……おいおい、マジかよ! これは完全に、予想外だぞ!


「……で、伝説級スキルを、獲得したぞおおおおっ!!」

「「おぉーっ!!」」


 俺の雄叫びに対して、ニャーチとフィーが声をあげながら拍手までしてくれた。


【パッシブスキル:HP自動小回復(10秒ごとに最大HPの5%を回復する)】


 基本ソロでプレイしている俺にとっては非常にありがたいスキルである。

 むしろ、選択スキルブック(伝説級)で獲得しようか考えていたスキルでもあり、俺にとってはマジで運のよい結果だ。


「これなら選択スキルブック(伝説級)で獲得できるスキルの幅が広がるぞ!」

「何を獲得するのかは決めているのかにゃ?」

「ある程度はな。だが、正直なところ伝説級のスキルからは全部が使えるから、迷いどころではあるんだよなぁ」


 腕組みをしながら考えていると、道の先から多くのユーザーの気配がしてきたのでひとまず隠れることにした。

 俺がDRギルドのユーザーだとわかれば何かしらアプローチがあるかもしれないし、相手が相手ならPKを狙ってくる奴らもいるかもしれないからな。


「――んだよ、あいつら!」

「――どうせゴールドギルドだろう?」

「――ダンジョンを占領したとか、あり得ないわよね!」

「――他のユーザーも困ってるし、運営はどうしてアカウント削除しなかったんだ?」


 ……ほほう? ゴールドギルド、もう活動を再開させたのか。

 それも他のユーザーに迷惑を掛ける方向で再開させるとか、あり得ないだろう。

 これは天罰を下すべきだろう――俺が!


「……そうだったな」

「どうしたのにゃ?」

「俺がレヴォを作った理由。ワンアースをもう一度始めた理由。伝説級スキルを獲得した嬉しさで忘れるところだったよ」


 ワンアースを楽しくプレイするために獲得するべきスキルと、ゴールドを叩き潰し続けるために必要なスキルは全くの別物である。

 ならば俺が獲得するべきスキルは――当然後者だ!


「決めたぞ、俺が獲得するべきスキルは――」


 ――こうして俺はスキルを獲得すると、ゴールドギルドが占領したらしい朽ち果てたダンジョンに到着した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る